医師が監修しているインターネットの情報サイトはたくさんあります。
そこには必ず医師のプロフィールが書かれてあります。
医師推奨と書かれた商品にも、医師の顔写真が載っていて、その人の経歴や資格が下に書かれてあるものが多いですね。
これらは、その情報や商品の信頼性を高めることが目的のはずですが、果たして実際にはどうでしょうか?
見た人があまり理解できない経歴や資格が羅列されているので、
「よく分からないけれど何となく信頼できそう」
という風になりませんか?
そこで今回は、医師のプロフィールの見方をまとめてみます。
もちろんプロフィールからは、その医師のほんの限られた情報しか得られません。
医師の能力や信頼性をプロフィールだけで知ることは不可能だというのは大前提です。
あくまで「書かれてあることをどう理解するか」の指標としてこの記事をご利用ください(かなり私見も含まれます)。
専門医資格の見方
医師のプロフィールには、その医師の信頼性を高めるため、学会の専門医資格が書かれてあることが多いですね。
実は私のプロフィールページにも書いています。
専門医資格と言えるのは、
「◯◯学会専門医」
「◯◯学会認定医」
「◯◯学会指導医」
といったものです。
(後述しますが、「〜学会会員」「〜学会正会員」は資格ではありません)
さて、こういった資格はその医師の信頼性を判断する上で「使える情報」でしょうか?
それを知るためには、専門医資格を医師がどのように得ているかを知っておく必要があります。
多くの専門医資格は、以下のような流れで手に入れます(学会によっては例外もあり)。
①学会に一定年数所属する
→学会にお金を払って入会し、年会費を毎年払い、3〜5年以上所属する
(多くは定期的に開かれる総会への一定回数の参加が必要。所属年数の縛りがない資格もある)
②定められた症例を一定数経験し、その証明を提出する
→各臓器あるいは各疾患の治療経験をレポートとしてまとめる、または症例をオンラインで登録し、事務局に承認される。
(数は学会によって異なるがおよそ数十〜数百例)
③定められた業績を提出する
→その学会の領域に関わる論文執筆や学会発表を一定回数行なったという業績を提出し、事務局に承認される(制限は学会により異なる)
④認定試験に合格する
→上記の条件を満たした医師だけが、通常年に1回行われる筆記試験の受験資格を得る。
それに合格すれば専門医認定(試験合格率は一般に6〜8割程度)
(受験料と認定料で6〜8万かかるのが一般的。中には筆記試験のない資格もある)
以上からわかるように、学会によって難易度は異なるものの、おおむね専門医資格の取得にはそれなりの手間がかかります。
日常臨床の合間に論文執筆や学会発表を行い、試験勉強もしなくてはなりません。
実際、結構大変です。
よってこうした資格を多く持っている医師は、「それなりに」意識が高い人と考えることは可能です。
ただし、逆のことは言えません。
つまり「資格がない=意識が低い」ではありません。
専門医資格がなくても診療は全く変わらずできるため、必要ないと割り切っている医師は資格をとりません。
しかも資格があると、それを理由に任される仕事が増えてかえって忙しくもなります。
そして資格があってもなくても給料は全く変わりません。
専門医資格を苦労して取得する人の中には、患者さんにとって自分の信頼を高めて安心感を与えたい、という人も多いと思いますが、これは本人の考え方次第です。
それが正しいという意味ではありません。
ちなみに学会によっては、専門医になって十分な年数経つと「指導医」という認定がされるものもあります。
一方、認定医は専門医とほぼ同じ意味です(学会によって名前の付け方が違うだけ)。
一方、注意すべきなのは資格の下に並んでいることの多い、
「◯◯学会会員」
「◯◯学会正会員」
といった称号です。
これは資格では全くありません。
たとえ「正会員」でも「ただの会員」ですから、入会費と年会費を払って登録しているだけです。
「学会員であること」はその医師の能力を保証するものでもなければ、信頼性を高めるものでもありません。
「その学会に所属している」ことで、自分の興味のある分野を示すというくらいの意味です。
医師でなくても入会できる学会も多いため、中には「正会員」と書いて白衣を着たプロフィール写真まであるのに医師ではない、という人もいます。
ネット上ではこういう記載を時に見かけます。
出身大学の見方
医師のプロフィールには、出身大学が書かれてあることも多いですね。
この出身大学に関する情報は、基本的には「あまり使えない情報」と考える方が無難です。
偏差値の高い大学を卒業しているからといって臨床医として有能とは限りませんし、逆に低い大学を卒業しても有能な臨床医はたくさんいるからです。
それだけではなく、そもそも医師のプロフィールに書かれた大学名が、学部なのか大学院なのかわからない、という「あいまいさ」もあります。
どういう意味か?
