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病院で教えるダイエットの方法、自宅でできる医学的に正しい肥満の解消法

ダイエットをしようとして失敗した、という方は多いのではないでしょうか?

中には、効果があると信じて高額の商品に散財してしまった経験のある方も、少なくないかもしれません。

「ダイエットをしたい」「肥満を解消したい」と考える人は非常に多く、市場は大きいため、こうした人たちを相手にビジネスを展開したい企業は多いのです。

 

しかし、人間の三大欲求の一つである「食欲」を抑制するのは、誰しも至難の技です

運動もまた、誰しも辛くて当然です。

こうした状況で、

「食事を減らさず痩せる」

「運動せずに痩せる」

という言葉は耳に甘く響きます。

 

その上、

「〇〇までに痩せたい」

というように、差し迫ったイベントを前に緊急性のある悩みを抱えた人も多いでしょう。

冷静な時なら自分に合った商品やサービスを適切に選べても、余裕のない時には思わず財布の紐がゆるくなってしまうものです

 

もちろん、高額であっても効果があるならいいでしょう。

しかし、コストに見合う結果が得られず、後悔することだけは避けたいはずです。

 

そこで今回は、「医学的に根拠のあるダイエット」を紹介したいと思います。

簡便な方法に飛びつく前に、まずは医学の原則を知ることが大切です。

 

どんな食事に気をつければいいのか?

何キロの減量を目標にすればいいのか?

ダイエット中はどんなことに気をつければいいのか?

これらの疑問に対する科学的根拠のある答えは、日本肥満学会が発行する「肥満症診療ガイドライン」に全て掲載されています。

今回はこれに基づき、病院で行う肥満の治療について解説します。

いずれも自力でできるものですので、参考にしてみてください。

 

治療法は大きく、行動療法食事療法運動療法の3つに分けられます。

順に説明します。

 

行動療法

食行動の異常を認識する

肥満のある方は、「食行動の異常」のある人が多いのが特徴とされています。

食行動の異常とは、以下のようなものです。

間食が多い

イライラするとつい食べてしまう

夜間にたくさん食べてしまう

偏食(好き嫌いが多い)

早食い

朝食を摂らない

目の前に食べ物があればつい手が出てしまう

買い物に行って必要以上の食べ物を買ってしまう

まずこういう行動が「異常」であることを認識する必要があります

 

また肥満の方は、食行動に対する考え方にも問題があるとされています

以下のような誤解をしているということです。

お腹がいっぱいでも、好きなものなら別のところに入る

たくさん食べているのに、自分の食べた量はそれほどでもないと思っている

水を飲んでも太る、空気を吸っても太る

この考え方が肥満の原因になっていると、きっちり認知することが大切です。

「食べれば増え、食べなければ減る」

という当たり前の事実をまず認識するのです。

(※何らかの疾患が原因で肥満症を引き起こしている場合は例外です)

 

では、どうすればこの「異常」を改善できるのでしょうか?

実は、その答えはそれほど難しくありません。

 

自己記録をとる

まず、体重や食事内容をノートに記録します

毎日体重を測り、何を食べたか、どのくらいのカロリーを摂取したかをきっちり書き記すのです。

こうして問題点を自分で認識しやすくすることが、前向きなダイエットにつながります。

何も計画せず、やみくもに食べる量を減らすと、必ず途中でギブアップしてリバウンドしてしまいます

記録による自己管理が大切です。

 

体重測定は正しい方法で

体重は、

起床直後

朝食直後

夕食直後

就寝直前

1日4回測定して記録します

できればグラフにするのがよいでしょう。

基準になるのは起床直後の体重ですが、夕食直後と就寝直前の体重の測定も大事です。

この二つの値を比較すれば、夜間の間食について検討できるからです。

これが毎日のように増えているなら、

「間食しすぎている」

と認識できます。

体重は必ず毎日ノートに記載します

1週間まとめて記載する、というような方法をとってはいけません。

毎日、起床直後の体重を前日のものと比較し、体重がなぜ増えたか、あるいは減ったか、理由を考えます。

 

記録を見て対策を

次に、何が原因で食行動に異常が起きているかを考え、対策します。

たとえば、

身の回りに常にお菓子がある

雑誌で食べ物の記事を読む

食事関連のテレビ番組を見る

といった、食べ過ぎを誘発する刺激は全て回避します

(お菓子は買い置きしない、食べ物の雑誌は買わない、食事関連のテレビ番組は見ない、と決める)

重要なのは、こうした「食べ過ぎの原因になりうる刺激」を認識することです。

「何が刺激になって自分は食べ過ぎているのか?」が分からないままダイエットをすると、仮に痩せられたとしても、必ず数ヶ月たてばリバウンドします。

 

