医師が教える正しい運動ダイエット|水泳かランニングどっちがおすすめか?

ダイエットのために運動したい、と思っている人は多いでしょう。

スポーツダイエットの主流は、ランニング(ジョギング)か、水泳(スイミング)ですね。

どちらを選ぶのが良いでしょうか?

 

インターネットでは、

ランニングの方が脂肪が多く燃焼するからランニングが良い

水泳で消費するカロリーはランニングの2倍以上だから水泳が良い

など、間違った情報がたくさん出てきます。

こうしたサイトに巧みに誘導され、結局は高額なダイエットサプリを購入してお金と時間を浪費する人はたくさんいます。

 

では、一体何が正しいのでしょうか?

私は職業柄、手術の前後に肥満患者さんの減量指導を行います

また私自身が100回近くのレース出場経験を持ち、長年の経験でランニングと水泳を知り尽くしています

今回はその経験を生かして、ダイエットに関する正しい知識を説明し、ランニングと水泳のメリットとデメリットを徹底比較します

 

なお、ダイエットは肥満症の「治療」であり、スポーツダイエットは肥満症に対する「運動療法」です。

医学的に正しい治療法でないと決して痩せられないどころか、健康を損ねるリスクすらあります

日本肥満学会発行の「肥満症診療ガイドライン」に基づき、医学的根拠の確かな情報のみを書きますのでご安心ください。

 

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ダイエットに最も重要なこととは?

まず、ダイエットの大前提は、

「年中通して継続可能か?」

であることを最初に強調します。

運動は長期的に継続しなければ痩せられません

これは根性論ではなく、生活スタイルの問題です。

 

たとえばあなたが会社員で、毎日朝8時に家を出て帰ってくるのは20時頃だとしたら、ランニングがおすすめです。

早朝や夜遅くにプールが使えるフィットネスジムは都心部ですらほとんどありません

逆に、あなたが主婦で、日中には時間はあるが、夕方以降は家族が帰宅して忙しくなるとしたら水泳がおすすめです。

日中の暑い時間帯にランニングを選ぶと、真夏に継続することが大変になります。

必ず真夏の蒸し暑い時期になると走れなくなり、その数ヶ月で一気にリバウンドします

(この点については詳しく後述します)

 

まず第一に、長期的に継続できないダイエット法を採用してはいけないということです

なお、「泳げないから水泳は無理!」と思った方、水泳は泳げない人でも始められます。

以下の記事もご参照ください。

 

消費エネルギーは本当に違う?

次に、

ランニングと水泳の消費エネルギーは本当に違う?

という点を見ていきます。

 

1時間あたりの消費エネルギーは、以下の式で簡単に求められます。

消費エネルギー(kcal) =METs値 × 体重(kg)  × 1.05

この「METs(メッツ)」が運動の種類によって異なります。

ゆっくりジョギング:6メッツ

速めのランニング:11メッツ

ゆっくりクロール:5.8メッツ

速めのクロール:10メッツ

(国立栄養健康研究所「身体活動のメッツ表」を参照)

体重60キロの人で、上の式に当てはめて1時間あたりの消費カロリーを計算すると、

ゆっくりジョギング:378 kcal

速めのランニング:693 kcal

ゆっくりクロール:365 kcal

速めのクロール:630 kcal

これを見れば、ランニングか水泳かが問題ではなく、どのくらいの強度かが問題だということがわかると思います。

 

ただし、この計算はあくまで「目安」に過ぎません。

実際には、

最初は頑張って走っていたけど途中で疲れて歩いた、休憩したというケース

しばらく泳いで途中で水中ウォーキングに変更したというケース

はよくあります。

現実にはMETs値が練習中に一定ではないということです

ですから、消費エネルギーを目標にするのではなく、

「ややきつい程度」

という自覚症状を目標にし、

「1週間に2回以上、1回あたり30分以上」

を目安にするのが理想的です。

(最初は週1回から始めてもかまいませんが、徐々に2回、3回に増やす必要があります)

 

また通勤や家事などの日常動作でもエネルギーを消費します

CASIOのホームページでは、階段の上り下りや庭の手入れなど、様々な日常動作の消費カロリーが簡単に計算できますので、参考にしてみてください。

なお、ガイドラインで引用されたデータでは「3メッツ以上の強度の身体活動を1週間あたり23メッツ」が一つの目安です。

 

部位によって痩せやすさは違う?

