熱中症と脱水症状対策・治療によく見る3つの間違い

私が外来で軽い熱中症の方を診療するとき、患者さん、あるいは周囲の人の誤解が症状を悪くしているなと思うことがよくあります。

今回は、熱中症や、それによる脱水症状に対してよくある間違いを3つ指摘したいと思います。

 

まずは熱中症について、最初にごく簡単に説明します。     

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熱中症とは

熱中症は、長い時間高温な環境にいることで生じる全身性の障害のことです。

倦怠感めまい頭痛吐き気筋肉痛筋肉の痙攣など多彩な症状をともないます。

重度になると、意識を失ったり、肝臓腎臓などの臓器障害が起こり、命の危険が生じることもあります。

 

熱中症が重症化しやすいのは、高齢者と子供(乳幼児)です。

高齢の方が重症になる理由は二つ。

一つは、体温中枢の機能が低下していて、うまく体温の調整ができなくなっていること。

もう一つは、持病のために脱水になりやすくなっていることです。

たとえば糖尿病のある方は尿で水分が奪われやすく、脱水になりやすくなっています。

また、高血圧や心臓、肝臓などの病気で利尿薬を飲んでいる方も同じく、尿から水分が失われやすくなっています。

一方乳幼児は、体温調節機能が未熟であることと、体重あたりの体表面積が大きく水分が失われやすいことが原因です。

 

よく見る間違い1〜若い人の対策〜

確かに、熱中症は一般には上記のように説明されます。

高齢者や乳幼児が、熱中症で救急搬送されたり、命を落とすケースも多く見られます。

しかし、一般的な病院で外来診療をしていると、熱中症で受診される患者さんの多くは10歳代〜50歳代くらいの青壮年の方です。

典型的なケースは、暑い環境で長時間スポーツをした中学生・高校生、工事現場など炎天下で肉体労働をされる若い方の、軽症の熱中症です。

多くは救急車ではなく自力で受診されます。

 

周囲の人も、若くて元気な人の熱中症のリスクをそれほど重く考えていません。

普段元気なだけに、多少の暑い環境でも無理して作業を続けたり、あまり水分をとらないのだと思います。

先日私が診療した高校生は、体育館でのバレーの練習後に熱中症の症状を訴えられて受診しました。

部活では少量のお茶だけが許されていると聞き、私は唖然としました。

電解質濃度の低いお茶だけでの水分補給は、脱水を助長する危険があり、対応としては誤りですます(再度後述します)。

 

よく考えると当たり前なのですが、熱中症は、日中の暑い時間帯の活動性が高い若い方にも起こりやすい病気です。

重症例は確かに少ないですが、もともと元気な方々ですから、環境整備によって容易に予防できます。

こういう人達にこそ、涼しい場所での適度な休憩、適切な水分補給をルール化する必要があります。

 

よく見る間違い2〜点滴は必要?〜

外来を受診する軽い熱中症による倦怠感や脱水症状が見られる方で、点滴を希望する方が多くおられます。

おそらく、点滴の方が効果的に水分を補給できると考えているのだと思います。

しかし実際には、血管に針を刺して無理やり水分を注入するより、口から飲んだ方がより生理的で適切な水分補給です。

点滴は1本で500mlです。

つまり小さなペットボトルたった1本分です。

したがって口から水分を飲める人が、「1本だけ点滴をお願いします」と言うのはあまり意味がないことです。

 

ただし、口から水分補給をするならナトリウムやカリウム、クロールなどの電解質(ミネラル)を含む飲料でなくてはなりません。

水やお茶で補給すると、電解質が不十分で脱水症状をかえって悪化させることもあります

スポーツドリンクでも良いですが、電解質がやや少なく、糖質が多い点で「最適」ではありません。

理想的には0.1%〜0.2%の食塩水が良いとされていますが、わざわざ塩の量を計って作るのは面倒です。

そこで現実的に最適なのは、OS-1(オーエスワン)に代表される経口補水液です。

経口補水液は、同じ量の点滴をしたのと効果は同じとされており、脱水の予防、治療に最も有効です。

暑い時期には常備しておくことをおすすめします。

日本体育協会のホームページにもこのことが書かれてありますので参考にしてください。

 

一方で、以下のように「点滴でなくてはならない場合」もあります。

・口から飲めないケース(飲んでも嘔吐してしまう、意識がもうろうとして飲めない)

・一度に口から飲めないほど大量の水分補給が必要なケース(重度の脱水)

これらの場合はもちろん早急な点滴が必須です。

 

よく見る間違い3〜体の冷やし方〜

顔がほてってきたり体が熱くなったりして「熱中症かな?」と思い、おでこに「熱冷まシート」「冷えピタ」のような冷却シートを貼って対策される方をよく見ます。

おでこを冷やすと確かに気持ちいいのですが、残念ながら体温下げるのには全く役に立ちません。

体温上昇を防ぐ鉄則は、太い血管が通っているところを冷やして、体を流れている血液の温度を下げることです。

体の中で、太い血管が通っている場所は、わきの下足の付け根(そけい部)です。

熱中症の応急処置としては、この部分を氷などを使ってしっかり冷やすことが大切です。

これは風邪やインフルエンザなどで熱が出た時も同じです。

おでこを冷やす意味はありませんので、覚えておきましょう。

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