今月上旬から中旬にかけて、医療従事者を目指す中高生や看護学生を対象に、進路に関するチャット相談会を実施しました。
医師や看護師などの医療従事者を志望するなら、一般的には高校卒業時点で将来の職業まで決めなくてはなりません(社会人になってから再受験を目指すことも可能ですが)。
しかし、弱冠17〜18歳で人生の青写真を描くことは決して簡単ではありません。
特に医学部入試は狭き門で、もし高校3年の夏頃に「医師になりたい」とふと思ったとしても、それまで全く準備をしていなかったら受験勉強はなかなか間に合いません。
一方で、高校3年の時点で成績が良かったことを理由に漠然と医学部を志望し、医師になってから自分の思い描いていた将来像とのギャップに悩む人もいます。
やはり中高生の段階で医療現場で働く人に直接質問でき、容易に現場を知ることができる仕組みが必要なのではないか。
私は以前からそう考えています。
今回はその実験的な意味合いで、Twitterを通して私に直接質問したい中高生を募集したところ、短時間に多くの方から返信がありました。
今回は、こうした企画を通して私が感じたことを書いておきたいと思います。
具体的に将来を思い描いている人が多い
まず、私自身の中高生時代と比べると、将来像をかなり具体的に描いている人が多いことに驚きました。
もちろんこれは、SNSで医療者をフォローし、積極的に情報収集しようとしている方に回答者が限定されているから、ということもあると思います。
私が中高生の頃はSNSなどなく、ネットで医療者が発信する情報を受け取って学び将来に生かす、という発想はありませんでした。
今ではこうしたツールを利用し、医療現場のリアルな声を知った上で進路を決めよう、と考える中高生が多いのだと痛感しました。
例えば、医学部志望の中高生の中には、外科や救急部など志望する科をすでに決めていたり、勤務したい病院を決めていたり、といった方も結構います。
また、
「科によってワークライフバランスはどう違うか?」
「女性はどのくらいの割合を占めているか?」
といった点を疑問に思っている方もいました。
こういった点を事前に考えておくことは非常に重要ですし、私も感心したポイントでした。
ただ、志望科は、大学で様々な領域を学ぶ中で、あるいは研修医になって各科の事情を知る中で変わる可能性が高いと考えた方がいいでしょう。
中高生は、各科の仕事内容や雰囲気を、医療ドラマなどのテレビ番組や漫画、小説などからイメージしていると思いますが、実際の現場を見ると印象はかなり変わります。
また医学の勉強をすると、学問として興味を持てる分野に進みたいという思いも生まれます。
具体的な将来像を描くことは一つの大きなモチベーションにはなりますが、医師の場合は、具体的な勤務のことは現場に出てから決める、というくらいで十分でしょう。
(もちろん看護師であっても、実習を経てから働きたい部署を決める、という流れで十分問題ないと思いますが)
医師を目指すには何をすればいいか?
医師を目指すために中高生の時点でしなければならないことは何か?
こういう質問も多かったのですが、これについては「受験勉強以上に必要なことはあまりない」と私は思います。
もちろん、前述の通り自分に向いた職業かどうか、情報収集しておくことも大切です。
しかし、医師への道において最も大きな関門は医学部入試です。
医学部合格のためには、早い段階から厳しい受験戦争に身を置く必要があり、医学部入試を想定した勉強を早くから始めておくことが最も大切です。
医学部合格に求められる能力(ペーパーテストで高得点をとること)と、実際に医師になってから求められる能力は異なる、という矛盾はありますが、今の受験制度ならやむを得ないでしょう。
具体的にどんな勉強が必要か、については、通っている中学・高校の体制次第です。
中高一貫の進学校で、かつ学校が積極的に補習等で受験をサポートしてくれるのか、中高一貫校だが塾との併用が必要なのか、あるいは公立中高なのか、といったことですね。
そして高校の合格実績によっても現実的に狙えるラインは変わってきます。
この辺りは個別に相談に応じたポイントです。
学歴によって差はあるのか?
医師を目指す中高生から、
「学歴によって行ける病院は変わるのか?」
「学歴によって医者人生で大きな差はあるのか?」
といった質問もありました。
以下の記事でも書きましたが、私は出身大学と医師の臨床能力はあまり関係がないと思っています。
ホームページの医師のプロフィールを見る時に注意すべき3つのポイント勤務を希望する病院への採用が出身大学によって左右されるという話もありません。
大学関連病院はたくさんありますが、そこで働く医師の出身大学は多種多様です。
受験する大学の選び方は、自分の成績で選ぶ、地域で選ぶ、校風で選ぶ、あるいは金銭的なコストを考慮して選ぶ、など人によってさまざまです。
志望大学を決める時点で勤務先まで考える必要は全くないでしょう。
私の場合は、高校の時に見学に行ったキャンパスの雰囲気が非常に気に入り、「ここで大学生活を送りたい」と強く思ったのが志望大学を選択するきっかけでした。
こうした思いは一つのモチベーションにもなるので、中高生には大学見学をオススメしています。
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看護師志望の方の悩み
看護師を志望する方は、私が看護師ではなく医師なので、「現場で医師から看護師がどう見られているか」という観点からの質問が多かったように思います。
例えば、
「医師から見て優秀な看護師とはどんな看護師か?」
「短大に行くつもりだが、大卒の看護師と医師から見てどう違うか?」
といった質問を複数いただきました。
医師にとっては、一緒に働く看護師がどういう大学を卒業しているか、あるいは短大を卒業しているか、ということを意識することはありません(少なくとも私は)。
患者さんに対して適切な看護ができ、患者さんや患者家族から必要な情報が適切なタイミングで聴取でき、病状の変化などを観察し臨機応変に対応できているか、といった、現場での動きを見ることはあります。
しかし、それを看護師になるまでのキャリアと結びつけて考えることはありません。
もちろん看護師間の人間関係や、あるいは短大で学生実習を短期間で行うことの大変さは看護師の先輩に聞くしかなく、私が力になれない部分ですが・・・。
今回は、こういう形で中高生の悩みを聞き、医師として学ぶところも多かったように思います。
希望者がいれば、同様の企画を今後もやってみたいと考えています。