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若手医師の呼び方|フェローと研修医、レジデントの意味の違いとは?

これまでこのブログの医療ドラマの解説記事に対して、

「フェローと研修医は何が違うのですか?」

「後期研修医とは何ですか?」

「指導医とはどういう意味ですか?」

といった、医師の呼び名に関する質問を多くいただきました。

たとえば、「コードブルー」の藍沢(山下智久)や白石(新垣結衣)は1st〜2nd SEASONでは「フェロー」と呼ばれ、3rd SEASONでは指導医でした。

3rd SEASONでは、名取(有岡大貴)や灰谷(成田凌)がフェローでしたね。

一方「コウノドリ」の1期では、白川(坂口健太郎)や下屋(松岡茉優)が「後期研修医」と呼ばれ、2期で吾郎くん(宮沢氷魚)は「研修医」と呼ばれていました。

そして2018年7月から始まった「グッドドクター」の新堂湊(山崎賢人)は「レジデント」ですね(解説記事はこちら)。

 

若手医師の呼び名は他にも、

専攻医、修練医、ローテーター、臨床研修医、初期研修医

などまだまだあります。

これらは何が違うのでしょうか?

これからも医療ドラマでみなさんが疑問を感じることがないよう、今回はこれらの呼び名について徹底解説してみます。

 

医師のキャリア

まず、医師は6年間の大学医学部生活の最後に医師国家試験を受け、4月から医師になります。

かつては、医師になるこの4月の時点で進む科を決めなくてはなりませんでした

医学部5年生と6年生で「ポリクリ」と呼ばれる現場体験実習(ほとんど見学)があり、これだけで「自分が何科に進むべきか」を決めていたわけです。

 

ところがこの方法では、たとえば消化器外科に進んだ人は、医師になった瞬間から消化器疾患ばかり診ることになります

胃や大腸の病気に早いうちから詳しくなるのは良いことですが、自分の患者さんが入院中に肺炎やクモ膜下出血になることもあります

「消化器が専門なので消化器疾患しか診ることはできません」

では、適切な対応ができません。

私たちは患者さんを便宜上専門科に振り分けているだけで、人間の体は様々な科の病気を同時に発症します。

あらゆる疾患を診断、治療できるスーパーマンは必要ありませんが、どんな病気もある程度は診ることができる医師を養成する必要があります

 

そこで、今から14年ほど前に「医師臨床研修制度」が始まりました。

医学部を卒業して2年間は、あらゆる科を順に1〜2ヶ月程度ずつローテーションして勉強しよう、ということです。

この2年の間にある医師を「初期研修医」「臨床研修医」と呼びます。

まだ進むべき科の決まっていない人たちです。

この研修システムを通称「スーパーローテート」と呼ぶので、この2年間の途中にある医師を「スーパーローテーター」や単に「ローテーター」と呼ぶこともあります。

これらは全て同じ意味で、この呼び名を使えば、「卒後2年以内の臨床研修中の医師」であることは確実に示せます。

 

この2年間の最後に医師は、自分が何科に進むかを決めます。

学生実習の見学ではなく、実際に各科の診療に参加しているので「自分が何科に向いているか」をより正確に判断できます

そして卒後3年目以降、ようやく「○○科医」を名乗ることができるわけです。

3年目以降はれっきとした「○○科の医師」です

 

「研修医」という呼び名

一方、「初期研修医」や「臨床研修医」の、「初期」や「臨床」が抜けて、単に「研修医」となると意味はかなり曖昧になります

2年間の臨床研修を終えて「○○科医」になっても、その科の専門分野についてはまだ研修中です。

したがって、3年目以降の医師も「研修医」と呼ぶ病院はあります

しかしこの呼び名だと、卒後2年以内の「初期研修医」「臨床研修医」と紛らわしいので、「後期研修医」と「後期」をつけることもあります。

これが、ドラマ「コウノドリ(1期)」の白川や下屋ですね。

 

ただ、3年目以降その科の専門分野を学ぶにつれて、もう「研修医」と呼ぶのは不自然なくらい現場で動けるようになり、高い能力を身につける医師もたくさん出てきます。

その科の医師として十分信頼して良いのに、「研修医」という呼び名だと患者さんの不安を誘う可能性があります

そこで、3年目以降は「研修医」という呼び名を使わない病院の方が多いです。

この時使うのが「修練医」「専攻医」「フェロー」です。

これらは「後期研修医」と同じ意味です。

コードブルー3rd SEASONのフェローである名取や灰谷は、コウノドリ(1期)の白川や下屋と同じ卒後3年目以後の年代だということです。

 

では、3年目以降、何年目までこの立場なのでしょうか?

