コードブルー1st 第5話感想|外傷プライマリーサーベイを全て解説!

第5話は、さながら研修医向けビデオ教材のような展開である。

緊急性の高いシーンでも妙にスローペースだったが、明らかにプロからの細かい指導が入っている処置の数々に、私も唸ってしまった。

テーマは外傷患者の初期診療

コードブルーを見て、おそらくみなさんがこれまで気になっていたのではないかと思われる、用語や処置の数々をじっくり解説していきたいと思う。

 

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外傷初期診療の流れとは?

工場解体現場の爆発事故によりドクターヘリ要請が入り、森本(勝村政信)、三井(りょう)、冴島(比嘉愛未)が現場に出動。

当初は負傷者3人との情報であったが、到着した彼らが見たのは、工場内で多数の負傷者が血を流して倒れている惨状だった。

ピストン輸送で、藍沢(山下智久)、白石(新垣結衣)、緋山(戸田恵梨香)も現場に到着。

トリアージタグを用いて現場治療に当たる中で白石は、コンクリートから突き出た鉄骨が腹部に刺さって貼り付けになっている男性を発見

藍沢、冴島とともに治療に当たる。

まだ意識はあるものの、鉄骨は腹部の血管を貫いており、出血によって徐々に意識が混濁していく男性

引き抜けば大出血は必至、しかしレスキュー隊の搬送の手も足りない、という絶体絶命の状況。

ここで藍沢は、院内の黒田(柳葉敏郎)から電話で指示を受け、現場での開胸を決意する。

大動脈(aorta:アオルタ)を遮断、出血を最小限に抑えたのち、鉄骨を抜くという一か八かの作戦は成功、搬送が可能になるが、途中で男性は心停止(Vf:心室細動)に陥ってしまう。

必死の開胸心臓マッサージも虚しく、心停止から回復しない男性。

ここで何と藍沢は、拳を振り上げて男性の胸を殴りつけ、正常心拍に戻すという必殺技を見せる。

3人の必死の蘇生処置の甲斐あって、男性は無事病院に搬送される。

 

今回の現場のスタッフらの動きは、外傷診療の教科書的な流れだ(藍沢のパンチ以外)。

まずタグを用いたトリアージで、搬送すべき患者の優先順位を素早く判断。

(トリアージタグについては「コードブルー3 第7話 感想|医者が患者に言ってはならない言葉」を参照)

 

さらに、メインとなった男性患者の現場治療は、まさに外傷プライマリーサーベイのお手本と言えるほど丁寧に作り込んである。

今回は他にあまりツッコミどころもないので(藍沢のパンチ以外)、この「プライマリーサーベイ」について、じっくり解説してみようと思う。

 

プライマリーサーベイとは何か?

これまでコードブルーを見てきた方は、この「プライマリーサーベイ」という言葉を何度も聞いたことがあるはずだ。

例えば、3rd SEASON第1話で、まだ名取(有岡大貴)が初療室の隅でスマホをいじっているほどやる気のない男だった頃のこと。

搬送された患者さんを前に緋山(戸田恵梨香)が、

「JATECのプライマリーサーベイくらいできるわよね?研修でやったでしょ」

と名取と横峯(新木優子)に指示するシーンがある。

「プライマリー(Primary)」とは、「最初の」「第一の」という意味で、「サーベイ(Survey)」「調査」という意味だ。

つまり、「外傷患者に対して最初にすべき一連の診察・処置」のことである。

ちなみに「JATEC」とは、「外傷初期診療ガイドライン日本版(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)」のこと。

プライマリーサーベイを含む、外傷診療について定めたガイドラインである。

基本はこれに従って診療すれば間違いなく、私も研修医時代にJATECに基づいてトレーニングを受けている。

 