「負荷がかかった部分が痩せやすい」と誤解している人もよく見ます。

たとえば、水泳は上半身、下半身ともに均等に負荷がかかりますが、ランニングは下半身に負荷がかかりやすいです。

すると、ランニングは足が痩せやすい、水泳は全身が痩せやすいと誤解する人がいます

 

同じ消費エネルギーであれば、水泳とランニングのダイエット効果は同じです。

消費エネルギーに応じて、全身の体脂肪(内臓脂肪及び皮下脂肪)が一様に減少するだけです。

(もともと男性は内臓脂肪が、女性は皮下脂肪が多いという違いや、人によって体質的に脂肪がつきやすい部位が違う、という個人差はありえますが。)

 

「足を細くしたいので足を中心にダイエットをする」

と言って足の筋力トレーニングをしている人もいます。

筋力トレーニングは無酸素運動が中心なので、筋肉がつくだけで痩せません(体脂肪は減りません)。

負荷がかかった部分が引き締まって見える効果は、筋肉を鍛えるのと同時に脂肪を減らさなければ得られません

 

また、泳法によって痩せ方が違う、という誤解もあります。

クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライではいずれも上半身と下半身をほぼ均等に使います

「どの泳法ならどこが痩せやすいか?」

という質問の答えは「消費エネルギーが同じならどれも同じ」です。

最も自分が継続しやすい泳法を選ぶべきです

ただし脂肪の燃焼には有酸素運動が大切ですので、水泳の際は息こらえをせず、きっちり息継ぎをするようにしましょう。

ではここから、具体的な話をします。

 

どの時間帯にトレーニングするか?

ランニングに時間の制限はありません

ウェアを着てシューズを履けば、早朝でも夜中でも自宅の前からトレーニングがスタートできます

一方、水泳には時間帯の制約があります

公立の市民プールは、朝9時頃から、だいたい18〜19時までしか開いていません

土日や休日は営業時間がさらに短くなっているところも多くあります。

フィットネスジムなら、朝は9時頃から開き、夜20〜21時に閉まります

都心部では、23〜24時まで開いているところも少数ですがあります。

まず自宅近くの候補となるジムやプールの営業時間を確認しましょう

仕事や生活スタイルが原因で、プールが使えるタイミングで最低週2回の練習時間がとれなければ、水泳は選べません

ランニングを選びましょう。

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かかるお金はどのくらい違う?

水泳とランニングには、いずれも初期投資維持費がかかります。

 

初期投資

水泳にかかる初期投資は、水着、キャップ、ゴーグルなどの用品代と、スポーツジム等の入会費です。

一方ランニングにかかる初期投資は、ランニングウェア、シューズなどの用品代です。

いずれも道具をそろえるのに、1〜2万円程度かかり、道具の費用はほぼ同じです。

スポーツジムの入会費は、タイミングによってはキャンペーン等で無料のこともありますが、有料なら4000〜8000円といったところです(ジムによります)。

 

維持費

水泳はランニングより維持費がかかります。

スポーツジムなら会費が月5000〜10000円程度、市民プールなら1回の利用料が400〜900円程度かかります。

ジムの会費は都心ほど高く、また営業時間が長くて通いやすい所や、設備が充実している所は高い傾向があります。

一方ランニングに維持費は不要です。

道具があればどこでも走れるからです。

よって、初期投資も維持費も、施設利用料の分だけランニングより水泳の方が高くつきます

 

ただし、水泳でもランニングでも道具は消耗しますので、定期的に同じくらいの道具代がかかります

道具の交換頻度は練習頻度によります。

週に2回の練習なら、シューズや水着は1〜2年以上持ちます。

耐久性を重視した水着の中には3〜4年使用できるものもあります。

逆に、誤って競泳用のスピードを重視した水着を買ってしまうと、耐久性が劣るためあっという間に消耗します。

気をつけましょう。

 

肥満の人はどっちがいいか?

