小林麻央さんの転院に思う、病院をかえる時に注意すべきこと

小林麻央さんについて報道では、初診時には乳がんの可能性はないとされたものの、半年以上経過してから受診した時にリンパ節に転移した進行乳がんが発覚した、とされている。

初診時には乳がんと診断されなかったことに対し、当時麻央さんはブログで

「もうひとつ病院に行けばよかった」

「信じなければよかった」

と語っていたという。

その後、乳がんの治療で入院中に大きな病院を2度転院されていたことも報道された。

もしかしたら治療中も、別の病院でなら今より良い治療が受けられるかもしれない、と思い続けていたのかもしれない。

 

麻央さんの事例については多くが憶測に過ぎないので、それについて具体的に論じることは避けたいと思う。

だが、転院に関する報道が多くされる中で、

「今通院あるいは入院している病院で本当に大丈夫か」

「ほかの病院に行った方がいいのではないか」

不安に思う人がいるのではないかと私は懸念している

 

がんに限らず、かかっている病院やクリニックを何らかの理由でかえたい、別の病院に行ってみたい、と誰しも一度は思ったことがあるのではないかと思う。

「治療がうまくいっていない」

「医師との相性が悪い」

といった不安や不満が原因のこともあれば、

「ほかの医師の意見も聞いてみたい」

という場合もあるかもしれない。

また単に、仕事の都合で転居して別の病院にかかる必要があるケースもあるだろう。

 

今回は、まず最初に「転院することには一定のリスクが伴うということを説明し、それでも転院を希望する場合に注意しなければならないことを次に説明したいと思う。

ここからは、麻央さんの事例とは無関係の一般論として述べる。

 

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転院に伴うリスクとは

「あなたが通院あるいは入院している病院をかえる」ということはつまり、「あなたの今の病状とこれまでの治療経過を一度も見たことがない医師や医療スタッフが、これから初めてあなたを診る」ということだ。

これは一つのリスクである

 

たとえば治療がうまくいっていないと感じて転院を希望するケースだ。

実は「治療がうまくいっているどうか」を、医療の専門家以外が正確に判断することは非常に難しい

怪我やインフルエンザのように、通常数日という単位で良くなる病気の場合は経過の良し悪しが判断しやすい。

だが数ヶ月という単位でゆっくり良くなるような病気は、治療がうまくいっていないのか、非常にゆっくり良くなっている経過を見ているだけなのかを判断するのは困難だ

その判断が適切にできる可能性が最も高いのは、様々な治療の反応を最初から長いあいだ目の前で見てきた医師である。

 

転院すると、この経過を実際に自分の目で見たことがない人が途中から診ることになる、ということを十分理解しておいてほしい。

 

したがって、上記のリスクを負ってもなお転院したい場合は、このリスクを最小限に抑える方法を知っておく必要がある(後述する)。

 

医師との相性が悪い場合、それが治療意欲の低下にもつながるので、転院することのメリットは大きいこともあるだろう。

転居が原因なら、転院したくなくても転院せざるを得ない。

 

そこで次に、転院する際に押さえておくべきポイントを述べる。

担当医に希望を伝えずに通院中の病院をかえたい場合の対応策も後述しているので参考にしていただきたい。

 

診療情報提供書を必ず書いてもらう

診療情報提供書とは、通称「紹介状」と呼ばれる。

紹介状の目的は意外にあまり知られていない。

単に医師同士の挨拶、あるいは初診料を取られないための手形、と思っている人が多いかもしれない。

 

だが実際には紹介状は、適切な治療を行うのに必要不可欠な情報源である。

特に、治療がうまくいっていなかったように見える場合は、むしろ必要性が大きい

 

Aという治療を行って効果が乏しかったことは、逆にBという治療であれば効果が高い、ということを意味することがある。

Aという薬を使って一見効果がなかったように見えても、血液検査の数字が細かく変動していて、それを見てBという薬を併用すれば効果が現れる、と予想できるかもしれない。

 

ところが何も情報がなければ、転院先でも「まずAから」となるかもしれない。

最初に診た医師も、まずAが最適な治療だろうと思って選んでいる可能性が高いからだ。

 

ほかの病院に患者さんを紹介する際は、こうした治療経過を詳細に報告するのが医師の義務である。

患者さんの病状、治療経過、既往歴(これまでかかった病気)、内服薬などを文章にするだけでなく、治療期間中の血液検査やレントゲン、CTなどの画像データをすべてCDロムとして添えて資料を準備する。