プライマリーサーベイに必要な5つの要素を「ABCDEアプローチ」と呼ぶ。

このうちABCは、救急現場での蘇生における最も大切な3項目、という話は「コードブルー3 医師が解説|なぜいつも現場で気管挿管をするのか」の記事でも書いた。

外傷では特に、このABCに加えて、DEの要素を付け加える

A:airway 気道確保

B:breathing 呼吸の評価と致命的な胸部外傷の有無を確認

C:circulation 循環の評価、止血

D:dysfunction of CNS 意識レベル、神経障害の評価(CNS=中枢神経のこと)

E:exposure & environmental control 脱衣して傷の確認、その後の体温管理

藍沢、白石、冴島の3人がこれらの処置をまさに教育ビデオのように丁寧に行っていくので、ぜひ見直してみてほしい。

 

A、B、Cの確認

まず、本人は会話ができているのでAは問題なし

Bについては、致命的な胸の外傷がないかどうか、藍沢が両手を使って様々な角度から胸を押さえている

多発肋骨骨折などがあれば呼吸が危うくなるが、このように両手を使って診察することで見抜くことができる。

お手本のような動きである。

また呼吸状態(SpO2)確認のため、男性の左手に小型のブルーの器具(パルスオキシメーター)をつけている。

(「コードブルー3 医師が解説|意識レベル、バイタルって何?どうなると危険?」参照)

 

Cは、藍沢がまず手首で脈拍を確認、「脈拍120!」と言ったあと、頚動脈の拍動の触れ具合を確認する。

藍沢が、

「橈骨(とうこつ)触れにくい」

と言うが、これは「手首の橈骨動脈の拍動が弱くなっている」という意味。

ここの拍動が弱いと、血圧が80前後と低血圧になっていると推測できる

つまりこの男性は、脈拍が速くなり、血圧が下がってきている。

コードブルー3|名取&灰谷に学ぶ「ショック状態」の意味と危険性」を読んだ方ならわかると思うが、まさに典型的なショック状態だ。

その原因はもちろん、鉄骨が腹部の血管を貫いたことによる出血である。

 

そしてCで最も重要なのがFAST(ファスト)

つまりエコーによる腹腔内出血の確認である。

ゼリーを贅沢に使ってポータブルエコーを行う藍沢の、リアルなFASTを見ることができる。

ちなみに3rd SEASON第2話では、藍沢がFASTを1回しか行わなかったことを悔やむシーンがある。

第2話解説記事の中で私も「FASTを繰り返すことが大切だ」ということについて述べたが、ここではちゃんと繰り返しFASTを行なっている

1回目は藍沢、2回目は白石だ。

さらに、循環を安定させるためには輸液(点滴)が必要、ということで、白石が点滴を何本も追加している。

(「コードブルー3 医師が解説|なぜ救急患者はいつも点滴をしているのか」参照)

文句のつけようのない、完璧な流れである。

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D、Eの確認

Dは意識と中枢神経障害の確認。

男性は、最初は意識レベルに問題はないが、途中で意識が混濁する。

そこで白石が、頭蓋内に問題がないか対光反射を確認する。

対光反射の確認とは、目に光を当てて瞳孔が正常に収縮するかを見ること。

これは前回の記事でも書いたので意味はわかるだろう。

 

ここで大切なのは、ペンライトの光を真正面から目に当てるのではなく、目の外側から滑り込ませるようにして当てること

最初から目に光を当ててしまうと、すぐに瞳孔が収縮してしまい、収縮する前が正常だったかがわからなくなるからだ

白石がペンライトで目に光を当てるこの動きは、まさにお手本のようである。

細かい動きをしっかり指導されているのがわかる。

そしてEについては、藍沢が服をハサミで裁断し、まず最初に全身を診察している(ハサミでの服の裁断は、現場でなく救急外来でもよくやる)。

 

重症度の割には少しスローペースだが、丁寧にプライマリーサーベイを見せてくれる貴重なシーンである。

コードブルー劇場版ではきっと、多発外傷患者が現れること間違いなし。

映画公開の前にこれを見て再確認していただければ一層楽しめるだろう。

 