BMI 25以上の肥満の方には水泳(水中ウォーキングから)をおすすめします

水泳のメリットは、かなりの肥満の方でも安全に始められることです。

体重の重い方がウォーキングやランニングを突然始めると、膝や足首などの関節を傷めます

走っている時は、片脚に体重の3〜4倍以上の負荷がかかります

体重80kgの人が走ると、膝には200kg以上の負荷がかかることになります。

せっかく意を決してランニングを始めても、関節を傷めてしまうと一気にやる気が失せ、習慣化する前にやめてしまいます。

 

一方水泳は浮力によって関節への負担が小さくなります

膝や足首にかかる負荷は体重の10分の1以下とされています。

泳ぐ場合も水中ウォーキングする場合も、体に負担が非常に少ない運動と言えます。

 

天候に左右されないのは水泳

水泳は雨の日でもトレーニングできますが、ランニングは不可能です。

もとより仕事が忙しい人は、週にトレーニングできる日が限られています。

トレーニングしようと思っていた日に雨が降って走れなくなると、途端に継続する気が失せることがあります

一方水泳はやろうと決めた日は必ず練習できるので、天候に関わらず習慣化しやすい利点があります。

もちろんランニングも、スポーツジムに入会し、ランニングマシン(ルームランナー)を使えば雨の日でも継続はできます。

ただ、ランニングだけが目的でジムに入会しても、当然晴れた日の方が多いため、行く頻度は少なくなります。

ややコストパフォーマンスは悪くなると思った方が良いでしょう。

ランニングマシン以外に水泳も筋トレもしたい、という方にはジムをおすすめできます。

 

短時間で済ませられるのはランニング

水泳には、ランニングにはない「運動前と運動後の時間の浪費」があります。

まずスポーツジムやプールに行くのに時間がかかります。

施設に到着したのち、受付をして更衣室に向かい、水着に着替えたのちプールに向かいます。

ここからようやく練習開始です。

この時点で、速い人なら数キロはランニングできます

その後、シャワーを浴び、全身を拭いたりドライヤーをかけたりしたのち服を着替え、受付をして自宅に帰ります。

人によっては浴場やジャグジーを利用して帰りたい人もいるでしょう。

私の経験上、水泳の場合は、

「トータルでかかる時間=練習時間+施設の往復にかかる時間+30分」

というのが目安です。

一方ランニングなら、かかる時間はほぼ練習時間のみです。

短時間しか練習時間がとれない方はランニングの方が向いているでしょう

 

水泳特有のデメリット

水泳には、ランニングにはない特有のデメリットがいくつかあります。

まず、女性は月経中(生理中)の練習がやや難しくなります

トレーニングを目的とする女性選手はタンポンを使用して練習を継続しますが、ダイエット目的の人が生理中にそこまでのモチベーションを維持するのは難しいでしょう。

 

また、化粧の問題もあります。

水泳後は化粧が落ちていますが、帰宅時に化粧をしないことに抵抗を感じる女性は少なからずいるでしょう。

むろんこれは人によって様々でしょうし、自宅から徒歩の距離なら、あるいは車で通うなら気にならない、という方もいるかもしれません。

この辺りはデメリットと感じる人とそうでない人がいるでしょう。

 

一方、塩素による肌や髪の毛への影響は、ダイエット目的での練習頻度であれば、あまり気にする必要はありません

練習後すぐにシャワーのお湯でしっかり髪を流し、顔を保湿すれば大きな問題ありません

(もちろん毎日何時間もトレーニングすると、このようにケアしても髪はかなり傷みます)

