消費者庁は2020年3月、通信販売業者など30社に対し、46商品のインターネット広告から問題のある文言を削除するよう要請しました(1)。
科学的根拠がないにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)への予防効果をうたっていたためです。
これらの広告では、納豆やタンポポ茶、ビタミン類、空間除菌剤などが新型コロナに効くと宣伝していました。
さらに2020年6月、消費者庁は重ねて調査を行い、35の事業者に対して38商品のインターネット広告表示に是正を求めました(2)。
対象となった商品は、「アミノ酸や光触媒などを使った除菌スプレーや、海藻に含まれる成分が「サイトカインを抑制」するなどと表示していた健康食品」でした。
新型コロナ感染予防などの効果をうたっていましたが、やはり科学的根拠はありませんでした。
同じく2020年6月、「コロナに効く」とうたって未承認の漢方薬を広告した自称整体師が、医薬品医療機器法違反容疑で摘発されたとの報道もありました(3)。
こうした事例は、おそらく氷山の一角でしょう。
誰しも不安が高まると真実を見極める目は曇ります。
少しでも気持ちが安らぐなら多少の出費はいとわない。可能性が少しでもあるものは全て試したい。そう考える人は多いのです。
しかしこれらの商品の中には、健康被害につながるものも少なくありません。
「効果がない」どころか、「害がある」のです。
例えば空間除菌については、世界保健機関(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)、厚生労働省が繰り返し注意喚起しています。
「人がいる環境に、消毒や除菌効果を謳う商品を空間噴霧して使用することは、眼、皮膚への付着や吸入による健康影響のおそれがあることから推奨されていません」
「室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の(空間)噴霧や燻蒸をすることは推奨されない」「路上や市場と言った屋外においてもCOVID19やその他の病原体を殺菌するために空間噴霧や燻蒸することは推奨せず」「屋外であっても、人の健康に有害となり得る」「消毒剤を(トンネル内、小部屋、個室などで)人体に対して空間噴霧することはいかなる状況であっても推奨されない」
「消毒剤の(空間)噴霧は、空気や環境表面の除染方法としては不十分であり、日常的な患者ケア区域における一般的な感染管理として推奨しない」
(厚労省公式サイトより引用)
また、健康食品に関しても、最近さまざまな問題が指摘されています。
健康食品に関する相談も急増
2021年1月、ダイエット食品やサプリメントに関して、消費生活センターや政府機関への相談が急増している現状が明らかになりました(4)。
嘔吐や下痢、じんましんなど、健康被害を訴える声が多く寄せられているようです。
外出自粛によってダイエット関連商品の需要が高まった反面、品質に問題のある商品が多く出回ったと推測されています。
また、新型コロナの流行に伴いAmazonの偽レビューが急増しているとも言われています(5)。
2020年3月から9月に投稿された約7億2000万回のレビューを調査した結果、その約42%は「信頼性が低い」と判定されたのです。
前年同期間の調査では36%でした(もともとの偽レビューの多さにも驚きますが)。
2020年に偽レビューが増加したのは、やはり「消毒剤やマスクなどの需要が急増し」たことが理由だと指摘されています。
近年は、3人に1人以上が「商品検索をAmazonから始める」とする調査結果もあり(6)、こうした偽レビューの悪影響は大きいでしょう。
Amazonに限らず、ネット通販で評価の高いレビューを見ると、購買意欲が高まる人は多いかもしれません。
しかし、これほど低い信頼性を見れば、レビューはとても当てにできないでしょう。
商品の価値を自分の目でしっかり見極めなければ身を守れません。
また、迷った時はまず専門家の「集合知」である公的機関の発信を参照する必要があります。
例えば消費者庁は、科学的根拠のない情報による健康被害を防ぐため、公式Twitterアカウントや公式サイトで繰り返し情報発信しています。
2021年2月〜3月には、「新型コロナ関連消費者被害防止」のためのオンラインセミナーを開催し、アーカイブを公開しています。
第3回の「Withコロナ時代のホント・ウソ 不確かな情報に騙されていませんか?」では、「ネット情報の見分け方」に関して微力ながら筆者も協力しています。
ぜひご参照いただければ幸いです。