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コードブルー2 最終回 解説前編|黒田&藤川コンビ再び!FFバイパスの妙技

飛行機墜落現場での懸命の救出作業が続く。

藍沢(山下智久)、白石(新垣結衣)、緋山(戸田恵梨香)、藤川(浅利陽介)の4人のフェローは、それぞれ最重症の患者を任されることになる。

現場で出会う患者たちの姿は、これまでに彼らの身に降りかかったことと見事に重なる仕組みになっている。

藍沢や白石にとっては、家族との間の誤解によって生まれた軋轢

緋山にとっては、患者との摩擦で失った自信

そしてフェローの中で技術的に一人遅れをとっていた藤川は、かつて災害現場で出会った似た境遇の救命士に再び出会う。

彼らは災害現場でそれぞれの患者を救いながら、自らの内にある弱さを克服し、フェローを卒業していく。

 

最終回の解説ではまず前編として、

外科医と内科医である白石と、父、博文の絶妙のタッグ

ファンなら気づくスペシャル版を意識した黒田&藤川コンビのカットダウン

という「分かると面白い」重要なシーンを解説する。

そして第2回は緋山と藍沢にスポットを当てる。

2本立てで徹底解説していこう。

 

内科医の父、面目躍如

白石はフライトドクターとして現場に出動していながら、救命活動にどうしても集中できなかった。

墜落した飛行機に、自分の父、博文が乗っていたからだ。

ストレッチャーで搬送される重症患者が通り過ぎるたび、自分の父親ではないかと気が気でない。

ところが博文は無事であるどころか、現場で足を引きずりながら患者の救命活動に参加していた

傷を負ってもなお医師であろうとする父は、白石が制しても、

「一人でも医者は多い方が良い」

と言って譲らない。

そんな二人のもとへ、ある重傷患者が飛行機内に残されているとの連絡が入る。

患者は博文に近い年齢の男性。

骨盤骨折でショックを起こしていた。

男性の娘が横で心配する中、白石の手早いガーゼパッキングで一旦は状態が安定するが、体育館内に搬送後に急変。

再びショック状態に陥ってしまう。

 

ショックの原因は何なのか?

原因がわからず手が止まる白石。

だが博文は聴診器を胸に当て、かすかな心膜の摩擦音から心破裂を疑う

開胸した白石は、父の見立て通り心破裂による心タンポナーデを確認。

男性は娘の目の前で心停止寸前に。

白石がガーゼパッキングで懸命に止血し、それを前から手伝う博文。

白石は意識がないその男性に、懸命に励ましの声をかける。

「娘さんはあなたに伝えたいことがまだいっぱいある

嬉しい知らせや謝りたいこと

食事だってちゃんとしてない

だから頑張って生きて」

博文は思わず白石の顔を見たのだった。

 

患者への励ましが自分へのメッセージだと気づくと同時に、外科的技術ではもはや娘が自分を遥かに上回っていることを知り、嬉しくも寂しい表情の博文。

2nd SEASONを通して最も名シーンと言っても良い場面である。

だが同時にこのシーンは、内科的技術ではまだまだ博文がベテラン、ということも示している

白石が、

「全然聞き取れなかった」

という心膜摩擦音を聞き取り、聴診器一本で心破裂を見抜いたのは博文だった。

 

心臓は、心のうと呼ばれる袋に入っており、その中で拍動を繰り返している。

この袋は、心膜と呼ばれる膜でできている。

心臓に小さな穴が開いてあふれた血液がコブ状に膨れあがって固まると、これが拍動のたびに心膜と擦れる音がする。

これを「心膜摩擦音」と呼ぶ。

一般には、心膜炎など心膜側の問題(心膜が分厚くなる)で生じることが多い。

今回は心停止寸前にまで至っている患者の状態を見て博文は、心破裂が原因だと見事に見抜いたのだ。

 

男性は骨盤骨折を起こし、これがもともとショックの原因だった。

したがって再びショックになった時、まず白石が疑ったのは骨盤内の再出血

看護師に再開腹の準備を指示していた。

しかし、もし再開腹して「骨盤内にショックの原因はない」ということが分かった時には、もはや救命は間に合わない

救えたのは、循環器内科医である博文のおかげである。

 

