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GIST(消化管間質腫瘍)とはどんな病気?症状、検査と治療について解説

GIST(消化管間質腫瘍)という病気は、私たち消化器系の医師にとっては日常的に出会う病気ですが、一般にはあまり知られていません。

発生頻度は10万人に1〜2人

まれな疾患で、「希少がん」にも位置付けられています。

 

GISTについては、

どんな病気なのか?

癌とは違うのか?

悪性なのか?良性なのか?

といった疑問をお持ちの方は多いでしょう。

 

今回は、ガイドラインを元にGISTに関する知識を分かりやすく説明します。

 

GISTとはどんな病気?

GISTは、Gastrointestinal Stromal Tumorの略称です。

「ジーアイエスティー」とそのまま読んだり、「ジスト」「ギスト」といった俗称で呼ばれます。

日本語では、「消化管間質腫瘍」「消化管間葉系腫瘍」です。

 

「消化管」とは、口から始まり、食道、胃、小腸、大腸を通って肛門に至る食べ物の通り道のことです。

GISTは、この通り道のどこかにできます

頻度としては、日本では胃が70%と最も多く、それに次いで小腸が20%、大腸と食道がそれぞれ5%です。

 

どんな症状がある?

小さいものであれば全く無症状で、検診や他の病気の治療中に偶然見つかるケースもよくあります。

大きくなると、さまざまな症状が現れます。

膨満感食欲低下吐き気吐血血便など、部位や大きさによってケースバイケースです。

ただし、いずれも他の消化管の病気で起こるものばかりで、「GIST特有の症状」はありません

 

さて、ここまで読んで、

「消化管にできる腫瘍」なら、胃がんや食道がん、大腸がんなどとは何が違うのか?

と疑問に思った方は多いでしょう。

これについて次に説明します。

 

一般的な「癌」との違い

胃がんや大腸がんに代表される「消化管にできる癌」は、いずれも消化管の表面を覆う「粘膜の細胞」が癌化することによって生まれます

 

例えば、胃がんを例に挙げてみましょう。

以下の図をご覧ください。

消化管の壁は、地層のようになっています。

図のように、胃がんは必ず胃の表面の上皮(粘膜層)の細胞からできます。

 

細胞分裂を繰り返す過程で、周囲の組織を無視して無秩序に増殖する細胞が現れ、これが胃の表面に腫瘍を形成するわけです。

胃がんはこの位置から地層にもぐりこむようにして深く成長(浸潤)し、そのうち胃の壁(漿膜)を突き破って胃の外(お腹の中=腹腔内)にこぼれます。

これによって起こるのが「腹膜播種(はしゅ)(腹膜転移)」です。

 

さて、では胃のGISTはどうでしょうか?

以下の図をご覧ください。

GISTで増殖しているのは、胃がんのような粘膜の細胞ではありません。

固有筋層にある、別のタイプの特殊な細胞です。

 

GISTはこのように胃の「壁の中」の細胞からできるわけですが、こうした腫瘍は、粘膜の表面にできる胃がんのような癌と対比させ、「粘膜下(ねんまくか)腫瘍」と呼ばれます。

「粘膜」の「下」にできた腫瘍だからです。

 

消化管のGISTは、いずれもこのような形態で現れます。

GISTは、胃がんや食道がん、大腸がんなどの消化管癌とは「生まれが違う」と思っておけばよいでしょう。

生まれが違うと、性質も全く異なります

よって、必要な検査や治療方針も全く異なってきます

MEMO
※もう少し正確に書くと、がん(悪性腫瘍)は、①血液のがん、②上皮細胞からできるがん、③非上皮細胞からできるがん、の3種類に分けられます。一般的に胃がんや大腸がんなど上皮細胞から生まれるがん(②)を「癌」と呼び、骨肉腫や脂肪肉腫など非上皮細胞から生まれるがん(③)を「肉腫」と呼びます。GISTも③の一種で、非上皮性腫瘍に含まれます。
(参照:知っておきたいがんの基礎知識

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GISTの検査・治療

一般に、胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査や、画像検査(CTなど)で粘膜下腫瘍が発見されます。

この時点で必要なら精密検査を行い、GISTと診断がつけば「切除可能なものは原則手術する」というのが基本方針です。

 

ただし、精密検査や治療の必要性は、大きさや性質によって異なります

詳細な分類は日本癌治療学会HPに譲りますが、概要を書くと以下のような形です。

(あくまで目安で、例外はあります)

・2センチ未満なら治療なし(年に1〜2回検査を続ける)

・2センチ未満でも悪性らしさ(徐々に大きくなったり潰瘍ができていたりするもの)があれば、手術を念頭に精密検査

・2〜5センチであれば手術を念頭に精密検査

・5センチ超なら原則手術

 

ここでいう精密検査とは、CTやMRI、超音波内視鏡検査、生検などです。

超音波内視鏡検査は、内視鏡の先端に超音波がついた器械です。

「生検」とは、腫瘍の細胞を一部とって顕微鏡で調べる検査のことですね。

これで、GISTであるという確定診断が得られれば手術を行う、という流れになります。

 

手術後は、とった腫瘍を顕微鏡で細かく検査(病理検査)し、悪性度(再発のリスク)の分類を行います。

再発リスクは、「超低リスク」「低リスク」「中リスク」「高リスク」などのように段階的に分類され、それぞれに応じて予後(生存率・再発率)が異なります

これに応じて、再発予防の化学療法(抗がん剤治療)の必要性や、検査のための通院の頻度が変わってきます。

 

さて、GISTは小さなサイズの頃は無症状ですので、かなり大きくなってから見つかる人もいます

この場合、他の臓器(肝臓など)に転移していて、手術ができないことがあります。

このケースを「切除不能」と呼びます。

術後に再発を起こしたケースも、これに含みます。

 

切除不能な場合の治療は?

手術ができない場合(切除不能の場合)は、化学療法(抗がん剤治療)を行います。

使用されるのは、イマチニブ(グリベック®️)やスニチニブ(スーテント®️)、レゴラフェニブ(スチバーガ®️)といった、分子標的薬というタイプの薬です。

画像検査で効果を判定しながら、薬を変えつつ治療を継続することになります。

 

悪性腫瘍が他の臓器に転移していたり再発したりした際に「切除不能」となる理由は、以下の記事をご覧ください。

ステージ4の胃がんや大腸がんはなぜ手術できないのか?

 

今回はGISTについてまとめました。

「まれ」な病気とはいえ、過去の膨大な症例データをもとに、診療ガイドラインとして医学的に最も適切な治療方針がまとめられています

医療機関の指示に従い、ガイドラインをもとにした標準治療を受けるようにしてください。

詳細は以下の参照記事もご覧ください。

(参照)
国立がん研究センターがん情報サービス
日本がん治療学会がん診療ガイドライン「GIST」