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コードブルー3|医師が見て「実際には絶対ありえない」と思った設定

コードブルーの医療シーンは非常にリアルで、いかに細かいところまで製作者がこだわって作っているかがよく分かります。

これまでの私の記事を読んできた方は、この細かいリアリティについてはもうかなり詳しくなったはずです。

そこで今回は逆に、「これは絶対にありえない!」という設定を一つ紹介します。

 

みなさんまず、コードブルーの舞台である翔北救命救急センターに勤務する医師の名前を順に挙げてみてください。

橘、藍沢、白石、緋山、藤川、そしてフェローの名取、灰谷、横峯

三井も一応所属はしていますが現在現場から身を引いています。

ということで、現在現役で動いているのは、上の8人です

公式ホームページを見ても、彼ら以外にはいないようです。

 

さて、次に毎週月曜日のドラマのシーンを思い出してください。

ドクターヘリは昼間しか飛べないということもあって、いつも医療の舞台は昼ですね。

そして8人全員が毎回出勤しているようです。

何かおかしいと思いませんか?

 

救急外来は24時間365日オープンです。

夜間にひっきりなしに救急車が来て一睡もできない、ということも、忙しい病院ではしょっちゅうあります

さて、前日、日曜日の夜は一体誰が夜勤をしているのでしょうか?

翔北のような規模の救急部だと、夜間でも医師を2〜3人は配置する必要があります

つまり、8人のうち2〜3人は、いつも夜勤明けでそのまま勤務していることになります。

何ともブラックな病院です。

さらに、月曜日の夜は?

誰かが24時間連続勤務のようなことをしないと、成り立たなくなってしまいます

 

私が何が言いたいのか、もうおわかりですよね?

救急という部署は本来、そこに所属する全員が同じ時間帯に働く、ということは年中通して一瞬たりともないのです。

 

救急医はシフトワーカー

もちろんドラマの揚げ足をとりたいのではありません。

少し、救急部とそれ以外の科の医師の勤務の違いや生活を紹介してみようと思います。

 

救急の現場は、24時間365日、休むことができません

どの時間帯でも救急患者は搬送されますし、常に同じクオリティの医療を提供する必要があります

そこで、病院の中でも救急医だけは、看護師と同じシフト制です。

病院によってシフトの分け方は様々ですが、一例としては、

日勤帯:9時〜17時

準夜帯:17時〜24時

深夜帯:24時〜9時

というような感じです(あくまで一例)。

シフト制なのは、コンビニのような24時間営業の店の店員や、警備員などの職種も同じですよね。

 

ただ、準夜帯を作ると、車で出勤する人以外は、夜間に自宅に帰る手段がない、夜間に出勤する手段がない、ということが起こります。

そのため、2交代制といって、日勤帯夜勤帯に分けて、9時〜17時、17時〜9時、としているところも多くあります。

田舎の病院で、ほぼ全員車出勤、駐車場も豊富にある、というような病院は3交代のところもあります。

 

ですから翔北に例えると、

日勤帯は橘、藍沢、名取で勤務し、17時になったら緋山、白石、灰谷が出勤して来て患者さんを引き継ぎ、藤川、横峯はその日は休み

のような形が普通ということです。

ある日の日勤帯に全員が集合してしまうと、その日の夜に誰も働けなくなります

 

また、平日や土日祝日も、もちろん関係ありません。

逆に救急部の医師は、唯一平日に休みがあるため、都会の病院などではある意味うらやましがられます。

平日の昼に、映画に行ったり、買い物に行ったり、休日は混雑している店でも平日なら並ばずに入れます。

一方、救急医に言わせると、この状況はあまり嬉しくないそうです。

まず、一緒に遊びに行ける友達がいません

平日の昼など、世の中の大半の人は働いていますからね。

また、子供が就学年齢になると、子供と一緒に遊びに行ける土日や祝日がわずかにしかありません

偶然、シフトの関係で休みの日が土日や祝日に重なった時を狙うしかありません。

また、忘年会や送別会など、科内の節目のイベントに必ず2〜3人は参加できません

全員が揃って飲み会、ということは決して不可能です(これは救急部以外でも、その科だけで当直医を回している科は同じです)。

 

実はコードブルーでも、「今日はこの医師が夜勤なんだな」と思うシーンはいくつかあります。

例えば、第4話。

冒頭で、白石、緋山、冴島、藍沢が、夜にバーで飲んでいます。

そこに、病院にいる藤川から冴島に電話がかかってきます。

「帰り遅くならないようにね、駅からタクシー使いなよ!」

この日は藤川が夜勤ですね。

 

では、救急部以外の医師の勤務はどういう仕組みなのでしょうか?

 

救急部以外の医師の勤務形態

一般的に救急部以外の医師は、カレンダー通りの勤務です。

もちろん病院には常に患者さんが入院していますので、医師がゼロの時間帯があっては困ります

ただ、夜間や土日は一般の外来は閉まっていますし、大掛かりな検査や手術も緊急のもの以外は行いません。

そのため、当直医以外は、平日は仕事が終われば自宅に帰りますし、土日は休みです

夜間や土日は各科の当直医(1〜2人)だけが出勤し、患者さんの急変などに対応できるようにしています。

放射線科や病理診断科など、入院患者を持たない科は当直はありません。

病院によっては、各科ではなく、内科系2人、外科系2人、というように、内科系、外科系の全体で当直医をローテーションしている病院もあります。

救急部以外の医師の当直帯は、一般的には17時〜翌朝9時です。

この間の患者さんの急変や、外来患者さんの緊急手術、検査などに対応できるようにしています。

(もちろん当直医でなくても17時に帰れることは少ないので、結構遅くまで多くの医師は残っています)

 

たとえば上に挙げた第4話の例を見てみましょう。

冴島に藤川から電話がかかってきた後、今度は新海から藍沢にも電話がかかってきます

「奏ちゃん、一過性の昏睡でさっき入院した」

という、藍沢の患者である小脳腫瘍の天野奏さんの急変の連絡です。

この日の脳外科当直は新海だったので、夜間の奏さんの緊急入院や検査に対応し、主治医の藍沢に連絡があったわけです。

 

ちなみに、このシーンでは藤川も新海も院内モバイルではなく、自分のスマホで電話をしています。

プライベートな用事である藤川はともかく、当直医からの患者さんの連絡も個人のスマホ、となると、やはり院内モバイルで外線にはかけられないのでしょう。

(「コードブルー3|医師が見て藍沢耕作がカッコいい医者だと思った瞬間」を参照)

 

さて、当直の時は、急変や緊急手術、緊急検査などがなければ睡眠はとれますが、当直帯がどのくらい忙しいかは病院によります。

夜通し緊急手術をして一睡もできなかった、という経験は私も何度もあります。

ちなみに当直明けの翌日は、というと現実的には普通に勤務します

建前上は、当直の翌日は帰っても良いということになっていますが、朝一番にいそいそと帰る医師はあまり見ません

特に外科医はそうです。

患者さんも、手術をしてくれた外科医が手術翌日に病院にいない、となると不安でしょう。

もちろん外科医である私も不安で家にはいられません。

土日や祝日もそうです。必ず最低1度は患者さんの診察に出向きます。

最近それが社会問題になりつつありますが、今回の趣旨とは異なるので、これ以上はやめておきましょう。

そういう意味では、救急医はオンオフのはっきりした職種と言えます。

 

というわけで今回は、医師の勤務について、コードブルーをたとえに簡単に紹介して見ました。

コードブルーではチーム全員が力を合わせて患者さんを救う!というのがテーマですが、全員が同時に勤務する、というのは実はありえない設定なのです

 

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