このように交通事故のような鈍的外傷では、全く異なる部位に同時に損傷が起きていることが多い

患者の状態が急変した時は、これまでの経過から推測される病態に固執せず、改めてゼロから診察し直すことが大切だ

白石は父に普段言えなかった思いを伝えられただけでなく、ベテラン内科医からの貴重な教えを得ることができたのである。

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連結チューブでFFバイパス

一方藤川も同じく骨盤骨折の患者を任される。

患者を見た藤川は、

「なんだこの足!」

と驚いた声を上げる。

右足が真っ白になり、血流が途絶えていたのだ。

膝窩動脈(膝の裏の動脈)や、足背の動脈(足の甲の動脈)の拍動はない。

骨盤骨折にともなって、右足に向かう血管が損傷し、血流が完全に途絶えている様子だった。

このままでは右足は壊死し、切断しなければならなくなる

処置に悩む藤川の元へ、翔北から電話が入る。

「黒田だ」

部長の田所(児玉清)のオペが終わり、手が空いた黒田(柳葉敏郎)がヘルプに入っていたのである。

黒田は左右の足の動脈をつなぐ「FFバイパス」を指示。

同時に、

「再灌流の瞬間が一番危険だ」

と藤川に注意を促す。

藤川は点滴用の連結チューブを使ってバイパスを成功させるが、黒田の予言通り、直後に心停止(VT)

身構えていた藤川はすぐに心肺蘇生を行い、無事患者は救われたのだった。

 

骨盤骨折を起こすような外傷では、足へ向かう血管が骨盤内で詰まってしまうことがある。

詰まった血管を元に戻すためには、その場での開腹手術が必要になる。

血管を露出し、閉塞(詰まり)を解除しなくてはならない。

手間もリスクも多い作業である。

そこで黒田が提案したのが、FFバイパス(エフエフバイパス)だった。

 

「FFバイパス」とは、左右の大腿動脈をつなぐこと。

大腿動脈の英語、”Femoral artery”の頭文字をとって、「FからFへバイパスする」という意味だ。

大腿動脈とは、足の付け根にある最も太い動脈。

足からの大出血時にクランプ(遮断)する、コードブルーではよく登場するおなじみの動脈である。

今回は、左の大腿動脈と右の大腿動脈を点滴用のチューブでつなぐことでバイパスを行なった

右足の血流が途絶えているため、左足から血液をもらうことが目的である。

 

だが長時間血流が途絶えた状態が続くと、筋肉が壊死してミオグロビンカリウムなど様々な毒素が産生されてしまう。

血流が途絶えたままなら支障ないが、再灌流、つまり再び血液が流れると、これらの毒素が足から全身をめぐることになる

毒素が心臓に辿りつけば、心停止を起こすリスクがある

黒田が藤川に注意したのはこのことである。

起こっていることは、足を長時間圧迫されたあとに解除して起こるクラッシュシンドロームと同じだ。

ちなみにこのシーンが面白いのは、コードブルースペシャルと状況がかなり似ていること。

スペシャル版でも突然黒田は現場に登場する。

その時は出血に対する大腿動脈の遮断が目的だったが、そのとき黒田は直接現場で藤川にかなり丁寧に指導していた。

しかし今回は電話越しに最低限の指示だけである。

前回も今回も藤川が行なったのは「カットダウン」、すなわちメスで皮膚を切り、大腿動脈を露出する処置だ。

スペシャル版では、メスを使ってカットダウンする流れを黒田が細かく指導するセリフがあるが、今回は藤川が自主的にこれを行うため、処置自体が非常にスムーズ。

全く同じ処置を行う藤川の成長を同じコンビで描いた、ファンならわかる名シーンと言えるだろう。

というわけで今回は、最終回解説前編として白石と藤川にスポットを当てて解説した。

次回はいよいよ後編。

2nd SEASON全話解説の最終記事となる。

ぜひ次回をお楽しみに!