【新刊】「医者と病院をうまく使い倒す34の心得」6月18日発売

上原正三さんが肝臓がんで逝去、意外に知らない肝臓の病気、3つの知識

ウルトラマンシリーズを始め、数々の特撮、アニメ作品を手がけたことで知られる上原正三さんが2日、肝臓がんで逝去されたとの報道がありました。

82歳でした。

 

著名な方が亡くなった時は、インターネットやSNSで様々な憶測が飛び交うことがよくあります。

しかし、実は専門家でも「肝臓がん」という情報だけではどんな病状なのか分からない、という点には注意が必要です。

 

むろん私自身も他者の死について憶測で語るのは大変失礼なことだと承知していますから、あくまで「一般論」として、肝臓がんに関する医学知識を簡単に紹介します。

 

「肝臓がん」とはどんな病気?

「肝臓がん」というと、肝臓にがんができた状態であることは誰しも分かるでしょう。

しかし、その中には全く性質の異なる複数の病気が含まれていることに注意が必要です。

 

肝臓がんは、肝臓を構成する細胞ががん化してできた「原発性肝がん」と、他の臓器から転移してできた「転移性肝がん」に分けることができます。

一般に「肝臓がん」という時は前者を指すことが多いのですが、数としては転移性肝がんの方がはるかに多いという点も重要です(本邦の明確なデータはなかなか見当たりませんでしたが、教科書的には転移性肝がんの方が20倍多い、とされています(1))

なぜでしょうか?

 

胃や大腸、膵臓などの消化器系の臓器を流れた血液は、そのほとんどが肝臓を経由して心臓に戻ってくるからです。

つまり、転移の過程で、がん細胞が途中にある肝臓に行き着きやすい、というわけです。

 

原発性では肝細胞がんが多い

がんを考える時は、「どの細胞ががん化してできたか」が最も大切です。

がんは、ある細胞が無秩序に分裂、増殖できるようになった結果できた「塊」です。

よって、その塊全体の性質は、もとになった細胞の性質に由来します

 

肝臓は、様々なタイプの細胞で構成されています。

同じ「原発性肝がん」でも、肝細胞ががん化してできたものは「肝細胞がん」(こちらが94%(2))、肝臓内の胆管の細胞ががん化してできたものは「肝内胆管がん」として区別します。

原因も治療も予後(どのくらい生きられるかなど)も全く違う、異なる病気だからです。

 

また我が国では、肝細胞がんの原因の約80%をB型肝炎ウイルスかC型肝炎ウイルスによる感染症が占めています(2)。

多くの場合こうしたウイルス感染によって、15年〜20年と長い間、肝臓に慢性的な炎症が起こり続けた結果(慢性肝炎や肝硬変)として、がんができる、とされています。

こうした背景から我が国では「肝炎対策基本法」が制定されています(詳細は割愛、詳しくはこちら参照)。

 

一方、転移性肝がんの方は、もっと多種多様です。

もともとがんができた臓器(原発巣)が異なるのですから、当然ですね。

大腸がんが転移したものなら、大腸がんの治療が必要ですし、膵臓がんが転移してできたものなら、膵臓がんの治療が必要です。

当然ながら、それぞれ別の病気として扱う必要があるのです。

 

ウイルス感染以外の原発性肝がんが増加

近年、肝炎ウイルス感染のない原発性肝がんが増加しています(3)。

その原因の一つが、脂肪肝です。

 

「脂肪肝」という病名は誰もがご存知でしょう。

肝臓に脂肪が蓄積して起こる疾患ですが、これは原因によって大きく二つに分けることができます。

 

一つは飲酒が原因となる脂肪肝(アルコール性肝障害)、もう一つが非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。

NAFLDの発症に関わる最大の因子は肥満

そして、高血圧や脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の値が高い)、2型糖尿病も危険因子となっています。

このリスト、どこかで見たことがあるはずです。

NAFLDは、メタボリックシンドロームが肝臓に現れたものと考えられているのです(3)。

 

放置すると肝硬変に進行し、最終的には肝臓がん(肝細胞がん)にまで至ることがあります。

特に「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と呼ばれるタイプは、そのリスクが高いとされています。

「生活習慣病が肝臓がんを引き起こすことがある」ということは、知っておいた方がよいでしょう。

詳細は以下の記事をご覧ください。

脂肪肝を放置するとがんになる?その原因、症状と検査や治療法を解説!

 

肝臓がんについて、ごく簡単にまとめました。

ぜひ大切な知識として、覚えておいていただけたらと思います。

(参考文献)
(1) 専門医のための消化器病学 第2版/医学書院
(2)「肝がん白書 平成27年度」日本肝臓学会
(3) NAFLD/NASH診療ガイドライン2014/日本消化器病学会