10月28日に新刊「患者の心得〜高齢者とその家族が病院に行く前に知っておくこと」が発売されます。
2018年から連載している時事メディカル「教えて!けいゆう先生」の書籍化ですが、高齢者とその家族向けをテーマに大幅加筆修正しています。
本書の「あとがき」を公開します(一部ブログ用に改変)。
ぜひご覧いただき、本書を手にとっていただければ幸いです。
誰しも、加齢に抗うことはできません。
どれほど健康に気をつけている人でも、歳を経るほどに身体の様々な部分に不調をきたし、医療を利用する機会は増え続けます。
現在、我が国における65歳以上の高齢者は3500万人超(1)。
実に全人口の28%以上を占めます。
また、一人当たりにかかる医療費もますます増えています。
2017年度の調査では、75歳以上が全年代の中で最も高く、最も低い15〜44歳の7.5倍の医療費がかかっていました(2)。
毎日のように医療機関に通い、お腹いっぱいになるほど薬を飲み、それでも安心できずに悶々とした日々を過ごす。
そんな高齢者は少なくありません。
高齢であるほど、医療をうまく利用し、自らの身体と上手に付き合い、日々の生活を豊かにする術を身につけておく必要があると感じます。
加えて、高齢者が医療機関に通院・入院する際は、ご家族の協力が欠かせません。
送り迎えをしたり、受診に付き添って治療の説明を一緒に聞いたり、入院中の生活のサポートをしたりしていただく機会が多いからです。
それゆえ、患者さんご本人以上にご家族の方が疲弊し、精神的・身体的なストレスで参ってしまう、というケースも少なからずあります。
ご本人だけでなく、ご家族の方も高齢者医療の実態を知っておき、うまく立ち回る必要があるのです。
また、高齢者にとって医療は必ずしも「長生きするためのツール」ではありません。
自分の趣味に熱中したり、お友達と遊びに行ったり、家族と楽しく美味しいものを食べたりして豊かな人生を送れるようにする。
高齢者にとっての医療の価値はそこにあります。
そのためには、早いうちから医療に関する知識を身につけ、来るべき「不調」に備えておかねばなりません。
本書では、高齢者の病気に対する考え方や、高齢者特有の問題にスポットを当てながら医療の知識を紹介しました。
しかし、私は読者に専門的な知識をたくさん伝えたい、と考えたわけではありません。
むしろ、簡単に理解できるような、身近な知識を得ておくだけで十分だ、と考えています。
容易に理解できる知識であるにもかかわらず、単に「知らない」というだけで医療を十分に活用できない方が多いことを、私は身を持って知っているからです。
本書を多くの方に読んでいただき、ここで得た知識を利用して医療をうまく使いこなせる方が増えれば、と願っています。
(参考)
(1) 内閣府「令和元年版高齢社会白書」
(2) 厚生労働省「医療保険に関する基礎資料」