医療ドラマの医師の服装はリアルか?スクラブスーツと白衣の使い分け

医療ドラマでの医師の服装は結構リアルで、私は違和感を抱くことがあまりありません。

それどころか、キャラクターに応じてうまく服装を使い分けているので、見ていて非常に興味深いです。

例えば、「ブラックペアン」の主要キャラクターの服装を思い出してみてください(参考に今日の私のツイート)。

堅実キャラの高階は、カッターシャツにネクタイをして、その上から白衣、というかなりきっちりした格好です。

一方、研修医の世良は、水色のスクラブスーツです。

ドラマ中では、このスクラブの上に白衣を着ていることもあります。

 

佐伯、西崎の両教授の服装を比較してみてください。

佐伯教授はオペの名手というイメージで、スクラブの上に白衣です。

ラフな格好の教授に驚いた人がいるかもしれませんが、実はこれは非常にリアルです。

手術を頻繁にする外科系教授の中には、脱ぎ着しやすいスクラブを選ぶ人が結構います。

一方、論文大好き、学術分野に長けた西崎教授はスクラブを着ず、高階と同じシャツにネクタイです。

また、佐伯は白衣のボタンを留めませんが、西崎はいつもきっちり留めている、という違いもあります。

実際、技術面で選ばれた大学教授もいれば、学術面で選ばれた大学教授もいるので、これを対比的に描いたのでしょう。

 

さて、では主人公の渡海はどうでしょうか?

完全な私服に白衣を羽織っただけと、全くキャラ通りの服装です。

公式ホームページの写真が分かりやすいです)

これだけ細かいところまで、キャラに応じてきっちり服装が練られているということです。

 

現実でも、医師の服装が厳しく定められている病院はあまりないので、ドラマのように本人の好みに応じてバラバラの服装になることは多いです。

よって服装に医師本人の性格が現れるといっても過言ではないでしょう

 

では、どんな人がどんな目的でスクラブや白衣を使い分けているのでしょうか?

渡海のような私服に白衣の医師はいるでしょうか?

これまでも何度か質問をいただいた医師の服装について、今回はドラマを参考にしながら分かりやすく解説してみたいと思います。

 

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スクラブスーツとは?

スクラブスーツとは、半袖で首元がVネックのカラフルな医療用シャツのことです。

「スクラブ」とは「ごしごし洗う」という意味で、何度洗っても傷みにくい丈夫な素材でできているためこう呼びます。

スクラブのズボンもあるので、上下とも同じ素材で揃えることが多いですが、世良君たちのように下に白衣のズボンを履く人もいます

 

最近はスクラブを着る医師がかなり多いので、ドラマでもスクラブを見ることが多くなりました。

上の写真のように、「ブラックペアン」の東城大病院では研修医全員に水色のスクラブが支給されているようですね。

病院によっては規定のスクラブが病院から支給されるところもありますが、自分で好きなものを購入する方が多いです(もちろん自腹)。

 

「コードブルー」では、救急医全員が救命センター独自のロゴ入りの青いスクラブを着ています。

実際に病院で、肩や胸に「Surgery(外科)」のようなロゴが入ったスクラブを着た医師を見ることがありますね。

これは、科の中で「お揃いのスクラブを作ろう!」という話になり、独自にデザインを考えて業者に発注しているケースが多いです。

いわゆる「中学生のクラスTシャツ」と同じノリです。

各科ごとに異なるスクラブを支給してくれるような親切な病院はまずない(たぶん)ので、自分たちで自腹で買っているわけです。

(職員全員が同じスクラブを支給される、という病院はありますが)

私もこれまで科のロゴが入った自作のスクラブを複数持っています。

 

スクラブの利点と白衣との違い

昔からの慣習で医師は白衣を着ますが、実は白衣は私たちの仕事内容にはふさわしくない、合理的でない服装です。

まず無駄に裾が長いため、現場で作業するには動きにくく、どこかに引っかかることもよくあります。

車椅子の患者さんと話したり、少し処置するためにしゃがみ込んだりするだけで白衣の裾が床につきます

白衣は毎日クリーニングに出すわけにはいかないので、清潔とも言い難いです。

血液や体液が付着することもありますが、真っ白なので汚れも目立ちます

 

特に清潔さが求められる処置では白衣を脱がないといけませんし、大きいので畳んでおくのも面倒です。

病棟で患者さんに対して医師数人で処置をする、という場面では、ベッドサイドや部屋の外に脱いだ白衣が何着も散らかり、終わった後間違えて別の人の白衣を着てしまう、ということもあります。

よって白衣は、医師としての信頼性を示したり、患者さんに安心感を与えるためのコスチュームに近い意味合いと言えます。

 

