色々なお腹(腹部)の手術の傷を臓器別に全て一覧で解説します

私が外来で患者さんに手術の説明をするとき必ず最初にきかれるのは

「手術の傷はどんな感じですか?何センチくらい切りますか?」

ということです。

私たち外科医は、むしろお腹の中をどんな風に手術するかということを真っ先に説明したいと思いがちなのですが、患者さんにとっては、傷跡は目で見てすぐにわかる目立つ部分ですから一番気になるのですね。

また大きな傷だと術後に痛むかもしれないという不安もあるでしょう。

 

実は同じ病気に対して同じ手術をするにしても、傷の場所や大きさは様々で、一概に説明するのは簡単ではありません。

なぜでしょうか?

理由は3つあります。

 

一つ目は患者さんの体格です。

太っている方と痩せている方では同じ手術をするにも傷の大きさを変える必要があります。

太っている人の方が大きな傷でなければ手術がやりにくいという傾向があります。

また、たとえば「みぞおちからおへそまで切ります」と言っても、みぞおちからおへそまでの距離はずいぶん個人差があり、「何センチ」と一概には言えません。

 

二つ目は病状です。たとえば癌であればその進行度が人によって様々です。

非常に進行した大きな癌を切除するには大きな傷が必要です。

また、胆のう炎憩室炎虫垂炎(いわゆる「盲腸」)などの炎症性の病気では、軽症か重症かという病気の重症度によっても傷の大きさは全く異なります。

 

三つ目は病院の方針です。

同じ手術でも病院によって異なる傷で行うことは多くあります。

傷の大きさは手術の質を決めるのにそれほど大きな因子ではありません。

その施設、担当する外科医の慣れたやり方でやってもらうのが最も安全だと言えるでしょう。

 

しかし、「傷の大きさや場所はケースバイケースですから一概には言えません」で終わってしまったらこのサイトの意味がありません。

実際、手術する臓器別におおよそ傷の形は決まっていますから、大まかなイメージを持っておきたいという人のためにここでまとめておきます。

私は消化器が専門ですので、今回紹介できるのは消化器外科で扱うお腹の手術、すなわち、胃、大腸、小腸、肝臓、膵臓、胆のう、脾臓、虫垂の手術です(この中で脾臓は唯一「消化器系」の臓器ではありませんが、消化器外科が扱います)。

 

 

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胃の手術

胃を切除する手術の場合です。

ほとんどは胃がんです。

腹腔鏡で行う場合と開腹で行う場合では傷の大きさや場所が異なります。

この使い分けについて詳しく知りたい場合はこちら

手術が必要な胃がん、その方法は?腹腔鏡手術と開腹手術の違い

腹腔鏡の傷は施設によって様々で、この図の傷に加えてみぞおちなどに数センチの傷をつける場合もあります。

 

大腸の手術

大腸を切除する手術の場合です。

大腸がん憩室炎下部消化管穿孔(大腸に穴があく病気)などが対象です。

胃と同じく、腹腔鏡で行う場合と開腹で行う場合では傷の大きさや場所が異なります。

この使い分けについて詳しく知りたい場合はこちら

大腸がんの手術とは?開腹手術と腹腔鏡手術の違いと注意点

腹腔鏡の傷は施設によって様々で、この図の傷に加えて下腹部の真ん中に小さな傷をもう一箇所つける場合などがあります。

 

小腸の手術

小腸を切除する手術の場合です。

腸閉塞(絞扼性イレウスなど)、小腸腫瘍など様々な病気が対象です。

小腸はお腹全体に広がる非常に長い臓器です。

小腸のどの部分に病気があるかによって傷は異なりますが、開腹手術で行うならへその上下を開けることが最も多いです。

ただ、場合によっては腹腔鏡で行える場合もあり、その際は病変の位置により傷は全く異なります。

へそを含めて5mm〜1cmの傷が3箇所程度、というのが最もよく見られるパターンかと思います。

 

肝臓

肝細胞がん転移性肝がん肝内胆管がんなど多くは肝臓の腫瘍が対象です。

肝臓の手術の場合はおおむね右のあばらの下を切ることが多いですが、体格によっては胃のときのように縦にまっすぐの場合もあります。

また、肝臓の手術も一部は腹腔鏡で行う施設が増えています。

まだ全国的に見て一般的とは言えませんが、病気の場所や大きさによっては腹腔鏡手術を提案される場合もあるかもしれません。

腹腔鏡手術の場合は、病変の位置によって傷の場所は大きく異なります。

へそを含めて、5mm〜1cmの傷が4〜5箇所、というのがよく見られるパターンです。

 

膵臓

膵がん膵のう胞性疾患などで膵臓を切除する場合です。

膵臓の手術の場合は縦にまっすぐの傷が多いと思いますが、体格によっては横の傷が加わることもあります。

膵臓は様々な臓器や血管が行き交うお腹の真ん中の要所にある臓器で、大きな手術になることが多いです。

そのため傷も大きくなります。

膵臓の手術でも、まだ一般的ではありませんが一部に腹腔鏡が導入されているところもあります。

胃の腹腔鏡手術のような傷になることが多いですが、まだまだ普及していませんので詳細は割愛します。

 

胆のう

普通の胆石症の手術であればほとんどは腹腔鏡で行いますが、炎症の強い胆のう炎胆嚢がんなどの病気は開腹手術で行うことが多いです。

腹腔鏡手術の場合は施設によって傷はさまざまです。

3ヶ所だけで行うところもあれば、へそ1ヶ所だけで行う単孔式手術を行う病院もあります。

胆石症や胆のう炎について詳しいことを知りたい方はこちら

放っておくと強い胆石!原因、検査と治療、手術をすすめる理由

 

脾臓の手術

脾臓の手術はここに挙げた手術の中で最も頻度が低い手術です。

交通事故などによる外傷が原因で起こる脾臓の損傷(外傷性脾損傷)や、まれな脾臓の悪性腫瘍、他の病気が原因で脾臓が大きく腫れ上がる脾腫と呼ばれる病気などで、脾臓を摘出することがあります。

こちらも緊急手術でない場合は、腹腔鏡で行うこともまれにあります。

 

虫垂の手術

いわゆる「盲腸」は正確には「虫垂炎」といいます。

以前開腹手術が主流だった頃は、腰椎麻酔でお腹の右下に傷をつけて手術を行っていました。

近年は全身麻酔での腹腔鏡手術が主流になっています。

腹腔鏡手術の場合は傷の位置は病院によってさまざまです。

上の図は一例で、へそ以外の2箇所が左下腹部につく場合もあります。

おおむね5mmから1cmの傷がへそを含めて3ヶ所、というのが普通ですが、へそだけで行う単孔式手術を行っている病院もあります。

 

以上が臓器別のおおまかな傷です。

冒頭で説明したいように、これらはあくまで目安です。

同じ病気でも傷が全然異なることもありますから、担当医師の説明をよく聞いておくようにしましょう。

 

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