30回咀嚼法を行う

食事のときは、

一度口に入れたものは30回咀嚼(そしゃく)してから飲み込む

を徹底します。

これができれば◯、29回の咀嚼や、31回の咀嚼でもダメです。

こうした単純作業をコツコツ行うことが大切です。

これによって早食いが是正され、満腹感が得られやくなります。

「30回」というのは一つの目安で、40回や50回に設定しても構いません(少なすぎては意味がないので最低30回です)。

ちなみに、食べるのが遅い人は速い人よりメタボリックシンドロームの割合が少ない、という事実が医学的に証明されています。

 

食事療法

食事療法は肥満に対する治療の基本です。

摂取エネルギーを制限することは、減量に最も有効だからです。

では、どのくらいカロリーを制限すればよいのでしょうか?

 

まず、目標となる摂取カロリーは、1日あたり、

25kcal×標準体重

です。

標準体重とは、

22×身長(m)×身長(m)

です。

22に、身長をメートルにして2回かけ算します。

計算が面倒な人は、ネット上に自動計算できるサイトがたくさんありますので参考にしてみてください。

例えば、身長160センチの人は、

22×1.6×1.6=約56.3キロ

が標準体重です。

 

次に、これに25をかけ算します。

25×56.3=約1400kcal

となります。

これが1日の目標カロリーです。

 

コンビニやスーパーでお弁当やおやつを買う時に必ずカロリーをチェックし、1日で合計してこの数字を超えないようにします

最近は、メニューにカロリーを記載している飲食店が多いでしょう。

外食時はカロリーをきっちりチェックし、目標カロリーを超えないようにします。

自宅で食事を作る時は、「カロレピ」「味の素パーク」などのサイトを見て、カロリーが分かるレシピを利用するのがよいでしょう。

 

各栄養素のバランスは、

糖質:50-60%

タンパク質:15-20%

脂質:20-25%

が理想的ですが、ここまで自力で調節するのは難しいため、あくまで目安です。

また近年、糖質制限がダイエットに有効だという報告もありますが、制限してもいいのは糖質40%までです。

当然ですが、糖質ゼロがダイエットに良いことを示す医学的に確実なデータはありません

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運動療法

食事療法と運動療法を併用し、3〜6ヶ月の間で3〜5%の減量を維持することが目標です。

最初から高い目標をかかげても成功しません。

体重70キロの人なら、まず2キロ〜3.5キロ減った状態を維持することをひとつの目標にします。

運動すれば、仮に体重がうまく減らなくても、肥満に合併しやすい脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い)や血圧、血糖値が改善するとされています。

 

仕事や通勤、家事などの日常の活動でもエネルギー消費を増やすことができます。

エレベーターやエスカレーターではなく、なるべく階段を使う

出かける時は車より自転車や早歩きで

といった日頃の心がけが大切です。

 

一方、よく「筋力トレーニングをすれば痩せる」と誤解している人がいます。

例えば、

お腹周りの脂肪を減らしたいので腹筋をする

といった誤解です。

筋力トレーニングは「レジスタンス運動」とも呼ばれ、いわゆる「無酸素運動」です。

筋肉は鍛えられますが、脂肪は減りません

ダイエット中の筋力トレーニングは、減量中に筋肉も一緒に減ってしまうのを防ぐのが目的です。

つまり、まずは「脂肪を減らせる運動」ができているのが前提です

 

ちなみに、運動療法における注意点として、

重度の糖尿病や高血圧、脂質異常症の方が運動中に心筋梗塞や狭心症などになるリスク

関節を傷めるリスク

運動中の脱水症のリスク

が挙げられます。

突然の激しい運動は避けましょう。

ランニングではなくウォーキングから、水泳なら水中ウォーキングや水中エクササイズから開始しましょう

また、運動中は必ずスポーツドリンクなどを持参し、水分をこまめに摂取しましょう。

ダイエットのためにスポーツを始めたい方は、以下の記事をご覧下さい。

 

ダイエットの考え方まとめ

肥満とは、

摂取エネルギー>消費エネルギー

となる状態が続くために起こります。

よって肥満を解消するためには、

摂取エネルギーを減らすこと

と、

消費エネルギーを増やすこと

を実現しなければなりません。

何らかの病的な要因がある場合を除き、これら以外に痩せる方法は物理的にありえません

 

よって、ここに書いたように、

食事療法によって摂取エネルギーを減らす

運動療法によって消費エネルギーを増やす

これらを維持するために適切な行動をとる

という3段階でダイエットを行うのがよいでしょう。

(参考文献)
日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン 2016」