一方、スクラブは頻繁に容易に洗えますし、動きやすくて安全です。

病院で忙しく動き回る医師にとっては、圧倒的にスクラブの方が合理的な作業着と言えます。

よってスクラブだけを着て、白衣なしで仕事をする、という医師も多くいます。

ただ、病院によっては今でも、

「スクラブだけで患者さんと接するのは失礼だから必ず上から白衣を着るように」

と指導するところもあります。

この場合は、スクラブの上に白衣を着ます。

「患者さんからどう思われるか?」ということが結果に大きく反映するのが医療現場なので、この辺りは「合理性だけにこだわることができない」部分です。

むろん、ビジネスマンが取引先の人と会うのに真夏でもスーツを着ることを思えば、どの業界でも合理性や利便性だけで服装を決められないのは同じですが。

 

渡海のように私服に白衣を着る医師もいますし、ズボラな人はTシャツの上に白衣です。

私は個人的には、私服の上に白衣を着るなら、襟のついたシャツを着るのが望ましいと思います。

もちろん明文化されたルールはなく、個人の好みですが、やはりTシャツに白衣ではだらしない印象を与えるので私はやりません。

ネクタイまできっちりする医師もいますが、外科系だと手術のたびに着替えるのがかなり面倒なので、内科系の医師に多い印象です。

ちなみに渡海は「腕はピカイチだが普段はだらしない、マナーは気にしない」というキャラですから、部屋着に白衣がぴったりということになります。

 

余談ですが、看護師の服装も時代とともに変わってきました。

ナースキャップは不潔であったり、点滴に引っかかって危ない、という観点で廃止されているところが多いようです。

私の妻は看護師ですが、妻が以前勤めていた病院では看護師も全員支給されたスクラブでした。

看護師は医師以上に体を動かす仕事なのでスクラブの方が合理的ですが、やはり「白衣の天使」が与える印象を失わせて良いのか、という意見もあります。

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ケーシー白衣という選択肢

ここにはまだ挙げていない医師の服装としてもう一つ多いのが「ケーシー白衣」というものです。

「白い巨塔」で伊藤英明さんが、「ドクターX」では田中圭さんが着用していましたね。

白衣と同じ生地ですが、丈が短い半袖で、首の部分がタートルネックのようになっています

アメリカのドラマ「ベン・ケーシー」で、脳外科医のベン・ケーシーがこれを着ていたことに由来するので、「脳外科医の制服」という人もいます。

以前私が勤めていた病院では、脳外科医全員がケーシーというところもありましたが、脳外科医以外でもこれを好む人は多くいます。

 

ちなみにこれは、Tシャツで外出中に病院に呼ばれても、上からケーシーを着れば下がTシャツだと分からないという利点があります。

「Tシャツの上に白衣」に抵抗のある私は、念のためケーシーも一着は病院に置いています。

ただ、逆に襟のついた服の上には着ることができない、という不便さもあります。

肥満した医師がケーシーの下に白衣のズボンを履くと、全身真っ白で雪だるまのようになるため、この服を嫌う人もいます。

 

余談ですが、ドクターXで岸部一徳さん演じる「晶さん」の愛猫の名前も「ベン・ケーシー」ですね。

この海外ドラマに由来しているのでしょう。


というわけで今回は医師の服装について解説してみました。

これから医療ドラマを見るときは、服装に注目してみると製作者がどんな風なイメージでキャラを描きたいかが分かりますよ。

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医師。専門は消化器外科。二児の父。
ブログ開設4ヶ月後に月間67万PV達成
時事通信社医療情報サイト「時事メディカル」
「教えて!けいゆう先生」のコーナーで定期連載中。
エムスリーでも連載中&「LIFESTYLE」企画・監修。
プロフィール詳細はこちら

医療ドラマの医師の服装はリアルか?スクラブスーツと白衣の使い分け」への10件のフィードバック

  1. メロンパン

    うちの大学では学生が研修するときはケーシーだそうです。
    スクラブの学校もあるみたいで、羨ましいなぁと思ってしまいます。コードブルーもありましたし、スクラブが浸透しているようにも感じるので…

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      ケーシーで統一されているんですね〜。私が学生の頃は白衣でもケーシーでもOKでした。
      学生がスクラブ、というのは意外です。そういう大学もあるんですね。
      スクラブは動きやすいし清潔なので、私は賛成です。

      返信
  2. きんもくせい

    けいゆう先生

    今回も、興味深く読ませていただきました。
    医療ドラマは、細部までこだわってキャラ設定しているんですね。
    スクラブは先生のブログで覚えましたが、ケーシーは知りませんでした。
    歯科医もこのタイプを着ているイメージがあります。
    余談ですが、ケーシーと聞いて私はまずケーシー高峰さんを思い出しました(笑)

    患者側からすると、白衣はどうも緊張してしまいます。
    最近は、柄のあるスクラブがあったりするそうで、小児科などはいいかもしれませんね。

    私は小さい頃、川崎病で1ヶ月ほど入院していたのですが、楽しみだったのがおやつのアイスです。
    アイスを持ってきてくれた看護師さんのナースキャップに黒いラインが入っていたのを今でも覚えています。
    今年入院した時は、看護師さんは全員キャップなしのパンツスタイルでした。
    医師も看護師も、清潔感があり動きやすい服装が求められているんでしょうね。

