消毒と乾燥は厳禁!すり傷・切り傷を早くきれいに治す方法

転んで膝を擦りむいたり、ナイフなどで手を切ったり、といった軽い怪我を正しく手当てしていますか?

消毒液で消毒してはいけない

ガーゼを当てて乾燥させてはいけない

抗生物質は飲まない

かさぶたは作らないように治す

お風呂に入って水道水で定期的に洗う

これが正解です。

私たち医療者にとっては当たり前のことですが、意外に一般には知られていません。

もし、一つでも「知らなかった!」と思うものがあれば、この記事をしっかり読んでください

 

間違った方法で傷を治療すると、化膿したり、傷がうまく治らないために大きな傷跡が残ります

特に顔の傷は跡が残ると目立つため、正しい方法できっちり治療したいものです。

今回は、傷の治療について自宅で行うべき正しい処置方法を解説します。

 

消毒してはいけない

以前は、転んで擦りむいたらマキロン赤チン(イソジン)といった消毒液を塗るのが当たり前でした。

病院でも、手術後に毎日医師が回診し、傷に消毒液を塗りたくっていた時代がありました。

この常識は10年以上前に覆され、現在は病院でも傷の消毒を行うことはありません(特別な例外を除き)。

 

理由は簡単で、傷の治りが悪くなるからです。

すり傷や切り傷が治る時は、隙間にさまざまな細胞が増殖し、穴を埋めるようにして治ります。

消毒液はこの細胞を殺してしまうため、治癒する力を奪ってしまいます

 

消毒しないと化膿してしまうのでは?

と思った方がいるかもしれません。

確かに、傷に細菌が入り、そこで増殖すると「化膿=感染症」が起こります。

しかし、皮膚の表面にも空気中にも常におびただしい数の細菌がいます

消毒液の殺菌作用で、消毒液を塗ったところだけは細菌が死にますが、その周りの菌や空気中の菌は消毒の直後に傷に付着します

その上からもし絆創膏を貼ったら、絆創膏についていた細菌が付着します。

傷から細菌をゼロにしようと思うと、全身の皮膚や、服や家具などあらゆる持ち物、全ての環境から細菌をゼロにしなければならなくなります

もちろんそんなことは到底不可能です。

 

では、細菌がいつも付着しているならいつも傷が化膿するのか、というとそんなことはありませんね?

細菌が「そこにいる」だけでは、「感染」とは呼ばないからです。

傷が化膿する(感染が起こる)のは、

・怪我をした後に異物(砂や泥、ガラスなど)が残ったままになっていた

・不潔な状態が続いていた

といった、細菌が繁殖する条件が整ったときだけです。

つまり化膿を防ぐには、しっかり洗浄し、清潔にするのが大切だということです

これについては後で詳しく書きます。

 

乾燥させてはいけない

以前は、「傷は乾燥させた方が治りやすい」と信じられていました。

傷が「ジュクジュクする」と良くない、ということで、ガーゼを貼って乾燥させていました

浸出液が固まってガーゼに付着し、はがすたび痛い思いをする、というのをみんなが我慢していたのです。

 

しかし近年(もう10年以上前ですが)、

「湿潤させた方が治りやすい」

が真実であることがわかりました。

最近では、傷に軟膏やワセリンなどを塗り、なるべく湿った環境にしておく湿潤療法(モイストヒーリング)が一般的です。

 

かつては、「傷は消毒して乾燥させてバンドエイド」というのが定番でしたね。

ところが、絆創膏についたガーゼが傷を乾燥させてしまうと治りが悪くなります

絆創膏をつける前に、必ず軟膏をつけて湿った環境にしておくのが大切です。

軟膏は、薬剤の成分ではなく湿潤環境が目的なので、何を使っても構いません。

病院では、ゲンタシン軟膏やアズノール軟膏などを使用しますが、普通のワセリンや市販の塗り薬(オロナインやメモなど)でも問題ありません

こうすることで傷はかさぶたにならず跡が残らずきれいに治ります

とにかく乾燥しないようにすることが、傷を早くきれいに治すコツです。

 

ちなみに、ワセリンをつけてサランラップなどの調理用のラップで覆う「ラップ療法」が推奨されることもあります。

湿潤を維持する一つの方法ではありますが、調理用のラップは通気性が悪く、水蒸気が通りません

傷の表面の温度が上がり、細菌の繁殖を促すリスクがあるため、1日2〜3回の定期的な傷の観察とラップ交換が必要です(かえって少し面倒です)。

 

最近では傷を湿った状態に維持できる絆創膏が販売されています。

傷に付着する部分がゲル状に変化するため、軟膏を使う必要がありません

こういうテープを常備しておく方がおすすめできます。

 

抗生物質は不要

以前(10年以上前)は、傷の治療後は抗生物質(抗生剤、抗菌薬)を処方していました。

最近は、普通のすり傷や切り傷に抗生物質は処方しません

効果が全くないからです。

細菌は、傷の表面にたくさん付着しています。

 

しかし前述の通りこれが付着していることと、増殖して感染を起こしていることは別問題です。

付着しているだけの細菌を殺す意味はありません

抗生物質の副作用で下痢をするなど、デメリットの方がはるかに大きいため、抗生物質は飲まないようにしましょう。

もちろん、すでに感染(化膿)を起こしているケースでは抗生物質が必要になることはあります

その際には、医師の指示のもと適切な治療が必要です(後述します)。

 

何で洗うのが良い?

