横向き寝でも治らない「いびき」はなぜ危険か?原因と治し方を徹底解説

いびきで困っている方は多いのではないでしょうか?

私の外来でも、

夫(パートナー)のいびきがうるさい

自分のいびきのせいで一緒に旅行に行く友人に気を遣う

十分に睡眠をとったにもかかわらず、日中の強い眠気で仕事に集中できない、会議中に寝てしまう

といった悩みを相談される方がいます。

 

いびき対策には様々なものがありますが、その中で最も簡単で試してみるべきなのは、

「横向きに寝る」

という方法です。

寝方を変えるだけですから、これが最も簡単で最も即効性のある方法と言えます。

ところが、

「横向きに寝ているのにいびきが治らない、うるさい」

という方が実は少なくありません。

横向きに寝てもいびきが治らない原因とは何でしょうか?

 

今回はいびきの原因をまとめた上で、いびきが横向きに寝ても治らない時の対処法について解説してみます。

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そもそもなぜ横向きに寝るべきか?

いびきは、咽頭(のど)の空気の通り道が狭くなり、そこを空気が通過する際にのどが振動して出る音のことです。

眠っている時は、のどを支えている筋肉がゆるむため、誰しも空気の通り道が狭くなります。

特に、いびきの大きな原因の一つとして「あおむけ寝」があります。

あおむけに寝ると、舌が喉の奥に落ち込むなどで、空気の通り道が狭くなりやすいためです。

あおむけ寝が原因なら、横向きに寝るだけでのどを空気が通りやすくなり、いびきをかかなくなります

ところが、実は横向きに寝ているつもりなのにいびきが治らない、という人が多くいます。

なぜなのでしょうか?

 

その原因は、以下の3点に集約されます。

①横向きに寝ているが、その姿勢が悪い

②横向きに寝ているつもりだが、自然に仰向けに戻っている

③寝る姿勢以外に、空気の通り道を狭くする他の原因がある

①、②であれば、解決策は「正しい方法で横向き寝を強制する」ということになります。

③であれば、あおむけ寝以外のいびきの原因を探らなければなりません。

 

正しい横向き寝とは?

横向きに寝ていても、頭から背骨のラインが直線的でないと、のどの空気の通り道は狭くなります

首が曲がって空気の通り道が広くなっていないケースは多く、あおむけに寝るよりいびきがひどくなる人すらいます。

まずは枕の高さを適切なものに変え、首が曲がらずに横向き寝ができているかどうか確認しましょう。

ちなみに私は、百貨店にある睡眠サロンで頚椎(首の骨)の角度と長さを測定し、百種類以上から選んだベストな枕を約15年使用しています

 

ただし、普段からあおむけで寝る人にとっては、横向きに寝ることがそもそも苦痛です。

こういう人は、横向きに寝たつもりが、必ず無意識に仰向けに戻ってしまって結局いびきをかいています。

この場合は、横向き寝を強制できる「いびき対策専用の枕」に変えるのが良いでしょう。

この枕は高さ調整も可能で、気道が開きやすいような構造になっています。

適切な姿勢で横向き寝を矯正できるため、非常に便利な商品です。

 

良い枕は値段がかなり高いですが、自分に合ったベストな枕は長期間使えます。

また、寝る姿勢を変えるだけでいびきが軽くなる人にとっては、他のどんな方法よりも即効性があるため、コストパフォーマンスは高いと言えます。

「横向き寝専用まくら」のページへ

 

他のいびきの原因とは?

姿勢を変えるだけでいびきが改善しない人は、他にいびきの原因があります。

中には非常に危険で、早急な治療が必要な病気が隠れていることもあるため、注意が必要です。

その原因を、以下にリストアップします。

飲酒

睡眠薬

肥満

口呼吸

扁桃が大きい

舌が大きい

上気道の炎症(鼻炎や咽頭炎など)

