休日・夜間に救急外来に行く前に知っておくべき4つのこと

みなさんは夜中や休日に突然お腹が痛くなるなど体調を崩したらどうしますか?

小さなお子さんがおられる方は、お子さんが突然発熱したりすることもあるでしょう。

夜間や休日に病院はあいていません

したがって救急をやっている病院に行くことになります(救急車を呼ぶ場合でもそういう病院に運ばれます)。

こういう時みなさんは、ドラマのコードブルーのように「救急医療の専門家」が診てくれると思っていませんか?

この「救急外来」の仕組みというのは、意外と知られていません。

期待した医療が受けられず怒って帰る人はたくさんおられます

救急外来の仕組みをきっちり分かっていただくため、今回は救急外来に行く前に知っておいてほしいことをまとめます。

 

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ほとんどの病院に救急医はいない

医療ドラマを見て誤解している方が多いかもしれませんが、世の中の大半の病院に救急外来専属の医師はいません

救急の専門家が多くいて、全患者を救急医が診療しているのはごく限られた施設だけです。

では誰が診ているのでしょうか?

各科の医師が持ち回りで診ています

こういうシステムを「各科相乗り型救急」と呼びます。

日本のほとんどの病院はこのタイプの救急医療を行なっています。

(救急医療のシステムについて知りたい方は「救急医の仕事 ドラマと現実の違い/「救命」「ER」の意味の違いとは?」をご参照ください。)

専属の救急医がいる病院なら、救急医がシフトを組んで、平日・休日、日中・夜間問わず24時間体制で診ることができます。

一方救急医不在の各科相乗り型の病院ではそれができません。

平日の日中であれば、症状に合った科のその日の救急担当の医師が診るか、緊急対応が必要なければ各科の一般外来に行ってもらうことになります。

ところが夜間や祝日は各科の医師はもちろん休みです。

そこでローテーション表が作られ、それに合わせて外科系1人、内科系1人、研修医2人のような形で救急外来を担当します(ルールは病院によって様々です)。

ですから、休日や夜間に足を怪我して救急外来に行っても、その日の外科系医師が消化器外科医かもしれないし、乳腺外科医かもしれないし、泌尿器科医かもしれません

そんなことでは困る!と思った方、もう少し読み進めてみてください。

 

休日や夜間の救急外来の目的は2つあります。

・専門科医師へ引き継ぐための応急処置

・専門科医師が診る必要があるかどうかの緊急性の判断

具体的には以下のような流れです。

怪我や病気に対して診察・検査、重症度を判断

軽症なら応急処置のみ行い、平日の専門科の外来を予約する

重症なら(緊急性が高ければ)その場で専門科の医師を呼び出して治療を依頼する

常に専門の医師が全員揃っていて診療可能、というのが良いのかもしれませんが、休日や夜間までそれをやるほどのマンパワーはありません。

というより「その必要はない」と考えられています。

休日や夜間に、その場で専門の医師が診なくてはならないほど緊急性の高い疾患で来る患者さんはきわめて少ないからです。

必要な時に呼び出せば十分なのに、仕事のない医師を勤務させると人件費が無駄に多くかかります

そしてこのコストは将来的に患者さんの負担に跳ね返ってきます。

 

ですから、たとえば上記の足を怪我したケースで救急外来にやってきて、

「整形外科の先生に診てもらいたいです」

と言っても、その希望が叶うかどうかは、

「整形外科医が緊急で診る必要がある病状かどうか」

次第ということになります。

それを判断するのが救急外来です。

(その日の担当が偶然整形外科医なら、整形外科医が診てくれますが)

軽症の方の場合、あくまで救急外来には「一般外来へのつなぎ」の役割しかないことを覚えておいてください。

 

なお、病院によっては産婦人科医、小児科医が単独で夜間・休日のローテーションを組んでいるところもあります。

このタイプの病院だと、妊婦や産科疾患は常に産婦人科医が、子供は小児科医が診てくれます

ただしこの体制を作るためには、産婦人科医、小児科医がそれなりの人数いなくてはなりません。

少ない人数なのに単一の科の医師だけでシフトを回すと、一人の医師が週に何回も当直をしなければならなくなるからです。

また、小児急病センターなど、小児科医だけが勤務する救急施設もあります(一般にはその日だけの非常勤)。

 