すり傷や切り傷は、まずしっかり洗浄することが大切です。

何で洗うのが良いのでしょうか?

実は水道水で全く問題ありません

食塩水や滅菌水、蒸留水など特殊な水をつかう必要は全くありません。

病院でも、まずは十分な量の水道水でしっかり洗ってもらいます

食塩水や滅菌水で洗っても害にはなりませんが、特別な水でちょろちょろ洗うと量が不十分で逆効果です。

水道水なら蛇口をひねればいくらでも出るわけですから、一番効率よく洗うことができるのは当然ですね

 

洗う時は、石鹸やボディソープなども不要ですが、泥水などでかなり汚れているときは、清潔にするために石鹸を使用しても構いません。

また、傷の中に砂や土が入っている、ガラスが入っている、といったケースでは、感染リスクが高くなります

流水やタオルだけで除去できなければ、歯ブラシを使うのがおすすめです。

清潔な歯ブラシで優しくこすり、異物が残るのを防ぎましょう。

 

何日おきにテープ交換?

ここまで書いてきたように、すり傷や切り傷を作ったら、以下のような順番で対処することになります。

十分な水道水でしっかり洗う

砂やゴミが付着している場合は、濡らしたタオルや歯ブラシなどでしっかり除去

きれいな状態にしたら軟膏(ワセリンなど)を塗布

絆創膏やガーゼで覆う(覆わなくても良いが、服などに軟膏が付着するのを防ぐ目的)

ガーゼや絆創膏を長期間貼ったままにしていると、徐々に不潔になり、細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます

1〜2日ごとにお風呂でシャワー洗浄し、軟膏を塗りなおしましょう。

ただし、傷の部分は湯船にはつけないようにしましょう。

浴槽にたまったお湯はあまり清潔ではありません。

 

最終的に皮膚が再生し、傷が平らになったら治療を終了しましょう。

治るまでの期間は人によって様々ですが、軽い傷であれば1週間以内に治るでしょう。

 

病院に行く目安と縫う基準

これまでは、自宅でのケアの方法について述べました。

しかし傷が大きいとき、深いときは、

病院に行った方が良い?

と悩むケースもあるでしょう。

病院に行くべき症状は、

出血が止まらない

傷から膿が出ている

傷が大きい・深い

といったものです。

 

傷を縫う基準は一律ではなく、医師によっても判断基準は様々です。

自己判断は難しいので、迷ったら一度受診することをおすすめします。

比較的深い傷だと、縫う方がきれいに治ります。

深さにして2〜3mmを超えるような傷は、縫う方が良いケースが多いため、医師の判断を仰いだ方がよいでしょう。

(傷の長さはあまり問題にならず、長くても浅いものは縫合は不要、短くても深いものは縫合が必要です)

もちろん、ここに書いた方法で対処しているのに傷が治らない1週間以上良くなる気配がない、という時も必ず受診が必要です。

深い部分で感染を起こしていることがあります。

毎日注意して傷を観察しましょう。

 

何科に行くべき?

傷の治療を受けるなら、「◯◯外科」と名のつくクリニックか、病院の救急外来が良いでしょう。

傷の治療は内科、外科を問わずあらゆる科の医師が行えますが、縫合の必要があるケースでは、外科系の医師の方が慣れているため安心です。

傷が膿んでいるケースでは、中に溜まった膿をしっかり出すなど、病院で治療が必要になります。

放置すると感染が広がって悪化します。

必ず病院に行きましょう。

(参考文献)
日本皮膚科学会ガイドライン「創傷・熱傷ガイドライン」

2 Comments

TOM

知り合いの養護教諭から聞いた話ですが、児童の擦り傷の処置を水道水で洗って消毒をしなかったところ、保護者から「消毒しないとは何事だ!」と怒鳴られたケースが何回かあったそうです。
今は水道水を,それらしい瓶に入れて(もちろん日に数回取り換えているそうです)、それで洗うようにしているらしいです。
まあ、騙しているといえばそうなんでしょうけど、嘘も方便だと。。。
常識が変わるまでには軋轢があって大変だなと思ったエピソードでした。

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けいゆう

ありそうな話ですね。
風邪に抗菌薬(抗生物質)や点滴も同じです。
あまり正論を貫こうとすると不信感を持たれる危険性がありますが、かといって正しい医療知識を提供せずに希望に従うのは医療経済的にもマイナスですので、まず正しい知識をきっちり説明するようにしています。私は、「昔はこうでしたが、今は違います」というような言い方をします。
最近はそれでわかってくれる方が多いですね。

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