臨床研修病院の選び方|研修医マッチング前の医学部生向け情報

医師臨床研修マッチングが2018年6月14日より開始されます。

どんな基準で研修病院を選べばいいのか?

悩む医学部生は多いでしょう。

病院によって強みは様々、採用基準も様々です。

今回は、私自身のマッチング時の経験と、これまで複数の病院で研修医を指導した経験から、研修先の選び方を提案してみたいと思います

 

ちなみに私は、都市部の1000床規模の市中病院での臨床研修と、同じ規模の市中病院、および国立大学病院での勤務歴があります。

あくまで、この経歴を持つ一介の勤務医の私見としてご参照ください。

(選び方に正しい答えはないので、誰に聞いても異なる意見、という可能性はあります)

 

選び方としては、以下の3つが挙げられます。

・臨床研修制度の充実度で選ぶ

・志望科が強い病院を選ぶ

・採用基準で選ぶ

では順に説明していきます。

 

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臨床研修制度の充実度で選ぶ

まず、臨床研修システムに定評がある病院を選ぶ方法です。

つまり初期研修医の教育体制が充実している病院、ということですね。

志望科が決まっていない人は、自動的にこの方法で選ぶことになります。

このケースでは、臨床研修の2年間の間に志望科を決め、3年目以降も同じ病院で働くか、他の病院を探すか、再度考えることになります

 

臨床研修では、各科の専門知識を身につけるのではなく、どの科に進むとしても必要なオールラウンドな知識を身につける必要があります

オールラウンドな知識って何?と思った方は以下の記事で詳しく説明していますのでご覧ください。

外科志望でもないのに自動縫合器の使い方を学んでも意味がないし、循環器志望でもないのにカテの技術は要りません(身につけてもどうせ忘れます)。

では、どんな病院でオールラウンドな知識が身につくのでしょうか?

 

私なら、以下のような特徴を持つ病院と答えます(あくまで私見です)。

・臨床研修制度を開始して歴史が長い(臨床研修制度の導入前に、独自に臨床研修を行なっていた病院など)

・救急指定病院で、地域の救急医療を支えている(特に3次救急まで受け入れ、さらに救急専門医が在中している病院)

・総合診療科(総合内科)で定評があり、かつ歴史もある(特に研修医向け書籍を執筆するような医師が在籍しているなど)

こういった病院では、臨床研修医の指導ノウハウがあり、より良い研修が受けられる可能性が高いと考えられます。

 

ところが、この方法で臨床研修制度を選ぶことには、実は一つの欠点があります。

自分の志望科が決まっている人にとっては、

「臨床研修先としては条件が良いが、自分の志望科は強くない病院」

というのが候補に入ってくることです。

たとえば消化器・一般外科志望なら、臨床研修先としてはベストでも、消化器外科手術症例数は少ない、といった病院のことを指します。

このケースでは、志望科をローテートしても希望に見合うトレーニングは受けられないかもしれません

また、3年目以降働く病院を研修医2年目の間に探し、再び採用試験を受けるなど就職活動しなくてはなりません

 

こういう事態は避けたい、という人には、次の「最初から志望科の強い病院を選ぶ」という選択肢があります。

 

志望科の強い病院を選ぶ

すでに志望科が明確に決まっていて、卒後3年目以降の専門科の研修を見据えて臨床研修先を選ぶパターンです。

卒後3年目以降の研修期間は3年が一般的で、このパターンを「5年計画」と呼ぶこともできます。

(もちろん病院によっては6年計画や7年計画ということもある)

研修制度の点で第一希望とは言いにくい病院を選ぶことになりうるのが欠点ですが、志望科の研修を優先することのメリットも多くあります。

 

まず一つは、志望科が強いため、臨床研修の間でも志望科ローテート時に満足度の高いトレーニングが積める点です。

3年目以降に別の病院から来た人と、すでに技術や知識レベルに差をつけることが可能です。

 

二つ目として、臨床研修中に他科の上級医と仲良くなれることです。

臨床研修中には各科をローテートするため、様々な科の上級医に名前を覚えてもらい、親しく話せる関係を作れます

これが卒後3年目以降に強力に生きてきます

卒後3年目以降、自分の患者さんのことで他科にコンサルトする(協力を依頼する)ことは非常によくあります。

心電図異常がありACSを疑う→循環器内科コンサルト

肺炎を起こした→呼吸器内科コンサルト

アンギオを依頼する、読影結果を確認する→放射線科コンサルト

病理診断結果を問い合わせる→病理診断科コンサルト

など、例をあげればきりがありません。

研修医の時期から同じ病院にいる人は、どんな風にコンサルトすべきか、誰に何をどんな順番で伝えるとスムーズかを、2年の間に知り尽くしています

病院には様々なキャラクターの医師がいて、明文化できないローカルルールもたくさんあります

卒後3年目でこれを覚えるために必要な数ヶ月を飛び越して、専門科研修に集中できるのは大きなメリットと言えます。

 