実は、これについての明確なルールはありません

後期研修医制度やフェロー制度を何年間設定しているかは、病院によって異なるからです。

3年間(卒後3年目から5年目の間)が最も一般的ですが、4年間や5年間というところもあります。

したがって「いつまで研修医か?」という質問の正確な答えはありません

 

「レジデント」とは?

一方、若手医師を「レジデント」と呼ぶこともあります。

「レジデント(resident)」とは、「住人」という意味です。

「レジデンス(residence)」は「住宅」という意味で、マンションの名前にもよく使われていますね。

研修医のような若手医師は、あまりに多忙で自宅に帰る暇がなく、病院に住んでいるも同然だったため、昔からこう呼ばれています。

「レジデント」は「研修医」とほぼ同じニュアンスの、曖昧な言葉です

つまり、「初期研修医」のことを「レジデント」と呼ぶところもあれば、それ以後も「レジデント」と呼ぶところもあります。

ややこしいことに、卒後2年目以内を「臨床研修医」、3年目以降を「レジデント」と呼ぶ病院もあります。

このケースでは「レジデント」=「フェロー」ということになります。

とにかく若手医師であることは確かですが、その定義は病院によって様々です。

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なぜ呼び方がこんなにたくさんあるのか?

若手医師の呼び名はなぜこんなにたくさんあり、そしてなぜこんなに曖昧なのでしょうか?

その理由は、臨床研修制度が始まったことにあります。

もともとは、大学を卒業すればすぐにどこかの科に属し、そのままキャリアを重ねるだけでした。

よってその科の若手医師を全員「研修医」や「レジデント」と呼んでおけば事足りたわけです。

ところが、臨床研修制度が2年間課されたことで、「最初の2年」と「3年目以後」を分ける必要が出てきました

ここで様々な病院が独自に、前者と後者のそれぞれに名前を与えたため、呼称が増えてしまいました。

その上、昔の呼び名もそのまま残っており、ますます使い分けが難しくなってしまったのです。

 

 

「指導医」とは?

さて、一方「指導医」という言葉もあります。

この言葉を一つの役職名だと誤解している方は多いようなのですが、この呼び名はこれまで挙げたような役職名では全くありません

以前ドクターXの解説記事で「後進を育てるのは指導医の義務だ」という話を書いたら、コメント欄で、

「大門はフリーランスなので指導医じゃない」

と反論されて驚いたことがあります。

「指導医」は、「先輩医師」とほぼ同じ意味です。

後輩を指導できる立場にある医師は、全員「指導医」です

よって、たとえばコードブルーで緋山(戸田恵梨香)がフェローの名取に、

「名取、今日初期研修医のA先生が患者さんの創部処置をするから指導医としてついてくれるかな?」

というセリフは普通に「アリ」です。

名取はまだフェローですが、初期研修医の指導は先輩である彼の仕事です。

 

そもそも、後輩医師を教育することは先輩医師の大きな責務です。

指導医に常勤も非常勤(アルバイト)もありません

医師は、現場でしか質の高い教育は受けられません。

「目の前の患者さんに全力を尽くす」のは当たり前のことで、医師にとっては「最低限の仕事」です。

後進を教育し、チームとしてのパフォーマンスを高めることが、現在だけでなく未来の多くの患者さんを救うことになります

これは、私がこのブログでこれまでしつこいくらい強調していることですね。

 

というわけで、今回は若手医師の役職名について解説しました。

ドラマに出てくる役職名で、他に疑問点があればご質問いただければと思います。