    ところで、以前医療者はサンダルを履くことが多かったそうですが、薬品がかかってしまうなど危険があるため、スニーカーになっていると何かで読みました。
    入院中は靴まで見ていなかったのですが、診察と手術では靴も違うんでしょうか?
    今度、ドラマでも靴を見てみようと思います。

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      確かに歯科医の先生は多いですね。逆に普通の白衣をあまり見ないかもしれません。
      昔は形式が大事にされていたのだと思いますが、徐々に清潔さや動きやすさなど医学的な合理性が重視されるようになってきていると思います。
      医師は靴も完全に自由なので、サンダルの人もいればスニーカーの人もいますし、革靴を履いた人もいます。
      手術の時と普段の診察の時は靴を変えるのが一般的で、そのようなルールを定めている病院も多いですが、厳密でない病院もありますね。
      全体的に医師の服装はアバウトだということです。

      返信
  3. 草加市

    僕はあるアメリカの大学病院で心臓外科医として働いているのですが、こちらでは常にスーツとネクタイです。白衣も来ません。ジャケットです。こちらでは患者や家族、患者を紹介してくれる内外の循環器内科医、同僚、研究でコラボしている人たち、秘書さん、アシスタント、レジデントたちを含め、非常にプロフェッショナルな関係で、手術が終わってからはすぐにまたスーツとネクタイに着替えます。自分自身、研修医時代は常に手術着で(そのまま通勤、そのまま食事や買い物もあたり前)でだらしない身だしなみをしていたので、面倒くさがりの自分がこうなるとは夢にもみませんでした。ところが、独立した外科医になってからは病院にいるといつどこで誰に見られているかもわからないので、常に身だしなみには気をつけているようになりました。こちらで成功している外科医はみな本当にビシっと決まっています。

    そう考えると、日本は医師の恰好は非常にラフだと思います。ただし、けいゆう先生がおっしゃる通り、スクラブは清潔の観点で非常に理にかなっており、不潔な白衣やネクタイをぶらぶらされるよりもよっぽど良いと思います。

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      アメリカでは全員スーツにネクタイ、白衣なしなんですね。
      患者さんから見られることを意識して全員がきっちりした格好でいることは、医療者としては理想的で、素晴らしいことだと思います。
      確かにスクラブは清潔さや動きやすさの点で有利ですが、自由度が高すぎると、必ずスクラブの下に派手なインナーを着てみたり、派手なカラーのクロックスを履いてみたりと、自由が行きすぎる人が現れます。私も後輩にその点で指導した経験は何度もあります。
      形式にこだわるのも良くないですが、自由を高める一方である程度の縛りはあった方が良いのではないかと思います。

      返信
  4. すみれ

    先生、お疲れ様です。今回も大変興味深く拝読しております^^
    先生方の服装でも、いろいろあるんですね!

    余談ですが、私は受付ではありますが、制服はナースの方々と同じ白衣なんです。
    その上に、暗めの色のカーディガンを着ています。
    最初支給されたとき、ちょっとびっくりしました(笑)
    受付なのに、ナースに間違われないかしら・・・と。^^;
    総合病院・大学病院では、事務の方々も人数も多く制服が統一されてますが、
    個人医院では、経営しておられる院長先生のご意向や方針もおありなのでしょうね。

    登場人物の性格を台詞の言動だけでなく、服装という視覚面からも表現しているんですね。
    先生の記事で、また一味違った、一歩深く入り込んだ医療ドラマが楽しめます!

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      そうなんですね、ナースと一緒だと、ナースと勘違いされて職務外のことまで尋ねられたりしそうですね。
      お互い誤解を招くので、事務は事務だけの制服があった方が便利な気はしますよね。
      まあクリニックだと、職種ごとに別のものを発注するのは大変でしょうし、コスト面を考えても、病院のように細かく区別するのは難しいかもしれませんね。

      返信
  5. TOM

    前にもお話ししたかもしれませんが、私がしばらく生活していた、ラテンアメリカ某国では、医師は比較的「きっちりした格好」(と言ってもそこはラテンで襟付きシャツにスラックス、たまにジャケットという程度ですが)で診察してました。もちろん手術となれば別でしょうが。私も着るような実験着としての白衣スタイルをしてるのはテクニコと呼ばれる下働きの人たち(研修医もいたかもしれません)。そしてケーシー白衣はレントゲン技師などの検査技師が着用していました。

    脇道に逸れますが、私はケーシー白衣を見ると「ケーシー高峰」を思い浮かべてしまいますw
    グラッチェ!(笑

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      そうなんですね、襟付きシャツにスラックスだと、日本よりはきっちりしています。
      やっぱり白衣はなしなんですね。
      国ごとに医師の格好を比較したら面白いかもしれないですよね。
      ケーシー高峰さんは他の方からのコメントにも登場したのでウケました笑

      返信

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