Vf(心室細動)後の処置

この男性は、搬送中に心停止(Vf)に陥ってしまう。

本音を言うと、人が3人もいるのだから、胸を殴りつけるより、一人が開胸心臓マッサージ、もう一人が除細動器を取りに走るというのが普通だ

Vf(心室細動)は、除細動器やAEDで正常心拍に戻せるチャンスのある心停止だからである。

3rd SEASON最終回では、クラッシュシンドロームで藤川(浅利陽介)がVT(心室頻拍)になるが、この時は即座に除細動している。

除細動が有効な心停止はVfとVTだけ。「コードブルー3 最終回 解説|クラッシュシンドロームと横紋筋融解症はなぜ怖いのか?」を参照)

モニターや挿管セット、輸液製剤などかなり充実した救急セットが揃っているのに、除細動器だけはないというのもお粗末な話

だが、藍沢の奇跡の一撃が患者を救うというのも重要シーンだということで、ここへのツッコミはこのくらいしておく。

 

ここでは、このVfに対する蘇生処置を少しだけ解説しておこうと思う。

藍沢の指示で白石が2種類の薬剤を投与する。

一つ目は「エピネフリン」

「エピ」と略されるこの薬剤も、コードブルーでは頻繁に出てくる。

交感神経を活発化することで、心拍を促進する

二つ目は「アトロピン」

アトロピンは副交感神経をブロックする作用がある。

副交感神経は心拍を抑制するため、これをブロックすることで、「抑制の抑制」つまり「促進」、エピネフリンと同じ効果だ

(近年心停止にアトロピンを使うことはほとんどないが、やってはいけないことはないだろう)

 

というわけで第5話は、外傷のプライマリーサーベイから蘇生まで、医師の監修と指導がしっかり入った貴重なシーンを見ることができた。

現実にはもっとスピーディで、かつその場の判断で適宜アドリブ的に段階を省くこともあるので、これほど愚直に教科書ルールを守る、ということはない。

その点では、3rd SEASONで見られるような流れがよりリアルではあるが、解説するとなると今回のシーンは最適である。

今回はツッコミはほぼゼロの、真面目解説でこれにて終了。

引き続き解説記事をお楽しみに!


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コードブルー1st 第5話感想|外傷プライマリーサーベイを全て解説!」への10件のフィードバック

  1. ソセゴン

    いつもタメになる記事、多忙の中執筆ありがたく存じます。
    最後の薬剤についてお聞きしたいのですが、「エピネフリン」「アドレナリン」は結局現在は
    後者に統一されているのでしょうか?コードブルーに限らず、他のドラマでも、割と数年前までは「エピネフリン(エピクイック)」「ボスミン」と呼ばれてたのですが、近年「アドレナリン」と聞くことが多いように感じます。薬剤の発明の経緯、日米の違いなどを読み漁りましたが、結果現場ではどちらが主流なのか、ズバリ解決していただきたいです!(本当に長文失礼しました!)

    ソセゴン

    返信
    1. keiyou 投稿作成者

      ソセゴンさん
      ご質問ありがとうございます!
      どちらかに統一されているわけではなく、おそらく施設によって、あるいは人によってどちらも使われていると思います。
      ご存知の通り、エピネフリンとアドレナリンは同じものを指す一般名ですが、医療現場では一般名より商品名をよく使います。
      薬のラベルに書いてある名前で呼ばないと、誤解のもとになるからですね。
      「ロキソニン」のことを「ロキソプロフェンナトリウムちょうだい」などと言う医者はいないわけです。
      で、昔は商品名が「エピネフリン注」だったので「エピ」で問題なかったのですが、日本で命名された名前を尊重しようということで商品名まで「アドレナリン注」に変えてしまったせいで少しややこしくなっています。
      昔から「エピ」と呼び慣れている医者は「エピ」と指示しますが、新しい看護師さんなどは「エピネフリン」を要求されても、そういう名前の薬が手元にないため(「アドレナリン」はある)何を指しているのか困ることになります。
      私の意見は、誤解のないようにするためには「アドレナリンを使う方が良い」です。

