過換気(過呼吸)症候群の原因と対処法、紙袋での応急処置が危険な理由

「過換気症候群」で悩んでいる方は多いのではないでしょうか?

一般には「過呼吸(かこきゅう)」と言われることが多いのですが、正しくは「過換気(かかんき)」です。

過換気症候群は、非常に多くの人が経験する病態です。

自分の目の前で誰かが発作的な過換気を起こしたとき、適切に対処できるのが理想的です

またご自身が過換気で悩まされているという方は、正しい知識を持っておくだけでも安心感があるはずです。

今回は、過換気症候群の原因や正しい対処法を解説します。

誰でもわかりやすく書きますので、ご安心ください。

 

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過換気症候群の原因

過換気(過呼吸)症候群とは、呼吸の回数が異常に増えてしまった結果、手足や唇のしびれめまい動悸などの症状を起こす疾患のことです。

女性に多く、発生数は男性の2倍です。

救急外来で勤務していると、過換気の女性が救急車で搬送されてくることは非常によくあります。

 

過換気の原因の多くは、過度の緊張や不安などの心理的なストレスです。

泣くたびに過換気を起こしてしまう人もいます。

しびれなどの辛い症状が出ると余計に不安感が増し、さらに呼吸数が増える、という悪循環に陥ります

ではなぜ、過換気でしびれが出るのでしょうか?

この仕組みはやや複雑ですが、ネット上にはいい加減な情報が多いため正しく説明しておきます

 

呼吸は、酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す行為です(簡単に言えば)。

よって、呼吸数が過度に増えると、二酸化炭素を通常よりたくさん吐き出すことになります

すると血液中の二酸化炭素濃度が低下し、血液がアルカリ性に傾こうとします

これを「呼吸性アルカローシス」と呼びます。

血液の酸性、アルカリ性のバランスが崩れると血液中のカルシウムイオンが低下する、という現象が起こります。

カルシウム自体の総量は変わりませんが、アルブミン(タンパク質)と結合したカルシウムが増えるため、遊離しているカルシウムイオンは減ります(図の右側)。

筋肉の収縮に重要な役割を果たすのは遊離したカルシウムイオンなので、これが減ることで筋肉の脱力やしびれが起きるわけです(これを「テタニー」と呼びます)。

 

非常にややこしいですね。

「呼吸が増えたことに対する体の正常な防御反応」と覚えておくと良いでしょう。

テタニーは、過換気がおさまれば短時間で治ります

 

過換気症候群の正しい対処法

心理的なストレスが原因で起きた過換気は、決して命に関わることはありません

本人は息がうまくできないので、窒息するかもしれないという恐怖がありますが、長くても30分〜1時間で必ず治ります。

安心して、意識的にゆっくり落ち着いて腹式呼吸するようにしましょう

多くの方は、このように指示するだけで何も治療せずに自然に治ります

「過換気は怖くない、大丈夫」と自分に言い聞かせて、いつもの2倍くらいの時間をかけるイメージでゆっくり呼吸しましょう

自分でコントロールできる疾患だと理解しておくことが最も大切です

 

紙袋の使用はダメ!

以前は「ペーパーバッグ法」といって、紙袋を口に当てて呼吸する、という対処法が取られていたこともありました。

紙袋の中は二酸化炭素濃度が高くなるため、この空気を吸うことで血液中の低くなった二酸化炭素濃度を元に戻す、という理屈です。

しかし現在は、この方法は危険なため行うことはありません

万が一、隠れた呼吸器疾患や心疾患が原因だった場合、この行為によって命の危険があるからです。

また方法を間違えると窒息のリスクもあります。

医療者以外は意外にこのことを知りません。

くれぐれも「袋を使ったペーパーバッグ法は禁止」と必ず覚えておいてください。

そもそも心因性の過換気は、このような方法を使わなくても治ります

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どんな時に病院に行くべきか?