鼻中隔湾曲症や副鼻腔炎など鼻の病気

顎の骨が小さい

まず、肥満はいびきの大きな原因の一つです。

肥満の人は首回りの脂肪によって空気の通り道が狭くなっているため、いびきが起こりやすくなります

また、飲酒睡眠薬使用が習慣になっている人は、これがいびきの原因になっていることがあります(理由は後述)。

咽頭扁桃(アデノイド)口蓋扁桃(いわゆる「扁桃腺」)が大きい人や、風邪を引いた時などに扁桃が大きく腫れる人はこれが空気の通り道を邪魔します。

ちなみに「扁桃」とは、「アーモンド」の日本語名です。

のどの奥にある免疫に関わるリンパ組織で、アーモンドのような形をしていることからそう呼ばれています。

 

舌が大きい(巨舌)人も同じく、寝ている時に舌が気道を塞ぎ、いびきの原因になります。

また口呼吸で扁桃炎や気道の炎症を起こしやすくなり、これがいびきの原因となっていることもあります。

アレルギー性鼻炎副鼻腔炎鼻中隔湾曲症(鼻の骨が曲がった状態)による「鼻づまり」もいびきの原因です。

また、そもそも日本人は下顎が小さいため、ここに挙げた軽い要因でもいびきをかきやすいと言われています。

 

なぜいびきを放置してはいけないのか?

いつもいびきをかいている人は、熟睡しているようでも眠りが浅くなっていたり不安定になっているため、慢性的な睡眠不足に陥っています。

睡眠不足は日常生活に支障をきたします。

仕事中や会議中に眠ってしまったり、運転中に眠ってしまって事故の原因になります

 

また、睡眠時無呼吸症候群(詳細は後述します)は高血圧、糖尿病、動脈硬化など生活習慣病発症とその悪化の原因になります

いびきの多くは肥満が原因です。

肥満の人は生活習慣病のリスクがもともと高いため、ひどいいびきはさらに危険性を高めます。

早めの診断と治療が必要です。

 

ではどのように対処すれば良いのでしょうか?

上記のリストの中で当てはまる項目を念頭に入れて、いびき対策をしていくことになります。

 

いびきの治療、対処法

上述のリストを踏まえて、順に対処法、治療法を説明します。

 

マウスピースを装着する

いびき防止用のマウスピースを装着する方法があります。

「スリープスプリント」とも呼ばれています。

これによって下顎が前に出た状態で固定でき、気道が開きやすくなります。

 

お酒を控える

寝る前の深酒はいびきを悪化させます。

首回りの筋肉がさらにゆるみ、気道が狭くなりやすいからです。

毎日晩酌をするような人は、これを控えることでいびきが改善することもあります

 

睡眠薬の内服を見直す

睡眠薬を毎日たくさん飲んでいる人は、これが原因のこともあります。

一度医師に相談し、内服薬の調整を依頼しましょう

原因にもよりますが、一般的に不眠の専門は精神科です。

 

肥満を改善する

肥満のある人は、上述した方法を使ってもいびきが治らないことも多いでしょう。

よって同時にダイエットに取り組む必要があります

消費カロリーを抑え、適度な運動を心がけましょう。

また、肥満の人の中にはお酒が好きな人が多いはずです。

前述した通り飲酒がいびきを悪化させますので、なるべく控えましょう。

後述しますが、睡眠時無呼吸症候群の大半は肥満が原因です。

 

鼻呼吸を行う癖をつける

口呼吸がいびきの原因となります

夜間だけでなく日中も口呼吸が癖になっている人がいます

一度自分で意識して確認し、鼻呼吸を行う癖をつけましょう

鼻腔を広げたり口を閉じたりして鼻呼吸しやすくするマスクやテープなどのいびき防止グッズも多くあります

これらは、いびきの原因によっては効果を感じる人と、全く効果を感じられない人がいます

特に肥満の人や、耳鼻科的な病気に原因がある人はマスクやテープではほとんど効果が得られませんので、注意してください。

 

原因となる病気を治療する

咽頭扁桃(アデノイド)口蓋扁桃がもともと大きい人は、これが空気の通り道を邪魔して、のどが狭くなっていることがあります。

風邪を引いた時などに「いつも扁桃腺がひどく腫れて痛い」という人は、この治療がいびきの改善につながる可能性があります

治療は、扁桃を手術で切除するものです。

扁桃は切除しても大きな問題はなく、むしろ痛みやいびきの原因となるほど大きいものは切除すべきです。

 

