性行為・自慰行為中の危険なトラブル、何に気をつけるべきか?

前回、「お尻の穴(肛門)には絶対に大きなものを入れてはいけない理由」で、度を超えた性行為、自慰行為による肛門・直腸外傷について述べました。

今回は、陰茎(ペニス)のトラブル(外傷)について書きます。

陰茎のトラブルもまた、やはり度を超えた性行為や自慰行為が原因になることが多く、男性特有の外傷です。

その中でも、まれとは言えない、尿道膀胱異物と陰茎折症について書き、注意を喚起したいと思います。

 

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尿道膀胱異物

尿道とは、膀胱から体外へ続く尿の通り道です。

ご存知の通り、男性の場合は陰茎の中にその管が備わっています。

尿道膀胱異物とは、陰茎の先端から尿道に物を入れてしまい、取れなくなったり、膀胱内に入ってしまったりすることです。

これまで報告されている異物は、体温計、鉛筆、ボールペン、縫い針、マッチ棒、ヘアピンなど様々です。

目的の多くは自慰行為です。

私は「そんな痛いことよくできるな」と思うのですが、むしろ近年では性意識の多様化を背景に、尿道から異物を入れる行為は増加傾向にあります。

思春期から30代に最も多く見られますが、性活動の盛んな高齢の方が増えているため、60歳代に多いという報告もあります。

治療としては、まず内視鏡で異物の様子を観察します。

形状によっては尿道から鉗子(挟む道具)を使って摘出できることもありますが、膀胱内に落ち込んでしまうと、多くは手術が必要になります。

また、縫い針のように鋭利なものは、尿道を傷つけたり、膀胱内で膀胱の壁に刺さって穴が開いたりするなど、重大な腹腔内(お腹の中)のトラブルに発展することもあります。

異物の除去には、半数が手術が必要との報告もあります

 

尿道の粘膜は非常に柔らかくてぜい弱です。

異物により表面が傷つくと、のちに狭窄(狭くなる)の原因になるなど、思わぬ後遺症を残します

尿道への異物挿入による全ての自慰行為をやめるよう、強くすすめます

また、こうしたトラブルが実際起こった場合に、羞恥心から、症状があっても長期間受診しなかったり、受診時も状況を正確に説明されない方が多くいます。

挿入から長時間が経過すると、鋭利なものでなくても尿道や膀胱に穴があいたり、重度の細菌感染を起こすなど、非常に危険です。

正確な状況把握のためにも、すぐに泌尿器科を受診の上、起こってしまった以上は正確に説明してください。

 

陰茎折症

勃起した状態の陰茎に、強い外力が加わった際に陰茎が折れてしまう外傷です。

通称「陰茎骨折」とも呼ばれますが、陰茎には骨がありませんので、医学的に正確な表現ではありません。

勃起は、陰茎内の海綿体白膜に血液が充満することで起こります。

陰茎折症は、この固くなった海綿体白膜が断裂することです。

陰茎折症の原因としては、激しい性行為や自慰行為、勃起時の陰茎の打撲や無理やりパンツに押し込む操作、早朝勃起時の寝返りなどが報告されています。

「ポキッ」という音とともに激しい痛みが起こり、陰茎に内出血が起こり、陰茎が曲がって変形します。

まさに骨折のイメージです。

 

交際上のトラブルから女性にへし折られたという事例もありますが、多くは強引な性行為や自慰行為が原因と思われますので、予防は可能です。

性行為中に膣から陰茎が抜けてしまい(あるいは故意に抜き)、勢いで女性の恥骨(股間の骨)に衝突するといった事例もあり、大部分は注意すれば防ぐことができます

寝返りだけで陰茎が折れる、などと聞くと男性としては恐ろしくなってしまいますね。

しかし実際には、患者さんは羞恥心から外傷の状況を正確に説明しませんので、報告されている原因の中には、事実でないものも多いと考えられます

例えば、陰茎をパンツに押し込んだり、寝返りなどの動作だけで、陰茎折症が起こるほど強い外力が生じるとは考えにくいからです。

 

治療としては、緊急手術による修復が推奨されています。

手術なしで自然に治ることもありますが、勃起時の疼痛屈曲勃起不全などの後遺症が残るため、推奨されません。

 

身体の中でも陰茎ほどダイナミックに形や大きさを変化できる臓器は他にありません。

そしてこの変化は、人間を含む全ての生物にとってきわめて重要な生殖(子孫を残す)という活動になくてはならない機能です。

通常時は2mmまである白膜の厚さは、勃起時には0.5〜0.25mmにまで薄くなっています。

勃起時は、非常に外力に弱い、無理な状態を維持しているのです。

十分に注意してほしいと思います。

 

余談ですが、イランには、救急外来に1週間に平均1回、陰茎折症の患者さんが来院する地域があります。

なぜこれほど頻度が高いのか。

この地域では、勃起した陰茎を萎縮させるために、叩いたり折り曲げたりする習慣があるからです(「taghaandan」と呼ばれているそうです)。

 

尿道膀胱異物、陰茎折症、いずれにしても、多くは度を超えた自慰行為や性行為に夢中になるあまり、自分の体を傷つけてしまうことで起こります。

いずれも、性機能排尿機能の低下などの後遺症が起これば、生活の質を大きく低下させます

「自分は危ないかも」と思う方がいれば、十分に注意してほしいと思います。

(参考文献)
「陰茎折症の4例」泌尿紀要 59: 251-255, 2013
「思春期男子膀胱尿道異物の1例」泌尿紀要 58: 519-521, 2012
「尿道・膀胱異物の2例」Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal. 13: 81-85, 2008
「30年の経過で4度の異物挿入を認めた膀胱尿道異物の1例」泌尿紀要 62 : 141-143, 2016

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