上述の方法を使っても過換気の発作が治らない時は、病院に行きましょう。

病院では、心因性ではない他の様々な疾患が隠れていないかどうかを確認します。

時に薬物中毒が原因の過換気もありますので、ご家族の方には薬物の過量摂取の恐れがないか確認が必要です。

病院では、診察や検査をした上で、呼吸を落ち着ける薬剤を点滴で投与することもあります

 

また、心因性の過換気を繰り返している方は、その心的ストレスの原因を回避することも大切です。

家族や交際相手、友人との人間関係が原因で過換気になっていることもあります。

こうした明らかな原因がないかどうか、確認が必要です。

 

一方、精神疾患が原因となっていることもあります。

薬物依存症や、パニック障害などの神経症は、過換気を引き起こす要因になります。

精神科での専門的な治療によってうまくコントロールする必要があります。

過換気を繰り返す方は、精神科(心療内科)を一度受診することをおすすめします

 

過換気症候群の予防法

過換気の予防法として、睡眠を十分とる、特殊な呼吸法やヨガを取り入れるなど、根拠のない対策がネット上で出回っています。

しかし最大の予防法は「過換気になったときに、その対処法を知っていること」です。

対処法を知っていれば、心理的ストレスが加わって発作を起こしかけても、窒息しそうな強い不安を抱かなくなります

これが結果として過換気を防ぐことにつながります。

過換気は全く怖くない、そして自分で対処できる、と分かっておくことが大切です。

また、周囲の人も同じようにこの病気と対処法を理解しておきましょう

周りが同じようにパニックになると、過換気の発作はどんどん悪化します


過換気症候群の原因と対処法について簡単に説明しました。

今後過換気を起こしたり、過換気を起こした人に出くわした時は、参考にしてみてください。

(参考文献)
レジデントノート「マイナーエマージェンシー」
標準精神科学/医学書院
Yearnote

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医師。専門は消化器外科。二児の父。
ブログ開設4ヶ月後に月間67万PV達成
時事通信社医療情報サイト「時事メディカル」
「教えて!けいゆう先生」のコーナーで定期連載中。
エムスリーでも連載中&「LIFESTYLE」企画・監修。
プロフィール詳細はこちら

過換気(過呼吸)症候群の原因と対処法、紙袋での応急処置が危険な理由」への4件のフィードバック

  1. きんもくせい

    けいゆう先生
    毎日ブログをチェックするのが習慣になっている私です:-)

    かなり昔に、紙袋を使って過呼吸がおさまった、という実話を読みました。

    若い女性が過呼吸をおこしたところに偶然医師が通りかかり、近くにあった紙袋で口元をおさえてゆっくり呼吸するよう指示し、症状がおさまりました。
    医師は開業医で、普段は急を要する患者にあまり接することがなかったので、不謹慎だが少し嬉しかった、というような話でした。

    それを読んでから今まで、紙袋を使うのが正しいと思いこんでいました。
    身近に過呼吸をおこした人がいなくて良かったです。
    「過呼吸」も、正しくは「過換気」なんですね。
    けいゆう先生のブログは、本当に勉強になります。
    ありがとうございます!

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      きんもくせいさん
      ありがとうございます!
      ペーバーバッグ法は、そのあと何か起こった時に適切に対処できる医師であれば、やっても良いと思います。
      しかし一般的には推奨されていません。私は、ペーパーバッグ法を使わなくても治ることをよく知っているので使いませんね。
      昔は正しいとされていたので、年配の先生なら使うと思います。

      返信
  2. 紗琉

    以前にもコメントさせていただいた神経系を専門とする(つもりの)心理士です。
    重箱の隅をつつくようで申し訳ないのですが、神経症の治療において第一選択は薬物治療ではないです。もちろん、多くの精神科などで抗不安薬をはじめとする向精神薬を処方しているのが現状ですが、あくまでもそれらは補助的に用いるもので、第一選択は認知行動療法などの心理療法かと思います。
    もっとも、そんなことしてたら1日に20人程度しか診察できなくなってしまうので破綻してしまうのですが。。

    ところで、薬物依存などはなぜ危ないのかについて身体的な面からとりあげてみていただけませんか?私たち心理士は身体面の事にあまり詳しくないので興味があります。

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      紗琉さん
      もしかして以前にコメントをくださったモリモツガリツさんですか?
      おっしゃる通りですね、文言を削除しておきます。
      薬物依存については、ドラマで扱われることが多いため、医療ドラマ解説でよく解説してきましたが、確かにどこかでまとめてみてもいいですね。

      返信

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