こちらの記事を未読の方は必ずお読みください。
どの科の医師も感染症から免れることはできません。
感染症の専門家でなくても、臨床医として最低限の抗菌薬の使い方を身につけておく必要があります。
しかし、多忙な日常診療の合間に自分の専門分野以外のことを学ぶ時間は取りづらいもの。
そこで今回は、短時間で効率よく、かつ楽しく抗菌薬の知識を身につけられる本を紹介しようと思います。
いずれも、私が読んだ本の中の選りすぐりです。
全部で7冊、そのうち3冊は研修医向けのおすすめの本として別途まとめた記事と重複しています。
研修医の先生にはまずそちらを参照していただいた方が良いかと思います。

なお、研修医時代は特に本をまとめ買いすることが多いため、かなりのお金がかかってしまいます。
以下の記事では医学書を安く買う方法(最大12%オフ)を紹介しており、とくにまとめ買いの時は威力を発揮します。
ぜひ読んでいただければと思います。

まず必読の3冊
詳しさ:★★★
本の薄さ:★☆☆
読みやすさ:★★★
第4版まで出ている、抗菌薬の参考書の中では最も有名な本の一つです。
「この本がなかった時代」と「この本があった時代」の二つに分けても良いと思うくらい、感染症診療を楽しく効率的に学べる名著です。
イラストをあまり多用せず、どちらかというと読み物に近い印象です。
とにかく文体がわかりやすくスラスラと読めますし、これを一冊読めば抗菌薬の知識は十分、と言っても過言ではないと思います。
若手医師向けということになっていますが、抗菌薬を使わない科はほとんどありませんし、全医師がこれだけの知識をきっちり身につけておいた方が良いと思います。
詳しさ:★★☆
本の薄さ:★★★
読みやすさ:★★★
「抗菌薬の考え方、使い方」と比べると、半分くらいの薄さで、イラストも比較的多い本です。
ポイントを絞ってあるため、エッセンスのみを吸収するという点では最良の本でしょう。
言葉も平易でわかりやすく、しかも薄いためストレスなく通読できます。
また、この本の便利なところは、末尾にサンフォード日本語版の中の、日本の病院でよく使われる抗菌薬のみを抜粋した表があること。
サンフォードは抗菌薬選択に重要なツールですが、勤務先の病院で採用されていない薬まで掲載されているため、少し無駄が多いこともあります(感染症科など専門科の先生は当然例外ですが)。
よって私は、この本の末尾の表をコピーしてメモ帳に貼り付けていつも持ち歩いています。
もうボロボロになるほど病棟で何度も参照しています。
その意味でも買って損はない本です。
詳しさ:★★★
本の薄さ:★★☆
読みやすさ:★★☆
どの科の医師でも、担当患者の感染症を経験することは必ずあります。
尿路感染やカテーテル感染、院内肺炎などと無縁でいられる科はほとんどありません。
当然、外来患者と入院患者では異なるアプローチが必要であり、この本は入院患者の感染症診療に必要な知識が網羅されています。
病棟勤務のある医師が必ず読んでおくべき本だと思います。
次に読むべき3冊
詳しさ:★★★
本の薄さ:★☆☆
読みやすさ:★★★
感染症が好きな人ならきっと楽しめる本です。
小説のように楽しく読みながら感染症の勉強ができます。
感染症が好きでもう少し勉強したい、という方にはオススメです。
しかし、感染症の知識をエッセンスだけ手っ取り早く身につけたい、という人にとっては、前述した本の方が優先度は上です。
詳しさ:★★★
本の薄さ:★☆☆
読みやすさ:★☆☆
こちらも、感染症領域では超有名な参考書です。
非常に分厚く、全てを「通読する」のは骨が折れますが、感染症診療に困った時に毎回参照できる非常に便利な本です。
高価ですが、かなり長期的に使えることを考えるとコストパフォーマンスはむしろ高く、持っておいたほうが良い一冊です。
詳しさ:★★★
本の薄さ:★★☆
読みやすさ:★★☆
レジデントマニュアルのシリーズです。
これも、持っている研修医が多い有名な本です。
通読して一通り学ぶ、という目的では「抗菌薬の考え方、使い方」の方が便利ですが、こちらも持っていると現場で参照することが多いと思います。
ここに挙げた本の中で、唯一白衣のポケットに入る大きさだからです。
感染症診療の機会が多い方は、ポケットに入れておくと良いと思います。
番外編
詳しさ:★★☆
本の薄さ:★★☆
読みやすさ:★★★
外科感染症に特化した本です。
ただ私は、優先順位を考えるなら、外科医であってもまず「抗菌薬の考え方、使い方」を読むべきだと感じます。
理由は二つ。
一つは、この本は「抗菌薬の考え方、使い方」と重複する部分も多いのですが、外科に特化している分、逆に外科医が感染症を学ぶにはこれ一冊でOK!とは言えないこと。
(外科医が日常診療で出会う感染症は「外科領域の感染症」だけではないため)
もう一つは、後半は各論(各科の感染症)にページを割いていること。
つまり、私のような消化器外科医だと、整形外科や脳外科のページを参照する意味合いはそれほど大きくはありません(現場では各診療科医師に治療を任せる方が安全なため)。
以上7冊。
本には好みがあるので、このラインナップには賛否両論あるかもしれませんが、私はここに挙げた本を上から順に読んでいくのが良いのではないかと思います。
なお、本をまとめ買いする場合は、必ず以下の記事もご参照ください。
