近年、多くの人が医療・健康に関する情報をインターネットで検索します。
「病気の名前や症状でGoogle検索した」という経験は誰しもあるでしょう。
しかし、インターネットでの検索は、時に危険を伴います。
例えば、がんに関する約250の情報サイトを調査した報告によれば、科学的根拠のない、危険で有害なサイトが4割近くにのぼったとされます(1)。
何気なくネット検索し、たどり着いた情報を信じた結果、大きな健康被害を受けてしまう。
そうした事態は容易に起こりうるのです。
一方、情報検索ツールとして、インターネットが便利なのも事実です。
医療・健康に関する疑問を解決したいと思った時、いつも医療機関を受診して専門家に問い合わせるなど、非現実的です。
「ネット全盛」の現代に生きる私たちは、やはり安全な情報検索法を知っておく必要があるでしょう。
そこでこの記事では、インターネットで医療・健康情報を検索する際に知っておくべきコツを4つ紹介します。
学会サイトを利用する
まず最初に知っておくべきなのが、「学会サイトを利用すること」です。
医学に関する学会は数多くあり、その大部分が一般向けに分かりやすい情報集を作っています。
多くの学会が、分かりやすく信頼できる情報集を作っているにもかかわらず、このことはあまり知られていません。
”ググる”前に、まずこうした学会サイトに行き、必要な情報があるかどうかを確認するのがオススメです。
どの学会か分からない時は?
自分が抱く疑問が、「どの領域に属するものか」が分からないこともあるでしょう。
例えば「胃潰瘍(いかいよう)」について調べたいと思った時、「何学会のサイトに行けばいいか分からない」となると、そこから先に進めません。
そこで、このような場合は、
「胃潰瘍 学会」
と検索します。
すると、Googleは「胃潰瘍について最も的確に述べた学会サイト」を検索結果として返します。
「胃潰瘍 学会」なら、トップにヒットするのは「消化器病学会」の一般向けコンテンツで、これが「正解」です。
つまり、「消化器病学会」という学会名を知っておく必要はありません(当然多くの方がご存じないと思います)。
というわけで、
「病名 学会」
「症状名 学会」
での検索は、覚えておきたいテクニックです。
なお、がんについて調べたい時は、まず国立がんセンターが運営する「がん情報サービス」にアクセスするのがオススメです。
その情報の量と質は圧倒的です。
がんについて知りたい時に「ググる必要はない」と言ってよいでしょう。
このサイトでは、信頼できる学会サイトを集めたリンク集を作っていますので、ぜひご活用ください。
患者向け医療情報サイト総まとめ|ググる前にここを見てください
「学会」は全て信用していい?
学会サイトなら何でも信用していいか、というと、そうとは限りません。
「学会」と名がついた組織が、必ずしも信頼できる学術団体とは限らない点に注意が必要です。
例えば、私が勝手に「日本山本学会」を作って公式サイトを立ち上げ、「学会」だと主張すれば、それは「学会」に他なりません。
つまり、名前が「学会」であれば、すなわち「まとも」だというわけでは当然ありません。
そこで、一つの目安となるのが「日本医学会分科会」の一覧に含まれているかどうか、です。
あくまで「目安」ではありますが、怪しげな「学会」に戸惑った時、ここに名前があるかどうかを確認するのは一つの手でしょう。
この一覧に「日本山本学会」はありません。
病名検索は正式名称で
病名で検索する際は、俗称ではなく、正式名称で検索するのが安全です。
学会サイトのような信頼できる団体のコンテンツは、正式な学術用語で病名を記載することが多いためです。
しかし、病気の正式名称には難解な漢字が用いられることも多く、一度聞いただけでは覚えられないこともよくあります。
そこで、医師から口頭で病名を聞いた際は、同時にメモに病名を書いてもらうのがよいでしょう。
そして、後で検索したいと思った時は、メモに書いてもらった正式名称を入力するのです。
私自身、患者さんに病名を説明する時は、同時に紙に病名を書いて手渡しています。
のちに患者さんがネット検索するであろうと予想するからです。
キーワードは重ねすぎない
Googleは近年、私たちの人生に深く関わるジャンルを「YMYL:Your Money Your Life」と呼び、検索結果を厳重に監視しています。
「検索結果(SERPs; Search Engine Result Pages)」は、Googleにとっての「コンテンツ」ですから、その質の低下はGoogle自体の価値を毀損します。
特に人の生活・生命に大きな影響を与える、お金や健康に関する情報には、一段と注意を払っているわけです。
私はずいぶん前から、医療・健康系のキーワードに関して、その検索結果をつぶさに観察してきました。
近年は、Googleのアルゴリズムの度重なるアップデートにより、病名や症状名の「単一キーワード」での検索結果は、かなり安全になったと感じます。
しかしながら、キーワードを複数重ねるにつれ、検索結果には徐々に怪しげな情報が増え始めます。
例えば、
「〇〇 治す 薬 人気」
「〇〇 効く 食べ物 おすすめ」
のような「複合キーワード」で検索すると、科学的根拠のない、危険なサイトに行き着くリスクが高まります。
サイト運営者から見れば、こうした限定的なニーズを持ったユーザーは購買意欲が高い傾向にあり、狙い撃ちしやすい潜在顧客だからです。
防御力を高める上でも、せめてキーワードは「2つまで」としておくのが安全でしょう。
「or.jp」をつけて検索する
覚えておきたい検索テクニックとして、キーワードの後ろに「or.jp」をつける、というものがあります。
or.jpとはサイトURLの末尾にあるドメインの一つで、多くの学会や公的機関が、このドメインを使用しています(orはorganizationの略)。
例えば、前述の日本耳鼻咽喉科学会のURLは「http://www.jibika.or.jp/」、日本産科婦人科学会のURLは「https://www.jsog.or.jp/」と、いずれも「or.jp」を使用しています。
「or. jp」をつけて検索すれば、「or. jp」のドメインを使用するサイトだけが検索結果に現れます。
前述の例で言えば、
「胃潰瘍 or.jp」
で、消化器病学会のサイトにたどり着くことができます。
「学会」のキーワードを追加することで目的の情報にたどり着けない場合は、「or. jp」をつけて検索するのがオススメです。
「答えが見つかるまで探す」をやめる
上記の方法を用いて情報検索し、それでも求める情報に出会えなかった時は、「ネット検索をあきらめる」のも大切です。
医療・健康に関する情報を検索する人は、しばしば、その背景に強い不安や焦燥感を抱いています。
自分や家族が何らかの病気と診断され、落ち込んでいる
気になる症状が続き、重い病気ではないかと疑っている
そんな不安定な心理状態で、冷静に情報を集めることなど、そもそも難しいものです。
疑問がなかなか解決せず、結果的に自分の考えを肯定してくれる情報に出会えるまでネット検索を続けたり、安心材料だけを集めてしまったりするのです。
インターネットは便利ではありますが、当然ながら限界があります。
ネット検索に頼りすぎず、早めに専門家に相談するのも大切です。
インターネットやSNSを用いて「答えが見つかるまで探した」結果、坂道を転がり落ちるように誤った知識を刷り込まれ、取り返しのつかない状況に陥る人は少なくありません。
便利なツールを「使いこなせる」人は、同時に「使わない選択」が適切にできる人でもあります。
インターネットの限界を知った上で、上手に利用していただきたいと思います。
以下のページもご利用ください。
患者向け医療情報サイト総まとめ|ググる前にここを見てください