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医療ドラマの「あのシーン」はウソかホントか? vol.1

今回は、「医療ドラマではよく見るのに実際にはありえないシーン」を3つ、紹介します。

いずれも「確かに見るなぁ」と思うものばかりだと思いますが、なぜ「ありえない」のでしょうか?

医療を身近に感じていただくことを目的に、分かりやすく解説してみましょう。

 

外科医のお決まりのポーズ

医療ドラマの手術シーンで必ず見る、外科医の「お決まりのポーズ」があります。

両手を胸の前から首あたりの高い位置にビシッとあげて手のひらを内側に向けているポーズです。

確かに実際にも似たようなポーズを取ることはあるのですが、ドラマで見る姿は少し大げさです。

 

外科医はたいてい、手洗いをした後は、肘を曲げてお腹の前あたりに両手を浮遊させておきます

普段通り両手を下ろしてぶらぶらしていると、清潔でないものに触れてしまう恐れがあるからです。

そのため、どこにも手が当たらないよう体の前に出しておくわけです。

清潔な状態を維持できれば良いだけなので、腕を高く上げる必要はありません

 

逆にみなさんが、両手がドロドロに汚れている時に、歩きながら自分の服を汚したくなかったらどうしますか?

お腹の前あたりに出してふわふわさせておこうと思うでしょう。

それと同じポーズです。

 

これは滅菌手袋をした後も同じです。

手袋をした後は、腕組みをしておくこともよくあります。

着ているガウンは清潔なので、腕組みをしたりお腹や胸を触っても構わないからです。

むしろふわふわさせているよりは、触れても良い清潔な場所に手を密着させている方が安全なこともあります

逆に手を上げすぎると、顔に当たりそうで危ないこともあります。

マスクや帽子は清潔ではないですからね(手を洗う前に装着するので顔は清潔ではありません)。

 

ちなみに私たちは、この「清潔ではない」部分のことを「不潔」と呼び、「清潔」と区別します。

「不潔」というと一般的には「汚い」イメージがある言葉ですが、医療現場では「清潔でない」「滅菌されていない」という意味です。

医療現場では「感染源となる微生物がいない」高度な清潔さを要求される場面が多いので、「ここは清潔か?不潔か?」を常に私たちは意識して動きます。

 

屋上でトーク

医療ドラマに限らないのかもしれませんが、ドラマの中の人たちは妙に屋上を愛用します。

最近では、「A LIFE」や「コード・ブルー」「コウノドリ」「ドクターX」のいずれでも屋上シーンはありましたね。

実は、職員が屋上に出られる病院はあまりありません。

大きな病院だと、屋上はヘリポートになっているところが多いようです。

まして小さな病院だと、狭い屋上は憩いの場所にはなり得なそうです。

 

屋上だけでなく、病院の庭のようなところのベンチや、院内のカフェスペース等で医師同士や看護師などがトークする場面もよく見ますね。

実際には、あまりこういうことは行われません。

白衣や医療用ユニフォームを着て、患者さんがたくさん通るようなところでくつろぐのは少し抵抗があるためです。

患者さんから見て、勤務時間中に目に付くところで医師たちが楽しそうに談笑する姿は、決して気持ちの良いものではないだろうと思います。

 

では、日中の休憩時間はどうするのでしょうか?

医師は医局(職員室)に自分のデスクがあるので、そこでゆっくりします。

看護師など他の職種の人は個人用のデスクがない方が多いので、それぞれの部署の休憩室でゆっくりするのが一般的でしょう。

よって、医療ドラマでよく見る、ナースステーションの裏側(?)の休憩室で医師や看護師らが話しているシーンは、現実に即せば「医師が看護師用の休憩室に入らせてもらっている」という設定を考えます。

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みんなでランチ

医療ドラマでは、医師や看護師たちがみんなで病院の食堂や休憩室で一緒にご飯を食べたりするシーンがよくありますね。

私たちも本当はこのようにランチをとりたいのですが、現実にはたいてい不可能です。

 

科によりますが、多くの医師は普段それぞれが独立して動いているため、休憩のタイミングが一致することがなかなかありません

外来に出ている医師は昼ご飯を食べる暇がないか、あっても合間でサッと食べることが多いと思います。

手術に一緒に入っているメンバーでも、終わった後はそれぞれの仕事があるため、一緒にご飯を食べることはあまりありません。

 

たとえば手術を担当した医師のうち、主治医は、手術が終わると患者を病室まで一緒に送ります。

さらに術後の指示等の管理があり、すぐにご飯を食べるわけにはいきません

しかし助手の医師は、手術が終われば患者さんがまだ麻酔がかかっている段階でも一足先に手術室を出られます

そのまま食事に行くケースもあるでしょうし、手術中に別の担当患者さんが病棟で何か変化を起こしていれば手術後すぐに自分の仕事を始めることもあります。

チーム医療とはいえ、それぞれが別の患者さんを担当していますから、仕事内容もペースもバラバラということですね。

 

一方看護師は、ある部署のスタッフ全員が同時に休憩に入ると病棟や外来が空っぽになってしまうので、休憩のタイミングをずらして取っています。

グループで交互に休憩する、というパターンなら少人数で同時に食べることもあるかもしれませんが、一人で食堂で食べている看護師もよく見ます。

もちろん部署によっては例外もあるとは思いますが・・・。

 

いずれにしても、医師と看護師など他職種だと、まして休憩のタイミングは合わないでしょう。

救急部だと特に、複数の医師がまとめて同時に不在になるわけにはいかないので、「みんなで一緒にランチ」はできないのですね。

 

フィクションの世界を否定する意図は全くありません。

現実と比較して楽しんでもらえたら幸いです。

 

続編は以下をどうぞ!

医療ドラマの「あのシーン」はウソかホントか? vol.2