むろん、卒後3年目以降に外部から来た人との差は、時間がたてば必ず埋まります

しかし、専門科の医師としてはビギナーで、かつ新しい環境に置かれたストレスの中で、

「ほぼ全員が会ったことのない人か、ほとんどがよく知っている人か?」

の差はかなり大きいです。

これをメリットと感じるかどうかは個人の性格次第ですが、研修先を選ぶときはこの点を加味する必要があるでしょう。

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採用基準で選ぶ

最後のポイントは、病院の採用基準です。

マッチング期間は、志望する候補となる病院の採用試験を受けに行くことになります。

病院によって、

面接のみ(+病院見学に来た経歴)

面接+小論文

面接+臨床知識の筆記試験(+小論文)

など、様々な採用基準があります。

 

重要なのは、

採用試験に臨床知識が必要かどうか?

採用基準に、病院への見学歴が必要かどうか?

の2点です。

 

臨床知識が必要か?

採用基準に臨床知識が必要なければ(面接や小論文だけのケース)、国試対策の勉強は6年生の夏〜秋以降に始めることもできます

ところが臨床に関する筆記試験を課す病院を志望する人は、この計画だと試験に合格できません。

国試レベル、あるいはそれ以上のレベルの問題が筆記試験に出題されるからです(もちろん病院によりますが)。

そこで、このケースでは国試対策としての勉強を半年ほど前倒しする必要があります

 

このパターンには利点と欠点があります。

利点は、採用試験がある夏までに国試合格のために必要な知識がほぼ身につくため、秋以降が非常に楽だということです。

秋以降国試までは、卒試やポリクリが終わってフリーの時間が増えます。

卒業後に始まる長い医者人生を考えれば、長期間ゆっくりできるのはこれが最後です

ここをゆったり過ごし、国試を悠々と迎えられるのは大きな利点と言えます。

 

一方欠点は、周囲がまだ勉強していないうちから黙々と勉強を始めなくてはならないことです。

特に夏の東医体、西医体まで部活を続けたい人の中には、大事な時期に勉強などしたくない、という人もいるでしょう。

部活が一段落して、それから本腰を入れて勉強したい、という人にとっては、臨床知識を問う採用試験のある病院は選びにくいということになります。

 

病院への見学歴が必要か?

採用試験が面接だけの病院に多いパターンです。

見学に一度も来たことがない人は採用しない、と明文化している病院もありますが、これが暗黙の了解となっている病院もあります。

病院側としても、面接の数分間の会話だけで採用を決めるのは心許ないわけです。

見学やポリクリ時に「こいつは欲しい」と思った人を選びたい、と考える病院があるのは、ある意味当たり前のことです。

こういったポイントは、採用基準を見るか、先輩に聞くかすると良いでしょう。

 

これはあくまで私見ですが、原則「有名な人気研修病院で、かつ採用試験が面接だけ」という病院に、見学なしで突っ込むのは危険です。

採用する相手に、「なぜ実際に見に来てもいないのに、この病院が良いと思ったのだろう?」と疑問を抱かせる可能性があるからです。


マッチングで臨床研修病院を選ぶ時の3つのポイントをまとめてみました。

繰り返しますが、研修先選びの答えは一つではないため、あくまでこれは一人の勤務医の意見です

参考程度にお考えいただき、いろいろな方の意見を聞いて決めてくださいね。

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医師。専門は消化器外科。二児の父。
ブログ開設4ヶ月後に月間67万PV達成
時事通信社医療情報サイト「時事メディカル」
「教えて!けいゆう先生」のコーナーで定期連載中。
エムスリーでも連載中&「LIFESTYLE」企画・監修。
「劇場版コード・ブルー」公開前イベントに出演。
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臨床研修病院の選び方|研修医マッチング前の医学部生向け情報」への2件のフィードバック

  1. メロンパン

    ずっと気になってたことを記事にしてくださり、ありがとうございます。まだまだ先のことにはなりますが気になっていたので。

    初期研修の病院を探すのと、後期研修の病院を改めて探すのと、どちらが大変なのでしょうか?
    初期研修の病院選びは先輩から話をかけるのですが、後期の話はなかなかきけないので…

    病院によるのかもしれませんが、けいゆう先生の感じたことを教えていただけると嬉しいです。

    返信
    1. けいゆう 投稿作成者

      探す手間という意味では、どちらも同じかなと思います。
      医学生向けのレジナビも、初期研修医向けのレジナビもあります。
      ただ大学医局人事で動くケースでは、後期研修先は医局内の関連病院を選ぶケースが多いので、その場合は探す手間はないですね。
      医局に入っているか、フリーで動くかで随分違うと思いますね。

      返信

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