胃がんは早い段階で見つけて治療すれば全く怖くはない病気です。
しかし、初期の段階ではほとんど症状がないため、検診を受けなければ見つけることはできません。
ところが、
胃がん検診の内容は?どんな方法で行うの?
何歳からどのくらいの頻度で受けるべき?
どのくらいの費用がかかるの?
胃カメラとバリウムどっちがいいの?
ピロリ菌陰性だったからもう胃がん検診は受けなくていい?
こんな疑問はお持ちの方は多いのではないでしょうか?
今回はこの記事で上記の疑問にお答えします。
難しい話ではありませんので、ご安心ください。
胃がん検診ってどんな検査をするの?
胃がん検診は、胃X線検査(バリウム検査)と、胃内視鏡検査(胃カメラ)の二つから選ぶことができます。
対象年齢は50歳以上で、2年に1回地方自治体で受けることができます。
(バリウム検査は40歳から毎年1回受けることが可能)
費用は地域によって様々ですが、おおむね500-1500円程度です。
これらを人間ドックなどで自己負担で受ける場合、バリウム検査が10000円から15000円、胃カメラは15000から20000円程度ですから、いかに検診が安いかがわかるでしょう。
以前は胃がん検診はバリウム検査だけでしたが、2016年4月より胃カメラが導入され、多くの自治体で好きな方を選ぶことができます。
どちらが有効か、という正確なデータはありません(あったらどちらかに統一されているはずです)。
ただ、選択肢がある以上、メリット・デメリットを知った上でどちらかを選ばなければなりません。
バリウムと胃カメラの比較
胃カメラの利点と欠点、バリウム検査の利点と欠点を比較してみましょう。
胃カメラの利点と欠点
胃カメラの利点
胃カメラは、正確には上部消化管内視鏡検査といいます。
つまり、咽頭(のどの奥)から食道、胃までの全ての「上部」消化管の観察ができます。
そのため、胃がん以外の上部消化管の病気(咽頭がんや食道がんなど)の検診を兼ねることができます。
また、怪しい病変があったとき、直接近づいて拡大して詳細な観察ができるため、かなり小さな病変でも正確に見つけられる可能性が高くなります。
胃カメラの欠点
胃カメラの欠点は、口から管状のカメラを入れるという苦痛があることと、ごくわずかに偶発症のリスクがあることです。
まず、口から胃の中までカメラが入っていきますので、嘔吐反射(ゲーゲーと吐きそうになるような感覚)が起きます。
検査前に喉の奥に麻酔をして症状を抑えることができますが、嘔吐反射には個人差が大きく、麻酔のみでは完全に楽にならない方もいます。
また、胃の中を観察するために空気を送り込みます。
この際、胃が張るような痛みを生じます。
胃カメラの偶発症としては、カメラの操作によって胃の壁に傷がつく、出血する、といったことが挙げられます。
偶発症の発生率は0.005%ときわめてまれですが、「穿孔」(胃の壁に穴があく)は、起こすと手術が必要になることもある危険な偶発症です(1)。
胃カメラは、私自身も経験しています。
以下の記事をご参照ください。
胃カメラって辛い?痛い?鎮静は必要?前日に準備すべきことは?
バリウム検査の利点と欠点
バリウム検査の利点としては、上記のような偶発症がないことと、頻度の低い初期のスキルス胃癌ではバリウム検査の方が見つかりやすいことがある、という点です。
(医療コストなどの議論はここでは行いません)
一方、バリウム検査の欠点も様々にあります。
バリウム検査では、バリウムを飲んでX線写真を撮って診断します。
影絵を見ているようなもので、胃カメラのように直接病変を観察しているわけではありません。
したがって、ごく小さい胃がんを見つけることは困難です。
また、胃カメラのように胃以外の病変を見つけることも、一般的には不可能です。
バリウム検査でもし病気が見つかった場合、結局別の日に胃カメラで精密検査を受けることになるので、手間が一つ増えるというのも欠点と言えるでしょう。
加えて、検査には少し苦痛を伴います。
苦い薬を飲んだ後に発泡剤を飲み、げっぷを我慢しながら台の上に横になり、様々な方向に体を動かして何度も写真を撮影しなくてはなりません。
また、胃カメラと違って放射線の被曝がある点や、バリウムの副作用による便秘も欠点と言えます。
「苦痛」には個人差があるので、どちらが辛いかを正確に比べることはできません。
しかし、バリウム検査で異常が見つかって、精密検査として胃カメラも受ける、というのが一番苦痛なのは確実です。
以上の理由から、私自身は「最初から精密検査でもある胃カメラを受けておく」という方法をとりたいと考えています。
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ピロリ菌陰性でも胃がん検診は必要!
ピロリ菌の除菌に成功し、ピロリ菌がいなくなっても胃がんの検診は必要です。
この理由については以下の記事で解説しています。
ピロリ菌は胃がんの原因?検査や除菌方法と副作用、感染ルートを解説
では、ピロリ菌検査をして、最初からピロリ菌がいなかった人はどうでしょうか?
胃がんの原因のほとんどがピロリ菌なのだから、ピロリ菌が最初から陰性なら胃がん検診は不要でしょうか?
実はそうではありません。
ピロリ菌が陰性だった場合、以下の3つのパターンが考えられるからです。
①ピロリ菌に一度も感染したことがない
②他の病気の治療を目的に飲んだ抗生剤(抗菌薬)によって偶然除菌されてしまった
③ピロリ菌に長期間感染したのち、慢性的な萎縮性胃炎となってピロリ菌が生息できない状態になっている
①なら、確かに胃がんのリスクは極めて低いでしょう。
②の場合は、いつ除菌されたかわからず、それまでの感染期間が長ければ、その分胃がんのリスクは高くなります。
③は、そもそもピロリ菌による慢性的な胃の炎症に長期間さらされた後なので、胃がんのリスクはむしろかなり高いことになります。
以上の理由から、ピロリ菌検査が陰性でも胃がん検診は受けるべきだと言えます。
今回は胃がん検診についてまとめました。
大腸がんの検診について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
大腸がん検診を徹底解説!検査の種類と方法、なぜ受けるべきか?
(参考文献)
(1)消化器内視鏡関連の偶発症に関する第6回全国調査報告
消化性潰瘍診療ガイドライン2015/日本消化器病学会
H.pyroli感染の診断と治療のガイドライン 2016/先端医学社
専門医のための消化器病学 第2版/医学書院
消化性潰瘍診療ガイドライン2015/日本消化器病学会