病棟看護師の看護記録によく見る不思議な間違い表現

看護記録に間違った医学用語が使われているのをよく目にする。

むろん医師の記録にも同じくらい間違いが多く、医学用語以前にそもそも日本語が下手な医師も多い。

私も看護師さんから間違った表現を指摘されることがあるので、あまり偉そうなことは言えないのだが、今回は看護記録によく見る誤りを書いてみたいと思う。

 

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ぜい鳴(ぜいめい?)

おそらく、ヒューヒューという「喘鳴(ぜんめい)」のことを読み違えているものと思われる。

「ぜいめい」だと思って入力しても変換されず、やむを得ず「ぜい」と打ったあとに「鳴く」と打って「く」を消しているのだろうか。

「喘」は喘息(ぜんそく)の「喘」で、「ぜん」としか読めない

訓読みは「喘ぐ(あえぐ)」である。

もし間違って覚えていたら修正しておこう。

時々、医師の中にも「ぜいめい」と言っている人がおり、ゾッとすることがある

 

嗚咽(おえつ)

「嗚咽」とは「声を詰まらせて泣くこと」「むせび泣くこと」である。

医学用語ではないし、カルテに「嗚咽」という文学的な表現が出てくること自体が少し奇妙である。

どうやら、嘔吐する際の「オエッ」という仕草を誤ってこう表現していることが多いようである。

確かに「オエッ」となる状態は「えずく」としか表現しようがなく、ベストな医学表現がないように思う。

名案があったら誰か教えてください。

 

PEG(ペグ)

かなり多くの看護師が誤って覚えている言葉である。

PEGとは、「Percutaneous Endoscopic Gastrostomy=経皮的内視鏡的胃ろう造設術」である。

そもそも胃ろうは、かつては外科医が開腹手術で造設するのが普通だった。

しかし近年、内視鏡(胃カメラ)の技術が発達し、全身麻酔下の手術を行わなくても消化器内科医が胃ろうを造設できるようになった

この手法を、過去の開腹下の胃ろう造設術と対比させて、「PEG」、すなわち「内視鏡的な」胃ろう造設術と呼んでいる。

ところが、近年ではほとんど内視鏡的に胃ろうが造設されているせいで、胃ろう自体を「ペグ」と誤って呼んでいる人が多い

ときどき「手術でPEG造設予定」という恐ろしい記述を見ることすらある。

PEGは、手術ではなく「内視鏡を使った胃ろう造設」だとわざわざ表現している言葉なので、「手術でPEG」などと言われると、もうこちらはパニック状態である。

また「PEG造設」というのも変で、PEGは「胃ろう造設術」という手法名なので、これでは「造設術」を「造設」することになってしまう。

正しくは「手術で胃ろう造設予定」である。

同じように「上腹部にPEGあり」「PEGより経腸栄養剤注入」もよく見るが、間違いである。

繰り返すが、PEG=胃ろう造設術である。

「胃ろう」自体は、どういう作り方をしたとしても「胃ろう」としか表現しようがない。

 

不思議な音の表現

看護記録にはよく見るが医師は決して使わない不思議な音の表現が多くある。

たとえば「グル音」「グー音」「ヒュー音」などである。

「グル音」はおそらく「腸蠕動音」であろう。

正しい医学用語ではない。

「グー音」「ヒュー音」は呼吸音の表現でよく見る。

呼吸音にはそもそも多彩な医学用語があるので、わざわざこのような正しくない表現を使わないほうが良いだろう。

正しくは、断続性ラ音連続性ラ音に分け、それぞれに、水泡音捻髪音笛様音(wheeze)いびき様音(rhonchus)がある。

おそらく「グー音」はrhoncus、「ヒュー音」はwheezeだろうと思う。

 

ただ、看護師同士の会話で音を表現する際には、rhoncusやwheezeという用語を使う方がかえってわかりにくいという場合もあるだろう。

私も、すでにその部署内で共通の認識があって便利に使われている「通称」に対してまで正確さを過度に要求する人は嫌いである。

たとえば、緊急透析時などに用いる中心静脈カテーテルは、病院によっては「ブラッドアクセス」という商品名で呼ばれたり、「バスキャス」という「あだ名」で呼ばれることもある。

正確には「バスキュラーアクセスカテーテル」であり、そもそも上記のような和製英語、というか英語ですらない言葉は日本以外では通用しない。

だが医療者同士の日常会話にまで「バスキュラーアクセスカテーテル」という正式名称の使用を強要するのは無茶な話だ。

よって私がこの記事を書いた意図は、

正しい用語が何かを知っておくこと」

公式な文書であるカルテの記録ではなるべく正しい医学用語で書くこと」

を重視してほしい、ということである。

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