手術後の患者さんであれば、詳細な手術記録も合わせて準備することが多い(別の病院で再手術になった際、この手術記録があるかないかでリスクは大きく異なる)。

ほかの病院でかかっていた患者さんが突然自分の外来を受診する、ということは、私も何度も経験したことがある。

その際に最も困惑するのは、前院でどのような治療を受けたのかが全くわからない場合である。

 

ご本人に尋ねても治療内容が全くわからない。

使用した薬がわからない。治療期間もわからない。

とりあえずお薬手帳を見せてもらうが、どういう目的で処方されたものなのか、処方内容を見るだけではさっぱりわからない。

さてどうしたものか・・・。

 

とりあえず、「私から前院に確認しておきます」と告げて、次週もう一度来ていただくよう指示する。

すると患者さんはやや不服げに帰っていく。

当然である。

新しい治療を期待してやってきたのに何もしてもらえず、しかも翌週も来なければならないとなると二度手間だからだ。

そのあと私は前院に電話をかけ、担当の医師を呼び出し、治療内容を問い合わせてようやく納得、となる。

 

「自分の病状くらい自分で説明できる」と思う人がいるかもしれない。

だが失礼を承知で言うが、どういう意図でどういう治療をどのくらいの期間行ったかという情報を、専門知識のない方が自力で伝えるのはきわめて難しい。

それは経験上わかる。

真面目に勉強されている方ほど、自分の解釈が加わる分むしろ説明がわかりにくいこともある。

治療経過の説明は、その治療にたずさわった医師に任せた方が確実で、その方が転院先でもより適切な治療が受けられる可能性が高い。

 

「紹介状の作成を断られたらどうしよう」と心配する必要は全くない。

医師に「ほかの病院で治療をしたい」「ほかの医師の意見を聞きたい」と正直に伝えれば、あえて依頼しなくても紹介状を書いてくれる。

それが医師の常識だからだ。

 

ちなみに、「セカンドオピニオン」といってほかの病院の医師の意見をきくことのできるシステムがどこの病院にもある。

「セカンドオピニオン外来」という専用の外来を用意している病院も多く、希望すればスムーズに受け入れてもらえるだろう。

その際も、担当の医師に「A病院のセカンドオピニオン外来を受診したい」と申し出れば、上述のように詳細な紹介状を書いてもらえる(むろんセカンドオピニオンだけであれば、ほかの医師の意見を聞くだけなので転院には該当しない)。

 

だが、医師との相性が悪かった場合など、担当の医師に転院の希望を告げずにこっそり転院したいというケースもあるだろう。

そのケースについてはどうすれば良いかを次に述べる。

 

紹介状なしで転院する場合

仮に医師との相性が悪かったとしても、できる限り紹介状の作成を依頼することをおすすめしたい。

だが何らかの理由でそれができない場合は、自力で治療経過をできる限り細かく伝えられるよう準備して受診するようにしたい

 

「私の体を診察すれば有能な医師ならそのくらいわかるだろう」

と思うかもしれないが、仮にそのくらい有能な医師がいたとしても、それまでの治療経過がどうであったかは、たった1回の名医の診察で得られる情報の何百倍、いや何千倍もの価値のある情報である。

 

さてそこで転院前に準備すべきポイントだが

 

何と診断されたか

どのような検査を行ってどのような結果だと伝えられたか

どのような治療を行ったか

何という名前の薬をどのくらいの分量使ったか

その治療をいつからいつまで行ったか(日付まで詳細に)

その治療中に症状がどのように変化したか(体温の変化など細かい点まで)

 

これらを、可能な限りメモしてから行くのが望ましい。

そして治療中にもらった血液検査などの資料があるなら、必ずそれを持参する

準備なしで行っても上記のことは必ず尋ねられるが、事前に思い出しておかなければ突然答えるのは難しいからだ。

 

医師がポイントを絞って伝えられる紹介状に比べれば幾分情報の質は落ちるものの、これらの情報があれば、より適切な医療が受けられる可能性が高いだろう。

 

まとめ

繰り返しになるが、最後にまとめておく。

まず転院を希望する場合は、転院には一つのリスクがあることを理解のうえ、本当に転院が適切かを今一度考えること。

転院を希望するなら、必ず診療情報提供書(紹介状)を作成してもらうこと。

それが不可能であれば、できる限り自力で治療内容を説明できるよう事前にまとめてから受診すること。

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