コードブルー3|名取&灰谷に学ぶ「ショック状態」の意味と危険性

コードブルーでは患者さんがよく「ショック状態」になりますね。

たとえば第5話で、名取が腕の骨折だけだと誤診して他の病院に搬送してしまった患者さんが、ショック状態になった、と連絡が入るシーンがありました。

骨盤骨折を見落として、大量の出血によってショックになったのでした。

「大量の出血?」と疑問に思った方は、第5話の解説記事をご覧ください。

 

「ショック」はこれほど頻繁に出てくるのに、具体的にどういう状態なのか、特に説明されることはありません。

あまりよくわかっていない方が多いのではないでしょうか?

中には、

ショック状態=意識を失う

という誤解をしている人もいるかもしれません。

実際の臨床の現場では、ショック状態でも普通にしゃべっている人の方が大半です

なぜ?と思った方はこの記事を最後まで読めば、その理由がわかります。

 

ショックは、医学的に詳しく説明しようとすると、この短い記事に収まるような簡単な話にはできません。

ですから、非常にシンプルに、コードブルーのシーンを振り返りながら、概要だけをわかりやすく説明してみたいと思います

 

広告

ショックが分かりやすいシーン

ショックとは具体的にどういう状態なのかを知りたいときに、非常に良い題材があります。

第8話の、灰谷の目の前で少年が仮性動脈瘤破裂で急変するシーンです。

ここは別の解説記事でも解説しましたが、今回は違う角度から解説してみます。

 

胸を打撲してお腹が痛いと言い出した少年を、灰谷は経過観察入院させていました。

症状は完全におさまっているのに、「何かがおかしい」と灰谷は不安で仕方がない様子でした。

そうこうしているうちに、AAA(腹部大動脈瘤)破裂の急患がドクターヘリで搬送されてきます。

名取が、

「おい、ヘリ戻るぞ!灰谷!」

とあきれたように声をかけます。

 

そのとき灰谷は、「やっぱりおかしい」と言って、少年の両目の下まぶたをめくって観察していました

下まぶたの裏のことを「眼瞼結膜」と呼びます。

重度の貧血が起こると、ここの色が真っ白になります。

灰谷が決定的におかしいと思ったのは、眼瞼結膜が真っ白で、少年の貧血が進んでいる、と思ったからです。

つまり少年の体のどこかで大量の出血が起こっているのではないか、と疑ったのですね。

 

その後アラームが鳴りモニターが映り、脈拍が120台まで上昇したのがわかります。

「慎一くん!ショックだ

と灰谷が言います。

「動脈塞栓術でいけるはずだ、放射線科にコンサルしろ」

という藍沢の指示があり、ICUで放射線科の対応を待つことになります。

しかしその直後、仮性動脈瘤が再破裂、本格的に急変します(一度軽く破れて出血、自然に止まったものが再度破裂した)。

「血圧73、ショックです!」

と冴島が言い、モニターの画面がはっきり映ります。

今度は血圧が70台に落ち、脈拍が140に突然跳ね上がっているのがわかります(脈拍の正常値は60-70程度です)。

これが、大量の出血によって起こったショックの典型的な光景です。

(ちなみに1回目のモニターでは血圧の表示がなく、2回目のモニターでは血圧表示があるのには理由がありますが、長くなるのでまた別の機会に書きます。)

 

ショックとは何か?

「ショック」とは、

「何らかの原因で、体の重要な臓器への血流が維持できなくなり生命の危機に至ること」

という広い概念のことばです。

こうなると血圧が正常より大幅に下がります

今回の少年のような状態です。

 

今回の少年におけるショックの原因は、「腹腔内の大量の出血」です。

これによって血管内の血液が多量に失われ、全身への血流が維持できなくなったため、血圧が下がったわけです。

そして頑張って血液を送り出そうと心臓が反応するため、脈拍が速くなります。

 

しかし血液の量が減るにつれて、心臓のポンプは半ば空打ちの状態になってきます。

このまま放置すれば、心臓は限界を迎え、逆に脈が落ちてきます。

そして全身への血流が不足して死亡します。

コードブルーでは、このショックへと至る一連の流れ、モニターの数字に至るまで、全てリアルに作り込んであります

気になる方はぜひ見直してみてください。

 

