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睡眠時無呼吸症候群かも?重度のいびきと日中の眠気には注意

前回の記事で、いびきの原因や対処法について述べました。

実は重度のいびきに悩まされている方が、「睡眠時無呼吸症候群」と診断されることもあります。

一体どういう病気なのでしょうか?

分かりやすく解説します。

 

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

「睡眠時無呼吸症候群」の名前は誰もが一度は聞いたことがあるでしょう。

しかし、実際どういう状態になれば「睡眠時無呼吸症候群」なのか?

よく分かっていない方も多いと思います。

 

睡眠時無呼吸症候群とは、

睡眠中に息が止まることを何度も繰り返し、これによって様々な健康上の問題が引き起こされる病気

のことです。

男性の3〜7%女性の2〜5%に見られるとされています。

男性は40〜50歳代が半数以上を占め、女子は閉経後に増加します

ひどいいびきが特徴です。

 

睡眠時無呼吸症候群の原因は?

上述したいびきの原因と同じです。

やはり最大の原因は肥満です。

また、いびきの原因となる他の病気、つまり扁桃が大きい、鼻炎、副鼻腔炎といった耳鼻科の病気も睡眠時無呼吸症候群の原因となります

これらが原因のケースでは、やせた方でも睡眠時無呼吸症候群になります。

また、単に下顎が小さいことが原因というケースもあります。

 

睡眠時無呼吸症候群の症状は?

ひどいいびきをかき、突然発作的に息が止まることを繰り返します。

家族が見ても息が止まっているのが分かります。

これによって、十分な時間睡眠を取っているにもかかわらず眠りが極度に浅いために、毎日のように日中に眠気を感じます

 

日中の眠気は、昼食後などに誰しも経験したことはあるでしょう。

ところが睡眠時無呼吸症候群の眠気は、運転中、会議中、会話中に至るまで、どんな場面でも激しい眠気に襲われ眠ってしまうのが特徴です。

居眠り運転など、社会生活に大きな支障をきたす恐れがあります。

またいびき以外の特徴的な症状に夜間の頻尿朝起きた時の頭痛があります。

頻尿は40%、頭痛は35%の人に起こる、比較的よくある症状です。

 

どうやって診断するか?

家族がいる人は、家族からひどいいびきを指摘されて判明します。

また、一人暮らしの方でも上述した症状に当てはまる人は呼吸器内科を受診する必要があります。

携帯型の特殊な装置を使って、睡眠中に呼吸が何回止まるかを調べる検査を行います。

1時間あたりの無呼吸、低呼吸(浅い呼吸)の回数が5回以上で、かつ上記の症状がある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断します。

また、この1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数によって以下のように重症度が決まります。

5〜15回:軽症

15〜30回:中等症

30回以上:重症

 

なぜ治療が必要?

上述した通り日中の眠気が生活に支障を来たしますが、危険な理由はそれだけではありません。

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や脳卒中(脳梗塞や脳出血)、心筋梗塞などを引き起こす危険性が3〜4倍高くなるとされています。

また、無呼吸回数が1時間あたり20回以上の人はそうでない人より死亡率が高く30回以上の重症の人は、心血管系疾患発症の危険性が約5倍にもなるとされています。

したがって、疑いがあれば早期の診断・治療は必須です。

 

どうやって治療するか?

無呼吸回数が20回以下のケースでは、まず上述した様々ないびき対策や治療を行うことになります。

特に多い肥満の方は、生活習慣の改善と減量が必須です。

 

一方無呼吸回数が1時間に20回以上で、日中の眠気などの症状があれば、精密検査を行った上で「経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)」と呼ばれる治療を行います。

これは、眠っている間に鼻にマスクをつけて空気を口に送り込むことで気道を広げる方法です。

これによっていびきの原因となるのどの狭さが改善され、上述した危険な合併症のリスクが下がり、死亡率が健常人と同等まで低下することがわかっています。

 

いきなり自宅で導入するのが難しい場合は、一度入院してCPAPのトレーニングをするよう指示されることもあります

そして定期的に通院し、効果を確認しながら継続します。

マスクによる不快感や痛みなど、困った症状があればマスクの種類や機械の設定を変えることで対応します。

機械はレンタルで、もちろん保険が効きます。

専門は呼吸器内科です。

 

小児の睡眠時無呼吸症候群は、肥満以外にも口蓋扁桃や咽頭扁桃が原因となっていることが多くあります。

その際は上述の通りこれらを切除する手術を行います。

 

帝人在宅医療が行なったアンケート調査では、夫のいびきが原因で別室で寝たことがある妻は47%もいるそうです。

その一方で、約8割が夫のいびきを病気と考えず、受診や対策を促したことがないというデータがあります。

本人が病的な症状に気づいていない場合は、家族の指摘が必要です。

早めに対策を取るようにしましょう。

(参考文献)
循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン
日本呼吸器学会 呼吸器Q&A