子供の解熱剤や痛み止めは、大人と同じものを使ってもいいの?
子供が熱を出した時は解熱剤を使った方がいいの?
子供に解熱剤を使ったけど全然効かない、大丈夫?
子供用の解熱剤として、飲み薬と座薬をどのように使い分ければいい?
こういった疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
今回は、子供に解熱鎮痛薬を使う際の疑問に全てお答えしたいと思います。
まず最初に、子供に解熱剤や痛み止めを使う時はどんな薬を選べば良いのか、わかりやすく解説します。
次に、子供が熱を出した時に解熱剤を使うべきかについて解説し、最後に飲み薬と座薬をどう使い分けるかについて解説します。
なお、解熱剤と痛み止めを一緒に説明するのは、これらが同じ薬が持つ二つの効果だからです。
よって一般的に「解熱鎮痛薬」と呼ばれています。
「熱冷まし」と「痛み止め」は同じ薬のことを指すということです。
詳しくは以下の記事でも解説していますので、参考にしてみてください。
目次
解熱鎮痛薬には2つの種類がある
解熱鎮痛剤はまず、大きく以下の2つの種類に分けることができます。
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
・アセトアミノフェン
先に結論を書いておくと、子供に使うのはアセトアミノフェンの方で、非ステロイド性抗炎症薬の方は原則使いません。
理由は後述します。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)
大人がよく用いる解熱鎮痛薬で代表的なのが、非ステロイド性抗炎症薬です。
ロキソニン、ボルタレン、イブプロフェン、インドメタシン、セレコックスなどがこの種類の薬です。
市販されていて簡単に手に入るものもありますし、頭痛や生理痛、歯の痛み、腰痛、関節痛などあらゆる痛みによく効く便利な薬です。
市販されている多くのかぜ薬にも含まれています。
繰り返しますが、こちらのタイプは子供に使わないのが原則です。
アセトアミノフェン
同じくよく用いる解熱鎮痛薬のもう一つの代表的な存在として、アセトアミノフェンがあります。
カロナール、アルピニー、アンヒバ、ピリナジンなどがこのタイプに含まれます。
お子さんをお持ちの方は、必ず一度は聞いたことがあるはずです。
これらは上述した非ステロイド性抗炎症薬とは全く別の薬です。
解熱鎮痛効果は比較的マイルドですが、副作用も軽いものが多く、小児にもよく使われるタイプの薬です(もちろん大人にも使います)。
また、妊娠中や授乳中でも使用できます。
子どもに使うのはアセトアミノフェン
小児にも安全でよく用いるのは、アセトアミノフェンの方です。
非ステロイド性抗炎症薬は小児には使用しないのが原則です。
なぜでしょうか?
理由は2つあります。
一つ目は、非ステロイド性抗炎症薬には注意すべき副作用が多いことです。
代表的なものとしては、胃潰瘍・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)、腎障害、アスピリン喘息、アレルギーが挙げられます。
大人であればすぐに受診できますが、子供は自分で症状をうまく説明できないため、副作用が発生した時に受診が遅れるリスクがあります。
もう一つの理由は、発熱時に解熱剤として使用する際、インフルエンザ脳症やライ症候群のリスクがあることです。
インフルエンザの際に子ども(15歳以下)に非ステロイド性抗炎症薬を用いると、インフルエンザ脳症を起こすリスクがあるとされています。
けいれんや意識障害が起こり、死亡率が高く後遺症が残ることもある危険な脳の病気です。
インフルエンザで高熱が出た時に、15歳以下の非ステロイド性抗炎症薬の使用は禁止です。
またライ症候群は、15歳以下のインフルエンザや水痘(水ぼうそう)のあとに起こる急性の脳と肝臓の障害です。
重篤化すると死亡することもある危険な病気です。
非ステロイド性抗炎症薬は、このライ症候群を誘発するとされており、やはり使用は禁止です。
「インフルエンザじゃなく、普通の風邪の時は使ってもいいのでは?」
と思う方がいるかもしれませんが、私は反対です。
普通の風邪だという確証を得る方法がないためです。
インフルエンザの検査は万能ではありません。
インフルエンザ迅速検査の感度(インフルエンザであるときに「陽性」と出る確率)は62.3%です(※)。
つまり、実際にはインフルエンザであっても37.7%は検査結果が陰性になるということです。
「インフルエンザの検査が陰性=インフルエンザではない」とは全く言えないということです。
したがって、「子どもに使うならアセトアミノフェン」と覚えておくのが無難です。
市販のかぜ薬のほとんどは、非ステロイド性抗炎症薬かアセトアミノフェンのどちらかの解熱鎮痛薬が含まれています。
使用年齢を見れば間違えることはありませんが、買う前には念のため成分も確認しておきましょう(子供用のかぜ薬は全てアセトアミノフェンのはずです)。
ただし、これらはあくまで原則です。
イブプロフェンやボルタレンなどは、小児用の容量設定もあります。
小児科医の指示のもとで、これらを使用することは、ないわけではありません。
解熱剤はそもそも使っていいの?
子供が熱を出して解熱剤を使ったけれど全然効かない、すぐに熱が上がってくる、といって病院に来られる方はたくさんいます。
高い熱が出ても、元気そうであれば無理に下げる必要はありません。
解熱剤は一時的に熱を下げる効果しかなく、発熱の原因を根本的に治療する薬ではありません。
また、効果はせいぜい2〜3時間程度ですので、一時的に熱が下がってもすぐに上がってくるのが普通です。
元気で水分が摂れている、ぐったりしていない、という状況ならむやみに心配する必要はないでしょう。
(もちろん、水分が摂れずぐったりしている時は迷わず病院に連れて行きましょう)
私自身は、自分の子供が熱で辛そうな時はよく解熱剤を使っています。
熱が一時的にでも下がると元気になり、水分が摂れたり、ご飯が食べられたり、短時間でも睡眠がとれたりする効果は大きいからです。
使うタイミングとしては、38〜38.5℃以上の体温の時を目安とし、6時間以上の間隔をあけて、1日2〜3回までの使用としましょう。
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座薬にすべきか飲み薬にすべきか?
原則は使いやすい方を選べば良く、「どちらか一方でなくてはならない」ということはありません。
ただし、それぞれに「使いにくいケース」があるので、以下のような使い分けがおすすめです。
飲み薬が使いにくいケース
嘔吐が目立つ場合です。
小児は風邪をひいて嘔吐することもあれば、胃腸炎で熱と嘔吐が出ることもあります。
こういうケースは、飲み薬を飲んでも吐いてしまう可能性があり、効き目が得られません。
この場合は座薬の方が便利でしょう。
もちろん乳幼児はそもそも口から薬を飲ませること自体が難しいため、多くは座薬を選びます。
座薬が使いにくいケース
下痢が目立つ場合です。
風邪をひいて下痢をしたり、胃腸炎を起こして下痢をしているケースでは、座薬を使ってもすぐに下痢と一緒に出てしまうことがあります。
この場合は飲み薬の方が適しています。
以上が、子どもに解熱鎮痛薬を使うときの注意です。
もちろんここに書いたことはあくまで一つの目安です。
困ったときは、ネットの情報を鵜呑みにせず、必ず小児科を受診してください。
(参考文献)
Yearnote2016/MEDIC MEDIA
小児の薬の選び方・使い方 第3版/南山堂
Chartrand C, et al. Accuracy of rapid influenza diagnostic tests: a meta-analysis. Ann Intern Med. 2012;156(7):500-11
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