このように、血管内を流れる血液の総量が減ったことが原因で起こるショックを、「循環血液量減少性ショック」と呼びます。

難しい言葉ですが、字面を見れば、そのままです。

「循環している血液の量が減ったショック」です。

 

この時に、まず最初にすべき治療は輸液(点滴)です。

「え!輸血じゃないの?」

と思った方、「なぜ救急患者はいつも点滴をしているのか」で理由を解説しているので読んでみてください。

 

ドラマ中でも、少年の周りでみんな慌てふためいている時に、1人だけ冷静に、

「急速輸液してください」

と、最初にパーフェクトな指示をした男がいましたよ。

誰だと思いますか?

 

名取です

カットダウンの解説記事でも説明したように、彼は終始冷静でしたね。

最近、人間的にも技術面でも圧倒的な成長を見せている男、名取颯馬に今後も注目です

 

さて、まずこれが一番分かりやすいタイプと考えてください。

ショックには、あと3タイプあります。

難しくないので、ついてきてくださいね。

広告

 

ショックの分類

まず一番分かりやすい、循環血液量減少性ショックから説明しました。

ショックは全部で以下の4つのタイプがあります。

・循環血液量減少性ショック

・心原性ショック

・閉塞性ショック

・血液分布異常性ショック

難しい!と思った方、心配はご無用です。

名前は難しくても中身は難しくありません。

まず、循環血液量減少性ショックはもう分かりましたね。

残りの3つを順に見ていきましょう。

 

心原性ショック

ショックとは、体の重要な臓器への血流が維持できなくなることでしたね。

心臓は血液を送り出すポンプですので、このポンプに異常をきたすと、当然全身への血流は維持できなくなります。

これが心原性ショックです。

そのままですね。

たとえば、重症の心筋梗塞を起こし、心臓がうまく収縮しなくなると、こういうことが起こります。

非常に分かりやすいはずです。

 

閉塞性ショック

これは少し分かりにくいのですが、幸いコードブルーではこのショックを2回見ることができます。

いずれも第2話です。

心タンポナーデ緊張性気胸です。

これについては第2話の解説記事でも解説しました。

 

心タンポナーデのシーンを少し振り返ってみます。

救急車で藍沢が患者さんを搬送中に急変し、

「血圧70台に落ちました。頻脈も進んでます」

と救急隊の人が言います。

頻脈=「脈拍が速くなること」です。

この時もモニターが映り、血圧70台に下がり、脈拍が120台に上がっているのがわかります。

まさにショックの状態です。

 

すぐに藍沢がエコー(超音波)を胸に当て、心タンポナーデを見抜きます。

このとき藍沢は、「一発目のFAST陰性で油断した!」と言いましたね。

このセリフの意味は第2話の解説記事で解説しました。

心臓は心のうという袋におさまっている臓器です。

心臓の周囲に出血すると、その袋が血液で満たされ、心臓の動きが妨げられます

それにより全身への血流が維持できなくなり、血圧が下がります

 

そして藍沢が救急車内で開胸、心のう内の血液を除去し、心臓の穴を尿道カテーテル(通称「バルーン」)を使って閉じます。

すると救急隊の人が、

「頚動脈触れるようになりました!」

と言いましたね。

血圧が戻ったということです。

これが閉塞性ショックの一例です。

 

ここまで読んで、「心原性ショックと何が違うの?」と思った方がいるでしょう。

閉塞性ショックの特徴は、

「心臓のポンプ自体の性能は正常だが、他の要因によってそれが妨げられている」

ということです。

その証拠に、血液を除去したら血圧はすぐに戻りましたね。

周囲にたまった血液によって心臓の動きが妨げられていただけで、心臓の機能自体は障害されていないからです(小さな穴はあいていても心臓の筋肉は正常です)

 

一方、心筋梗塞は心臓の筋肉自体が広く壊死する病気で、ポンプ機能の異常です。

心臓の病気を根本的に治療しなくては、心原性ショックはすぐには治りません。

大きな違いがあるのがわかると思います。

 

血液分布異常性ショック

血管内から水分が失われるショックは循環血液量減少性ショックだと、上に書きました。

しかしみなさんは、体から水分は失われないが、血管内からは水分が失われている、という状態を経験したことが誰しもあるはずです。

「なんのこと?」

と思ったでしょう。

 

たとえば、足がむくんだり顔がむくんだりすることはありませんか?

