ひと口に「胃がん」といっても、その中にはさまざま種類のものがあります。
進行が速いもの、抗がん剤がよく効くもの、再発率が高いもの、胃を全部摘出する手術をしなくてはならないもの、内視鏡治療で治ってしまうもの・・・
適切な治療を行うためには、胃癌を一様に捉えるのではなく、特徴によってきっちり分類する必要があります。
よく用いる分類方法は3つあります。
進行度分類、組織型分類、肉眼型分類です。
進行度分類
進行度分類は、「ステージ分類」とも言います。
「ステージ」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
胃癌の場合は、ステージⅠAからⅣまで、実に8段階に細かく分かれています。
どのくらい癌が進行しているか、を示す指標です。
それぞれのステージに応じて、治療法や再発率などが異なるため、非常に大切な分類です。
組織型分類
胃癌の癌細胞を顕微鏡で見て、その姿、形で分類する方法を「組織型分類」と言います。
乳頭腺癌、管状腺癌、低分化腺癌、印鑑細胞癌、粘液癌など、難しい名前の分類名があります。
それぞれで進行の速さや抗がん剤の効きやすさなどの性質が異なるため、非常に重要な分類です。
どのタイプの癌なのかは、必ず病理診断科の医師が全例で診断します。
肉眼型分類
胃癌そのものの「見た目」から癌を4 種類に分類しよう、というもので、ボールマンという病理学者が100年以上も前に提唱した分類方法です。
「ボールマン分類」とも呼ばれています。
1型〜4型まで4 種類、あるいは分類できないものを5型、とすることもあります。
現在では、この「肉眼型」=「癌の見た目」はそれほど重要視されてはいませんが、4型と呼ばれる胃癌は特に注意すべき肉眼型だという認識があります。
これが「スキルス」と言われる胃癌です。
スキルス胃がんとは
つまりスキルスとは、胃癌を肉眼型分類で分類した場合の一つの型です。
したがって、スキルス(4型)でも、進行度分類で分ければステージⅡのこともあればステージⅣのこともある、ということです。
ただ組織型分類で分けると、低分化腺癌、印鑑細胞癌が多いことが知られています。
スキルスとは「硬い」という意味です。
胃の壁の中を癌が這うように広がっていき、胃の壁全体が硬くなることからそう呼ばれています。
スキルス胃癌が「要注意」である理由はいくつかあります。
・比較的若い人に起こる
・比較的進行が速い
・腹膜播種(お腹の中に癌が広く散らばる形の転移)が起こりやすい
・内視鏡(胃カメラ)では初期の段階では見落としやすいことがある(癌が胃の壁の中で進展するため、表面からではわかりにくい)
が挙げられます。
腹膜播種が起こると、ほかの臓器に転移したのと同じ扱いでステージ4になります。
お腹の中に広がった目に見えない癌の粒をすべて摘出することはできないので、手術は行いません。
抗がん剤が治療の中心になります。
しかしこのタイプの癌でも、見つかる段階が早ければ他の型と同じように手術を行って治します。
この治療の選択は他の肉眼型の胃癌と何も変わりません。
スキルス胃癌だから特殊な治療が必要、というわけではありません。
あくまで肉眼型分類の一つの型です。
そしてこのタイプの胃癌を早く見つける方法も、他の型と全く同じ。
胃癌の検診です。
初期の段階では他のタイプと同様に症状はありません。
特別な原因で起こるわけではありませんので、特別な血液検査でわかるというものでもありません。
上記の特徴があるため、スキルス胃癌は少し「たちが悪い」のは事実ですが、その予防や治療については、これまで書いてきた胃癌についての検査や治療をお読みいただければ十分、ということになります。
以下の記事もご参照ください。
胃がん検診で早期発見!胃カメラかバリウムどっちを選ぶべき?