 

目や耳への影響(結膜炎や外耳炎などのリスク)も、練習後に清潔に洗えばさほど気にすることはありません。

私はかつて長い期間、1日約2〜4時間、週6日の激しい水泳トレーニングを行なっていましたが、目や耳の感染症の経験は一度もありません

 

以上が、ダイエットの正しい考え方と、水泳とランニングの違いとメリット・デメリットです。

自分の生活スタイルを考えて、どちらが続けられそうかしっかり考えて選びましょう

ランニングに必要なものは以下の記事でまとめています。

ぜひご覧ください。

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医師。専門は消化器外科。二児の父。
ブログ開設4ヶ月後に月間67万PV達成
時事通信社医療情報サイト「時事メディカル」
「教えて!けいゆう先生」のコーナーで定期連載中。
エムスリーでも連載中&「LIFESTYLE」企画・監修。
「劇場版コード・ブルー」公開前イベントに出演。
プロフィール詳細はこちら

医師が教える正しい運動ダイエット|水泳かランニングどっちがおすすめか?」への8件のフィードバック

  1. りこ

    こんばんは。
    負荷がかかった部分が痩せるわけではない。とありますが、マラソン選手と競泳選手に限らず各競技によって体型に特徴が見られるのは何故ですか?

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      りこさん
      体型の特徴の違いは、種目によって負荷のかかる部位が違い、それが筋肉量の違いに繋がるからですね。
      そして、アスリートはその負荷のかかる部分をさらに筋力トレーニングで鍛えますので、それがさらに増幅されることになります。
      また幼い頃から同じスポーツをしているトップアスリートは骨格もその種目に適したものになっているため、それが体型の特徴になっている可能性もありますね。

      返信
  2. TOM

    私も年に1度のフルマラソンを目標にランニングをしています。やる気を保つにはには何か目標を作るのも大切かなと思ってます。
    もう一つ、ウォームアップとクールダウンの事ですが、忙しく時間がないと、つい疎かにしてしまいますが、重要性は喧伝されている通りです。医学的にも重要性はある、と見て良いのでしょうか?先生はどの程度のウォームアップ、クールダウンをされてますか?

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      私もウォームアップ、クールダウンは非常に大切だと思っていますし、今は趣味程度なので多少手を抜きますが、本格的にやっていた頃は、クールダウンは次のトレーニングのウォームアップ、と考えてかなり厳しくやっていました。
      関節の可動域はウォームアップによって明らかに広がりますし、筋疲労はクールダウンによって軽減しますので、医学的に考えてもやるべきだと思います(きっちり文献に当たってエビデンスを確認したわけではありませんが・・・)。

      返信
      1. TOM

        やはり、喧伝されてる通り重要なんですね。
        怪我防止と疲労軽減の効果は間違いなさそうですね。
        何と言っても怪我をしては元も子もないですし、疲労が残るのもモチベーション低下になりますからね。

        返信
        1. けいゆう 投稿作成者

          おっしゃる通りです。
          継続の妨げとなるものはきっちり排除しておく必要がありますね。

          返信
  3. TOM

    脂肪は消費エネルギーに比例して全身で一様に減る。部分的にやせる(脂肪が減る)事は期待できない。
    と言う事に関してですが、同じような事を妻に話した時に、「それじゃあ、胸が萎んじゃうから嫌だ」と言われました。
    男性にしてみたら「それよりも健康を考えて。。。」となるのでしょうが、なかなかそうはならないようで。。。
    やはり、女性は「胸」が萎む可能性があると考えるべきなのでしょうか?

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      体質によって痩せやすい部位がある、ということはあると思いますが、狙った部分だけ痩せる、ということは難しいということですね。
      胸(乳房)は皮下脂肪と乳腺組織ですので、理論的には皮下脂肪は減る可能性はあるでしょうね。体質によって差はあると思いますが・・・。

      返信

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