大腸がんになりやすい?遺伝性(家族性)の大腸がんの特徴、検査と治療

「うちはがん家系なので・・・」という言葉を患者さんから聞くことがよくあります。

家族にがんの方が多く、自分もがんになるのではないか、と不安な方は多いのではないでしょうか?

確かに、血縁関係のある人に発生しやすいがんは多くあります。

たとえば大腸がんは、20〜30%家族性に発生します。

しかし、家族に大腸がんの方がいるからといって、特別な検査や検診が必要なわけではありません

多くは原因遺伝子がわかっているわけではなく、「遺伝する」という確たる証拠もありません。

そもそも大腸がんは我が国でもっとも罹患数の多いがんですから、家族に大腸がんの人が複数いても不思議ではありません

ことさらに心配する必要はなく、通常通り年に1回の大腸がん検診を受ければ十分です。

大腸がん検診について知りたい方はこちら

大腸がん検診で早期発見!便潜血と大腸カメラで早く見つける方法

しかし、がんの一部には原因となる遺伝子がはっきり判明していて、その遺伝子が高確率で子に引き継がれるタイプがあります。

まだ検診を受けないような若い年齢でがんになることも多く、特別な治療が必要になることがあります。

 

よく知られた例をあげます。

ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、がんを予防するために、2013年に健康な両側の乳房を、2015年には両側の卵巣を摘出する手術を受けました。

2013年の時点で37歳でした。

アンジェリーナ・ジョリーさんは、がん抑制遺伝子「BRCA1」に生まれつき異常(遺伝子変異)があることがわかっていました。

87%の確率で乳がんに、50%の確率で卵巣がんになると診断されていたそうです。

ジョリーさんの母親は若くして卵巣がん、乳がんを発症、56歳で亡くなっています。

また母方の祖母は卵巣がん、叔母は乳がんで亡くなっているそうです。

 

こういう明らかな遺伝性疾患では、「がんになる前に臓器を摘出する」「特別な検診を受ける」といった対処が必要になります。

 

さて、大腸がんでも同じように、原因のはっきりわかっている遺伝性のタイプが存在します。

家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)と、リンチ症候群です。

これらは、特定の遺伝子異常があるために、若いうちから高い確率で大腸がんになるリスクがあります

今回はこの二つの疾患について解説します。

 

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家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)

がん抑制遺伝子である「APC」の異常によって生じる病気です。

大腸にポリープ多発し、放置すると100%大腸がんを発生します。

全大腸がんの0.24%を、この病気が占めます。

およそ50%の確率で子に遺伝する病気です。

 

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)遺伝子検査などで診断が可能です。

「大腸にポリープがたくさんあると言われた」という方は不安になったかもしれませんね。

この病気では、多くは100個以上というおびただしい数のポリープができます。

もしこの病気なら、大腸カメラを行った医師から必ずその異常を指摘されますから、単に「ポリープが複数あった」とは状況が異なります。

 

若くして大腸がんになるのが特徴で、大腸がんの発生確率は、20歳で1%、40歳代で50%、60歳頃にほぼ100%とされています。

また、大腸以外にも悪性腫瘍を発生しやすい、という特徴があります。

デスモイドとよばれる軟部組織腫瘍や、十二指腸癌甲状腺癌などが挙げられます。

 

100%大腸がんになるとわかっている以上、若いうちから予防することが必要になります。

20歳代大腸を全て摘出する手術が推奨されています

大腸がなければ大腸がんになりません。

冒頭の例の、乳がん予防で健康な乳房を切除するのと同じ理屈です。

また、大腸以外の病気がないかどうかの検査も必要です。

上部消化管内視鏡(胃カメラ)や、腹部CT超音波検査などを定期的に行います。

 

50%の確率で遺伝しますから、逆に言えば半数は遺伝しません。

FAPと診断された方のご家族は、腺腫(ポリープ)がなければ3年ごとの大腸カメラを行い、35歳までに複数回の大腸カメラで腺腫がなければほぼFAPを否定することができます。

 

ご家族ですでにFAPと診断されている人がいる場合や、家族の複数が30〜40歳代で大腸がんになっているという場合は専門家に相談しましょう。

ここでいう専門家とは、消化器系の医師(消化器内科・外科)のことです。

 

リンチ症候群

ミスマッチ修復遺伝子と呼ばれる遺伝子の異常によって、高確率で大腸がんを発症する病気です。

全大腸癌の2-4%を占め、決してまれとは言えない病気です。

同じく約半数は子が遺伝子異常を引き継ぎます。

以前は、「遺伝性非ポリポーシス大腸がん(HNPCC)」と呼ばれていました。

現在は、子宮癌卵巣がん胃がんなど、大腸がん以外のがんを発生するリスクもかなり高いため、全てを合わせて「リンチ症候群」と呼ぶのが一般的です。

 

こちらは、FAPと違って大腸にポリープが多発するわけではありませんので、がんにならない限り大腸カメラを受けても「異常なし」です

そこで、家族のがん罹患歴年齢など、さまざまな項目を含むガイドラインを用い、疑われる方に精密検査を行うという流れになります。

このガイドラインとは、アムステルダム基準ベセスダガイドラインと呼ばれ、世界的に使用されています。

 

さて、この病気の難しいところは、FAPと違って遺伝子の異常を引き継いでも大腸がんにならない人がそれなりにいることです。

遺伝子異常がある人の大腸がん生涯発生リスクは、男性で54-74%、女性で30-52%です。

したがって、大腸がん予防のために大腸切除を行うことは推奨されていません

一生かけても大腸がんにならない可能性が十分にあるのに、大腸を全て切除してしまうことは、失うものが大きすぎるからです。

そこでこの病気の方は、慎重な検査を行って大腸がんを早期発見することが最も大切になります。

大腸内視鏡検査を20-25歳頃から1-3年間隔で受けることが推奨されています。

いずれにしても、ご家族でこの病気と診断されている人がいる場合や、ご家族の複数が若くして大腸がんになっているという場合は、専門家に相談しましょう。

 

ちなみに、遺伝子検査は現時点では保険収載されておらず(保険が効かない)、自費となります。

かなり費用のかかる検査ですので、ご自身で企業に依頼するより、まず必要性があるかどうかを専門家に相談することをおすすめします。

※この記事の数値データは「遺伝性大腸癌診療ガイドライン 2016年版」を参照しています。

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