少し本題とはずれますが、説明しておきます。
大学院を卒業した医師の中には、出身大学と出身大学院が同じでない人はかなり多くいます。
医学部以外の学部の人は、卒業後同じ大学の大学院に行く、というのが一般的でしょう。
医師の場合は、6年の学部生活を経て研修医になり、数年の臨床経験を経てから大学院に入る、というのが一般的です。
したがって、大学院に入るという段階になって改めて「どの大学の大学院に入るか」を考えることになります。
私大の医学部を卒業して国立大の大学院に入る人もいれば、地方の大学を卒業して都心の大学の大学院に入る人もいます。
そして医師の最終学歴は大学院なので、出身大学院だけが書かれてあることもよくありますが、同じ大学の学部出身かどうかまでは分かりません。
なぜわざわざ別の大学の大学院に行くのか?
と思った方がいるでしょう。
最大の理由は、
大学医学部より大学院(医学研究科)の方が比較的自由に選べる
ということにあります。
医学部入試は難易度が様々なので、それぞれの受験生の成績に応じて大学を選ぶケースが一般的です。
一方大学院は、入試自体の難度は低めで、そこでのセレクションはそれほど重視されていません。
ちなみに私が所属する大学院の入試合格率は例年90%を超えています。
重要なのは大学院在学中にどんな業績を残して学位を取得するかです。
したがって、学部と違い、多くの場合は自分の行きたい大学院に行けます。
例えば、
地元は関東地方だが、関東地方には学力に見合う医学部がなかったので馴染みの薄い地方の医学部に入学、でもやっぱり大学院は地元が良いので関東の大学院へ
といったケースはよくあります。
患者さんの中には、特に年配の方で出身大学を気にされる人は結構います。
しかしここまで書いてきたように、「出身大学」といっても意味は様々で、そもそも出身大学がそれほどあてにならない、となると、あまり気にしなくても良いのではないか、というのが私の意見です。
ちなみに、注意すべき称号として「医学博士」があります。
医学系の大学院を卒業すると「医学博士」の学位が得られますが、これは大学院を修了したことの証明にしかなりません。
医学系の大学院には、医学部を卒業し医師免許を取得した医師もいれば、他学部を卒業し医師免許を持たない人もたくさんいます。
医師免許がなくても「医学博士」にはなれます。
これについても誤解のないよう注意しましょう。
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卒業年度の見方
医師のプロフィールで私たちが気にするのは卒業年度です。
「大学を卒業して何年経っているか=医師としてのキャリア」が分かるからです。
医師の上下関係も、この卒業年度で決まります。
中には元会社員で医師になった人や、3浪、4浪して医師になった人もいますので、年齢で上下関係を決められません。
例えば40代の研修医も普通にいます。
年配だからといって医師のキャリアが長いとは限りません。
一方「その道に入って長い」というのは、それなりの信頼性を保証します。
これは医師でなくても、どんな業界でもそうでしょう。
経験豊富であることは、それだけでその人の仕事に対する信頼性をある程度高めます。
もちろん、キャリアが長いからといって有能とは限りません。
若い人の方が優秀、というケースも多々ありますし、キャリアの年数はあくまで一つの目安でしかないのも事実です。
今回は医師のプロフィールに載っている、専門医資格と出身大学、卒業年度の考え方について述べました。
当たり前ですが、プロフィールだけで医師の良し悪しを判断することはできませんし、ここに書いたのはあくまで私の個人的な意見です。
参考にはしていただけますが、賛否両論はある可能性があることは最後に申し述べておきます。