同じように軟口蓋(いわゆる「のどちんこ」)が大きいこともいびきの原因になります。

これも必要であれば手術で切除します。

他にも副鼻腔炎(いわゆる「ちくのう」)や鼻中隔湾曲症も主に手術で治療します。

鼻炎などで慢性的に鼻づまりがある人は、寝る前の吸入薬や、点鼻薬、飲み薬の使用によっていびきが改善することもあります。

これらの病気が原因のときは、この治療が優先されます。

 

何科にかかるべきか?

扁桃が大きい、副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症、鼻炎など、鼻や口に原因がある場合は、全て耳鼻咽喉科が専門です。

手術も全て、耳鼻科医が行います

 

一方、原因が極度の肥満であるものや、睡眠時無呼吸症候群を起こしている場合は、呼吸器内科が適切です。

自分では何がいびきの原因なのかわからない!

という方も多いかもしれません。

こういう方は「いびき外来」「無呼吸外来」など専門外来のある病院に行く方法もあります。

あるいは、かかりつけの開業医の先生に相談し、診察を受けて適切な病院へ紹介状を書いてもらうのも良いでしょう。

 

では次に、睡眠時無呼吸症候群について解説していきます。

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睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

「睡眠時無呼吸症候群」の名前は誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。

しかし、実際どういう状態になれば「睡眠時無呼吸症候群」なのか?

よく分かっていない方も多いと思います。

 

睡眠時無呼吸症候群とは、

睡眠中に息が止まることを何度も繰り返し、これによって様々な健康上の問題が引き起こされる病気

のことです。

男性の3〜7%女性の2〜5%に見られるとされています。

男性は40〜50歳代が半数以上を占め、女子は閉経後に増加します

ひどいいびきが特徴です。

 

睡眠時無呼吸症候群の原因は?

上述したいびきの原因と同じです。

やはり最大の原因は肥満です。

また、いびきの原因となる他の病気、つまり扁桃が大きい、鼻炎、副鼻腔炎といった耳鼻科の病気も睡眠時無呼吸症候群の原因となります

これらが原因のケースでは、やせた方でも睡眠時無呼吸症候群になります。

また、単に下顎が小さいことが原因というケースもあります。

 

睡眠時無呼吸症候群の症状は?

ひどいいびきをかき、突然発作的に息が止まることを繰り返します。

家族が見ても息が止まっているのが分かります。

これによって、十分な時間睡眠を取っているにもかかわらず眠りが極度に浅いために、毎日のように日中に眠気を感じます

 

日中の眠気は、昼食後などに誰しも経験したことはあるでしょう。

ところが睡眠時無呼吸症候群の眠気は、運転中、会議中、会話中に至るまで、どんな場面でも激しい眠気に襲われ眠ってしまうのが特徴です。

居眠り運転など、社会生活に大きな支障をきたす恐れがあります。

またいびき以外の特徴的な症状に夜間の頻尿朝起きた時の頭痛があります。

頻尿は40%、頭痛は35%の人に起こる、比較的よくある症状です。

 

どうやって診断するか?

家族がいる人は、家族からひどいいびきを指摘されて判明します。

また、一人暮らしの方でも上述した症状に当てはまる人は呼吸器内科を受診する必要があります。

携帯型の特殊な装置を使って、睡眠中に呼吸が何回止まるかを調べる検査を行います。

1時間あたりの無呼吸、低呼吸(浅い呼吸)の回数が5回以上で、かつ上記の症状がある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断します。

また、この1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数によって以下のように重症度が決まります。

5〜15回:軽症

15〜30回:中等症

30回以上:重症

 

なぜ治療が必要?

上述した通り日中の眠気が生活に支障を来たしますが、危険な理由はそれだけではありません。

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や脳卒中(脳梗塞や脳出血)、心筋梗塞などを引き起こす危険性が3〜4倍高くなるとされています。

また、無呼吸回数が1時間あたり20回以上の人はそうでない人より死亡率が高く30回以上の重症の人は、心血管系疾患発症の危険性が約5倍にもなるとされています。

したがって、疑いがあれば早期の診断・治療は必須です。

 

どうやって治療するか?