救急外来は医師教育の現場

救急外来は、多くの病院で研修医の教育の場となっています。

みなさんの中でも、救急外来に行ったら研修医に診られた、という経験をお持ちの方がいると思います。

もちろん上級医の監督下ですが、救急外来では研修医が最初に診療することが多い傾向があります。

専門科の一般外来では、前線に研修医を出すわけにはいきません。

まだ専門領域の知識が乏しいからです。

救急外来は、上述したように応急処置と緊急性の判断が目的ですから、全身を診察し、正しく診断する能力を学ぶ良い場でもあります。

「研修医に診療させるなんてけしからん!」

と思った方がおられるかもしれません

しかし、どんな名医でも最初はビギナーです。

医師を教育しなければ未来の患者さんは救えません

医療のクオリティを落とさずに教育を行いやすいのが救急外来です

もちろん最終判断は上級医が行いますし、判断が怪しければ上級医が診察し直します。

患者さんにリスクが生じないよう最大限の注意を払いますから、ことさらに心配する必要はありませんが、救急外来を受診する方はこういう事情は分かっておいた方が良いでしょう

 

救急外来の待ち時間は長い

救急外来は「救急」という名前から、待たずに診てもらえると思っている人がいます。

しかし実際には、待ち時間は長いところがほとんどです。

休日や夜間は外来をやっている病院が少なく、限られた病院に患者さんが集中しやすくなっているからです。

特に連休中はかなり混みます。

「連休が続いてしばらく普通の外来に行けないから救急外来に行っておこう」

という発想になるからですね。

正月の3日間で患者さんが1000人を超える救急外来に勤務したこともあります。

もちろん飲まず食わずぶっ通しで働き続けます。

待つ患者さんも大変ですが、働く医師も地獄です。

いずれにしても、連休中は2〜3時間待ちが普通、というケースは少なくないでしょう。

 

経験上は金曜など連休前の夜もかなり混みやすいです。

開業医の先生からの紹介が増えるからです。

開業医の先生は、たった一人で患者さんの全リスクを負います。

普段の平日なら、頻繁に診ておいた方が良い病状の方は翌日の外来にも来てもらえますが、連休前だとそれができません。

次に患者さんに会うのは早くても連休明け。

連休中のリスクを考えれば「今日のうちに入院が可能か判断できる病院で精密検査をしておいた方が良いだろう」という発想になりやすくなります。

みなさんもこういうタイミングで受診する時は、待ち時間は覚悟した方が良いでしょう(もちろん病院によりますが)。

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救急外来で診断書は出ないことが多い

交通事故や傷害事件などで、診断書を求めて救急外来に来る方がおられます。

前述の通り、救急外来では専門の医師が診るわけではないため「診断書を出さない」という規則になっている病院が多いです。

「症状は軽いけれど目的は診断書」という方が救急外来に来られ、1時間や2時間待ってようやく医師と会えたら「診断書は出せません」と言われて怒ることが結構あります。

怒るのはもっともだとは思いますが、診断書が目的であれば事前に発行が可能かを確認しておいた方が無難です。

救急外来で診断書が出せない病院と分かれば、平日の日中に専門の外来(整形外科などが多いでしょう)を受診するようにしましょう。

もちろん診てもらいたい症状があるなら別ですが。

 

以上が救急外来に関してみなさんに知っておいてほしいことです。

救急は、ドラマなどで取り上げられることが多く、それが救急外来の代表的な姿だと思うとがっかりすることもあるかもしれません。

あくまで救急外来は「応急処置的な窓口でしかない」と思っておきましょう。

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休日・夜間に救急外来に行く前に知っておくべき4つのこと」への2件のフィードバック

  1. yoshi

    お疲れ様です。救急診療は、家族が騒ぎまして何度かお世話になりました。
    気のせいといいますか、神経過敏と言いますか、検査で何も出てこなかった痛みの時には、「昼に来てくださいね!!!!」とお叱りを頂きました。
    お忙しいのに手間を取らせてしまったので、当然です。あの時は本当に申し訳なかったんですが、高齢者というのは突然死に至ったりしますので、私たちもあわててしまって。
    待ち時間は確かに長かったです。
    ただ、肩腱板断裂の時に痛み止めを処方されて帰されたのはビックリしました。何か治療をしてくれるだろうと思い込んでいました(笑)。
    お正月はそんなに大変なのですね。私はお餅を喉に詰まらせる人が行くものだと思っておりました。
    ご多忙の中、更新お疲れ様です。毎日更新しなくても見に来ますので、ご無理ないように。

    返信
    1. keiyou 投稿作成者

      yoshiさん
      いつもお優しい言葉をいただき、ありがとうございます。
      救急に来られる方は、やはり昼まで待てない不安があるから来られているのだと思いますし、そこは医師もわかっておかないとダメですね。
      肩の腱板断裂は、確かに「待てる整形疾患」の代表ですね笑(笑い事ではないですが)。
      まあそういうことも当事者は当然分かりませんから、救急の医師はそれを丁寧に説明する義務がありますし、行く側はがっかりしないよう事前に仕組みや事情をわかっておいた方が良いだろうと思いこの記事を書きました。

      返信

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