病院では、研修医も患者さんの担当医に加わります。
大事な病名告知や治療経過の説明などは上級医とともに行うべきですが、担当医である以上、単独で簡単な病状説明をする機会はあります。
この際に、教科書には(当たり前すぎて)載っていない、絶対に守るべきルールを紹介したいと思います。
タメ口は禁止
レストランの店員がお客さんに、
「お腹減った?ハンバーグにする?」
と話しかけていたら、おそらく首が飛びます。
ところが、なぜか医師の中には患者さんにタメ口を使う人がいます。
社会人として非常に恥ずかしいことですので、決して真似をしないようにしましょう。
年齢の上下にかかわらず、プライベートで仲の良い友人でもない相手に丁寧語で話さない理由がありませんので、当然敬語を使ってください。
看護師や薬剤師などのコメディカル、製薬会社のMRさんなどが相手の時も、仲の良い友人と言える間柄でない限り敬語を使うこと。
大人になると、誰も真剣に戒めてくれません。
患者さんや同業者から「偉そうな奴だ」と思われて困るのは自分です。
くれぐれも注意しましょう。
チームの総意であることを伝える
患者さんからの信頼を得たいばかりに、指導医から自立していることを強調しすぎる人がいます。
確かに研修医であっても、自力で診療できる、ということを堂々と示すことは大切です。
しかし患者さんは、相手がビギナーであることは簡単に見抜いています。
たとえ能力が高くても、「研修医に診療されている」というだけで患者さんは不安を感じ、信頼を勝ち取るまでには時間がかかるものです。
そんな医師が、
「自分の考えであなたの治療方針が決まっている」
というそぶりを見せていたら、むしろ相手に恐怖を感じさせ、逆効果です。
「チーム全体でディスカッションして治療方針を決めていて、自分はチームの総意に従って動いている」
という謙虚な姿勢を忘れてはいけません。
心配しなくても、本当に能力が高いなら、患者さんは「この先生は信頼できる優秀な人だ」と自然に気づきます。
自科の上司は「呼び捨て」
会話に身内の名前を出す時は「敬称なし」「尊敬語なし」が基本です。
患者さんとの会話中に自分の科の上司を登場させる時に、
「部長の◯◯先生が△△とおっしゃっています」
のように言うのはよくありません。
「部長の◯◯が△△と言って(申して)います」
と話さなくてはならないでしょう。
「先生」くらいは付けてもよいという考えもあるかもしれませんが、「おっしゃっています」のような尊敬語は避けた方がよいでしょう。
医師以外の社会人でこのルールを守らない人はあまり見ませんが、医師はこの辺りが少しルーズです。
相手に対して非常に失礼ですので、くれぐれも注意してください。
身だしなみを整える
医師は見た目が大切です。
病院に行ったら診察室に茶髪にジーンズの医師がいたら相当不安になるでしょう。
その人がどれほど能力が高く、適切な診療をしていたとしても、信頼するのは難しいはずです。
きっちりした服装、髪型で、清潔感のある身だしなみで患者さんに接するよう心がけてください。
そもそも医師が患者さんから信頼を勝ち取るためには、「若い」あるいは「若く見える」というだけで不利です。
研修医だけでなく、私自身もそう思っています。
若々しさは大切とはいえ、度が過ぎると逆効果になる可能性があります。
患者さんは「自分の健康を相手に委ねる」という大きな決断をせねばなりませんので、この事実を心得た上で外観には注意するとよいと思います。
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挨拶はきっちりする
前述の通り、患者さんからの信頼を失わないようにするには、ファーストコンタクトが大切です。
当たり前すぎて言うまでもないことですが、まずはきっちり丁寧にご挨拶をするのが基本です。
挨拶もなしに、
「はい、じゃあ説明しますねー」
というような、いい加減で偉そうな話し方で会話を始めると、初対面でいきなり信頼を失います。
時間は守る
医師の仕事は、突然の急患や急変で予定外の仕事が入り、スケジュール通りに事を運べないことが多々あります。
そうした病院の特殊性に対する患者さん側の理解は必要です。
しかし、医師側はこれを「当たり前」だと思ってはいけません。
約束の時間を守ることは社会人としての基本です。
待たせている方は平気なのかもしれませんが、待っている方は相当苦痛です。
まして、患者さんやそのご家族は、何らかの病気に不安を感じている方々です。
約束の時間を大幅に超えて待たされると、担当医に対して不信感を抱くかもしれません。
必ず時間を守れるよう努力する必要があります。
もしやむを得ず遅刻したなら、
「お待たせして申し訳ございませんでした」
と最初にきっちり謝罪しなければなりません。
また、「遅刻しそうだ」とわかった時点で、できる限り病棟に連絡してその旨を患者さんに伝えてもらいます。
待っている方は、いつ来るか分からずに待ち続けているより「30分ほど遅れる」と分かっている方が、よほど気持ちが楽です。
私は、手術や処置と患者さんの面談が複数立て込んで忙しい時は、病棟看護師に、
「ご家族が来られたらコールをもらえませんか?」
と依頼することもよくあります。
看護師側は、予定通りの時間に医師がやって来ないと「忘れているのか、忙しくてまだ来られないのか」の区別ができません。
いたずらに看護師の仕事を増やすのはよくありませんが、分刻みのスケジュールの記憶に自信がない時は、病棟看護師を頼るのも一つの手です。
以上、研修医が守るべき6つのポイントをまとめてみました。
ぜひ、参考にしてみてください。