      ところが、エピネフリンの名前は、エピネフリンを含有する他の薬でたくさん残っています。
      たとえば「エピペン」は、アナフィラキシー時の緊急対応のため、アレルギー持ちの小学生や、養蜂場の職員が持っている非常に大切な薬で、名前は絶対に変えてもらっては困る薬です。
      そういう意味で、現場では薬の名前を突然変えられると結構困るんですね。
      というわけで、ソセゴンさんの疑問には解決策はありません笑

      返信
  2. yoshi

    プライマリーサーベイの意味がやっとわかりました!
    (何を言ってるのか言葉もわかりませんでした。でも、だったらフェローがその指示を半分しかわからないなんてことは本来はないですね?)
    教科書通りのシーンだったんですね。私はドラマ的な見せ場のシーンだと思っていました。派手ですし、観ていても面白かったので。
    解説ありがとうございました。

    返信
    1. keiyou 投稿作成者

      yoshiさん
      ありがとうございます!
      実際、3次救急病院での勤務歴がなければこういうトレーニングは受けませんので、フェローがそういう病院での勤務経験がなければ指示は半分もわからない可能性はあります。
      そういう勤務経験がなくても、その後も救急医にならない限り外傷患者の初期診療を行うこともないので、トレーニングは受けないままでも医者としては問題はないという感じですね。

      返信
  3. Rao

    久々に来てみたらたくさん記事がアップされていて
    一気読みしています!

    プライマリーサーベイ、緋山が言っていたのはこれだったのか!!と納得です。

    そして複数回登場する、藍沢のパンチ以外 のツッコミに笑いが止まりませんでした(°▽°)
    さすがに現場ではあまりパンチしないんですね。
    でも、除細動器がない、開胸もできない、アドレナリンもないなどの状況では
    心臓パンチが最後の一手になることもあるんでしょうか??

    返信
    1. keiyou 投稿作成者

      Raoさん
      ありがとうございます!ぜひ読んでいってください。
      確かに、VfやVTの場合、電気ショックに変わる何らかの強い刺激が正常心拍に戻すきっかけになる可能性はないとは言えないです。
      ただ心停止の時の治療の原則は「心臓マッサージ(基本は胸骨圧迫)で脳血流を保つこと」なので、殴っても有効な心拍出は得られませんから、そういう発想自体がないように思います笑
      救急の現場では、外傷のガイドラインもそうですが、基本的にはベストな選択を常に選び続けることが大事なので、突然イレギュラーなことをやり始める人はいないと思いますね。

      返信
  4. Rao

    そうなんですね笑

    他の医療ドラマでも、胸をパンチして心拍再開というのを何回か見たことあるので、
    とりあえず一回なぐってみることもあるのかと思ってました( ̄▽ ̄)

    逆に胸に野球ボールが当たって心停止、というような事故を聞いたことがある気がするのですが、
    強い衝撃で心停止することもあるのでしょうか?
    (心タンポナーデなど損傷がなくても)

    返信
    1. keiyou 投稿作成者

      Raoさん
      一回殴るなんて人は見たことないですね笑 正直、一瞬たりとも心臓マッサージの手を止めたくないです。
      強い衝撃で心停止(Vf)が起こることは「心臓しんとう」と言ってあり得ます。損傷がなくても、衝撃で起こってしまうようです。
      ですから、運動部の顧問などはその時の対処をきっちり身につけておかないといけないんですね。

      返信
  5. Rao

    医療現場ではありえないんですね、心臓パンチ( ̄▽ ̄)

    逆に衝撃でV fになることはあるんですね。
    覚えておきます!
    対処法は、胸骨圧迫をしながらAEDと救急車ですかね?

    返信

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