あれは、何らかの理由で血管内の水分が血管の外に逃げ出し、皮膚の下に水分がだぶついている状態です。

また、アレルギーで鼻が詰まることがありませんか?

鼻水がたまっていると思って、一生懸命鼻水が出なくなるくらいかんでも、鼻づまりはなくなりませんよね?

なぜか知っていますか?

アレルギーなどの炎症のせいで、鼻の中の粘膜がむくんで、空気の通り道が狭くなっているからです。

あれは鼻の粘膜の毛細血管内から水分が漏れ出して、粘膜の下にたまっている状態です。

鼻づまりは鼻の粘膜のむくみです。

いくら鼻をかんでも通らないわけです。

鼻水がたまっていることが原因ではありませんからね。

 

やけどをして水ぶくれができたり、擦りむいた傷から血液ではなく透明の汁が出ることがありますね。

同じく、血管内の水分が炎症によって血管から漏れ出しだ状態です。

 

全身に炎症が起こると、こういう反応が全身性に起こります

全身の臓器が「むくむ」ような反応が起こると、血管内の水分は大量に失われてしまいます

「体からは失われていないのに、血管内には足りない」というのがこの血液分布異常性ショックの特徴です。

「血液の分布が血管内ではなく血管外にかたよる異常」という意味です。

 

具体例としては、アレルギーにより起こるアナフィラキシーがあります。

ハチに刺されたり、蕎麦アレルギーの人が蕎麦を食べたり、ということでも起こります。

この場合はどちらかというと、気道の粘膜のむくみによって呼吸困難に陥ることの方が危険です。

最近はヒアリによる重篤なアナフィラキシーが話題になっていますね。

 

それから、感染症による敗血症です。

全身性の炎症によって、同じことが起こります。

 

このタイプのショックは、コードブルーではあまり見たことがないはずです。

こういう内科疾患でのショックは、地味でドラマになりにくいからです。

しかし実際には、このタイプのショックを私たちは多く経験します。

コードブルーは、見た目が派手で救急医が活躍するタイプのショックに偏っている、ということを覚えておく必要があります。

 

さて、最初の疑問に戻ります。

ショックで意識を失うということは、脳への血流が不足したということです。

つまり、脳への血流が維持できないほどに重篤なショック状態が持続したとき、意識を失うわけです。

ここまで到達するまでに「意識は保たれているがショックではある」という状態は長くあります。

意識障害のないショックの方が多い、と言ったのはそういうわけです。

 

コードブルーがすごいのは、製作者の作り込みが非常にリアルなので、こういう医療に関する知識を提供する題材にうってつけだということです。

引き続き、リアルで緊迫感のあるシーンに期待したいですね。

(話をシンプルにしています。医療職の方はもっと体系的に学習してくださいね)

広告

コードブルー3|名取&灰谷に学ぶ「ショック状態」の意味と危険性」への2件のフィードバック

  1. りこ

    こんばんは。
    たった今、9話を見終わりコメント致します。
    現場ってこんなにも危険が伴うのですか?
    忙しさについては以前から先生が仰っていますが、
    各科の専門医に引き渡すまでが、救命の仕事だと言うことで実際とは異なるとのお話でした。
    しかし…ここまで危険にさらされるとなると
    フライトドクターやフライトナースは危険が伴うだけでなく常に命懸けだということになります。
    実際には、ヘルメットの着用やマスクなどがあるとの事ですが、
    事故現場でのドラマとの違いを教えてください。

    返信
    1. keiyou 投稿作成者

      りこさん
      おっしゃる通り、危険すぎます。
      今回はそれも記事にしてみました。
      参考にしてみてくださいね!

      返信

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です