無呼吸回数が20回以下のケースでは、まず上述した様々ないびき対策や治療を行うことになります。

特に多い肥満の方は、生活習慣の改善と減量が必須です。

 

一方無呼吸回数が1時間に20回以上で、日中の眠気などの症状があれば、精密検査を行った上で「経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)」と呼ばれる治療を行います。

これは、眠っている間に鼻にマスクをつけて空気を口に送り込むことで気道を広げる方法です。

これによっていびきの原因となるのどの狭さが改善され、上述した危険な合併症のリスクが下がり、死亡率が健常人と同等まで低下することがわかっています。

 

いきなり自宅で導入するのが難しい場合は、一度入院してCPAPのトレーニングをするよう指示されることもあります

そして定期的に通院し、効果を確認しながら継続します。

マスクによる不快感や痛みなど、困った症状があればマスクの種類や機械の設定を変えることで対応します。

機械はレンタルで、もちろん保険が効きます。

専門は呼吸器内科です。

 

小児の睡眠時無呼吸症候群は、肥満以外にも口蓋扁桃や咽頭扁桃が原因となっていることが多くあります。

その際は上述の通りこれらを切除する手術を行います。

 

帝人在宅医療が行なったアンケート調査では、夫のいびきが原因で別室で寝たことがある妻は47%もいるそうです。

その一方で、約8割が夫のいびきを病気と考えず、受診や対策を促したことがないというデータがあります。

本人が病的な症状に気づいていない場合は、家族の指摘が必要です。

早めに対策を取るようにしましょう。

(参考文献)
循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
日本呼吸器学会 呼吸器Q&A

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医師。専門は消化器外科。二児の父。
ブログ開設4ヶ月後に月間67万PV達成
時事通信社医療情報サイト「時事メディカル」
「教えて!けいゆう先生」のコーナーで定期連載中。
エムスリーでも連載中&「LIFESTYLE」企画・監修。
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横向き寝でも治らない「いびき」はなぜ危険か?原因と治し方を徹底解説」への4件のフィードバック

  1. モリモツガリツ

    初めてコメントをつけさせていただきます。
    神経心理学を専門とする(つもりの)心理士をしています。

    睡眠時無呼吸症候群の診断には脳波の測定も必要であり、それを考えると神経内科が専門とする診療科ではないでしょうか?(もちろん、治療は呼吸器内科、耳鼻科などのチームで行う必要があるように思います)

    返信
    1. keiyou 投稿作成者

      モリモリガリツさん
      コメントありがとうございます!
      おっしゃる通り、SASの検査には神経内科の介入が必要なこともあります。
      ただ、SASの専門は、というと間違いなく呼吸器内科でしょう。
      朝倉やハリソンなどあらゆる内科学の教科書で、SASは呼吸器疾患として扱われ、神経疾患として扱われることはありません。
      私の身内にも呼吸器内科医がいますが、SASの専門は呼吸器じゃなくて神経、と言うと叱られそうです笑
      もちろんご指摘の通り、治療は様々な科の介入を得て総合的に行うことが必要ですね。

      返信
      1. モリモツガリツ

        たしかにCPAPが治療のメインとなると呼吸器内科かもしれませんね。

        ただそれ以前の診断、特に睡眠ポリグラフ(もちろん、脳波の測定を含む)は神経内科が専門とする領域のようにおもいます。
        理想は神経内科で診断、耳鼻科で外科的治療、呼吸器内科でCPAPという具合にメインとなる診療科が交代するのがいいかもしれませんね。

        ちなみに、神経内科のDrが睡眠時無呼吸症候群について書いてる「極論で語る睡眠医学」という本もあります

        返信
        1. keiyou 投稿作成者

          モリモツガリツさん
          おっしゃる通りですね。
          河合真先生はむしろ睡眠医学のプロフェッショナルですからSASにとどまりませんよね〜。

          返信

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