これから手術を受けることになっている方は、どんな準備をすれば良いのか、不安なことが多いだろうと思います。
「タバコを吸ってはいけないの?」
「お酒はのんでいいの?」
「食事で気をつけることはある?」
という疑問もあるでしょう。
今回は、術前の準備について私が外科医として患者さんによく説明していることをそのまま説明したいと思います。
術前の準備は非常に大切で、手術がうまくいくかどうかを決める大きな要素の一つです。
術前の生活に問題があったことで、術後が順調にいかず、入院が長引く方は多くいます。
手術をスムーズに受けるためにも、ここに書いてあることをしっかりおさえておいてください。
タバコは吸ってもいいか?
絶対に禁煙です。
これは必ず守ってください。
手術の1ヶ月前からの禁煙がすすめられます。
手術前の喫煙は、術後の肺炎や、傷の感染などさまざまな術後合併症のリスクとされています。
全身麻酔の手術の場合、眠ってもらった後に口の中に管を入れて機械につながれて人工呼吸を行います。
タバコを吸っている方は、この人工呼吸をきっかけに、術後に痰が多く出ます。
痰が多いとそれを出すのに非常に苦労し、術後に辛く苦しい思いをすることになります。
術後は傷が痛みますが、痰がたまると咳が出て、その咳が傷に響くたびにものすごく痛い思いをする方が多くいます。
またこれが肺炎の原因にもなり、術後肺炎は重症化すると命に関わります。
自分の命のためです。必ず禁煙しましょう。
病院によっては、喫煙が判明した時点で手術は中止、入院したその日に退院、というところもあります(私が以前勤めていた病院はそうでした)。
手術が延期になってしまうと、次いつ手術ができるかわかりません(病院によりますが、すでに1ヶ月以上先まで予定が埋まっていることも多いです)。
こういったことのないように早めに禁煙しておきましょう。
お酒は飲んでいいか?
適量であれば構いません。
手術があるから禁酒しないといけない、ということはありません。
これが上述したタバコとは大きく違うところです。
後述しますが、お酒のことを気にするより、きっちりとした食事習慣を保つことの方が大切です。
お酒をたくさん飲んで食事があまり摂れなくなる、というのは困ります。
「お酒を飲んで麻酔が効きにくくなって眠れなかったらどうしよう」
「途中で冷めてしまったらどうしよう」
と思う方、全く心配ありません。
確かに、普段から大酒飲みの人は麻酔薬が多く必要だとするという報告はありますが、現代の麻酔の技術で、手術中にきっちり眠れないことはありえません。
もちろん体調管理という意味で「適量」にしてください。
ただし、肝臓の手術を受ける方は禁酒が必要です。
また肝臓の手術に限らず、肝臓の機能が悪い方は上記の説明はあてはまりませんので、主治医の指示に従ってください。
食事はどうすれば良いか?
いつも通りのバランスの良い食事を心がけてください。
手術前に特別な栄養が必要ということはありません。
ただ、私の専門とする消化器の手術は特にそうですが、術後に一定期間絶食が必要になります。
しばらく食べられなくなるからといって、いつもより多く食べ、手術の日までに太ってくる方が結構います。
肥満は、手術中および術後のトラブル(合併症)の大きなリスクです。
むしろ、太り過ぎの方は適度な食事量におさえ、手術前に減量しておく方が安全です。
特定のリハビリが必要な方
肺など呼吸器の手術を受ける方、食道の手術を受ける方は、術前の呼吸のリハビリを指示される方が多いと思います。
特別な器具を使って呼吸の力を鍛えることで、術後の肺炎などの合併症のリスクを下げられます。
こういったことを指示されている方は、しっかりリハビリをしておきましょう。
以上が術前の準備です。
受ける手術によっては、他にも準備すべきことが指示されるかと思います。
主治医の指示に従って手術をスムーズに受けられるようしっかり準備しておきましょう。