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医師向け|英語論文の投稿規定の読み方、見るべき10のポイント

英文論文を投稿する際の最も面倒な作業として「投稿規定に則って書式を調整すること」が挙げられます。

Rejectで返ってきた論文も、この作業を経て別のJournalに投稿することになりますが、この作業が面倒になって放置してしまう人がよくいます

 

投稿規定の読み方について後輩から相談を受けることが多いため、今回この記事でまとめておきます。

投稿規定のどのポイントを見るべきか、どんな風に書式を整えればいいか、について要点を絞って書きます

基礎的な内容ですので、英語論文を初めて書く方向けです。

(注:要点を絞っています。論文を作成しながら見るのがオススメです)

 

英語論文を書くコツについては以下の記事で解説しています。

医師向け|医学英語論文の書き方 超入門編 8つのステップで具体的に解説

 

投稿規定はどこにある?

投稿規定は、Journalのホームページに必ずあります。

“For authors““Instructions for authors”などと書かれてあることが多く、これをクリックすると投稿規定ページに遷移します。

PDFで用意されているJournalもあり、その場合はこれがダウンロードされます。

 

まず、受け付けている論文のタイプを確認します。

おそらくこの記事を読む方であれば、原著(Original ArticleやOriginal Study、Research Articleなど)または、症例報告(Case Report、Case Series)になるかと思います。

症例報告を提出予定の方は、症例報告を受け付けているかどうかを確認します

 

原稿の書式が書かれてある項目は、たいてい”Manuscript Preparation””Preparation of Manuscript”と表題がついています。

あるいは、Journalによっては“Article Styles and Formats”と分かりやすいものもあります。

ここから一つ一つ 簡単に見ていきます。

 

単語数の確認

まずは単語数(Word Count)の確認をします。

単語数が規定をオーバーしていれば、書式を整える前に原稿の修正が必要になります。

単語数は、「Abstractの単語数」「Main Textの単語数」のそれぞれに制限があるのが一般的です。

Abstractは200語以内、250語以内といった短めのJournalから、500語以上の制限を設けているような長めのものまであります。

語数を意識せずに書くと200語は軽く超えることが多いため、注意が必要です

 

一方Main Textの方は、初めての臨床論文を書く人であれば、語数制限にかかるほど長いものを書いているケースは少ないと思います。

ただし、Journalによっては、Title pageやReferenceまで含んだ語数に制限を設けているものから、これらを除いたText部分だけで制限を設けているものまであります

どの部分の語数制限なのかを確認しなければなりません。

(Text本文だけ、というパターンの方が多い印象ですが)

 

Title pageの調整

次にTitle pageの調整に入ります。

「Title pageに何を書くべきか」はJournalによってかなり異なります。

最低限必要となるのは、論文タイトル、著者名(Authors)、施設名(Affiliations)、責任著者(Corresponding author、一般的にはその部署のトップか論文指導者)の名前と施設、住所、メールアドレス、電話番号、FAX番号です。

 

これに加えて、Journalによって様々な追記が必要になってきます。

見るべきポイントとしては、以下の6点です。

・冒頭にArticle type(”Original article”など)を書くべきか?

・Running head(またはRunning title, Short title:欄外表題)は必要か?

・Authorの書き方(MDやPhDなど学位表記が必要か)

・Affiliationの書き方(住所まで書くべきか)

・Word count(単語数)を書くべきか

・COI declaration(利益相反)やKeywordsを書くべきか

 

Running headは文字数制限があることが一般的です(「語数制限」ではなく「文字数制限」が多い

Keywordsは、Title page内かAbstractの後に持ってくることが多く、こちらも投稿規定で確認が必要です。

Keywordsは個数に制限があり、「5語以下」や「3個以上」など、Journalによって様々です。

 

Abstractの調整

次にAbstractの調整に入ります。

Abstractの規定だけで1パラグラフ設けられていることが一般的です。

臨床論文であれば、ほとんどで”Structured Abstract”を求められます。

つまり「背景」「方法」「結果」「結論」といったStructure(構造)が分かれたタイプのabstractのことです。

(基礎論文だと、むしろnon-structuredなabstractの方が多く見受けられます)

「背景」はBackgroundと書くのか、あるいはIntroductionやAimなのか?

「方法」はMethodsなのかMaterials and Methodsなのか?(単数か複数かの区別も)

DiscussionやStudy designのような、他の項目の追加が必要か?

といった項目を一つ一つ確認して書式を整えます。

 

Journalによっては、Abstractとは別に、さらに短い要約が必要となるものもあります(Highlight、Tips、Mini-Abstract、Significant Statementなど項目名は様々)。

Abstractが250語なら、こうしたSummaryが120語〜150語といったバランスになるのが一般的です。

 

本文の調整

次にMain text(本文)の調整に入ります。

Main textもAbstractと同様、構造に注意します。

IntroductionなのかBackgroundなのか、といった表記はJournalによって異なります。

最後にConclusion(s)を書く必要のあるものもあれば、ないものもあります。

 

なお、迷ったらそのJournalの最新の論文をいくつかダウンロードし、それを真似るのがオススメです

(投稿規定の記載があいまいで迷う部分は、他の論文を見ても各自バラバラで、規則が特に定められていないことに気付ける場合もあります

また、フォント指定や文字サイズの指定(一般に11ptsや12pts)がある場合は、これに合わせます。

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Figureの確認

Figure(図)に関してチェックすべきなのは、枚数の上限とファイル形式です。

Online JournalだとFigure数は無制限、というものもありますが、「5枚まで」というように定められているものも多くあります(「Tableと合わせて◯枚」という指定もあります)。

複数のデータを組み合わせた大きなFigureを載せたい時は、サイズの制限も確認します。

 

ファイル形式は、Journalによって様々です。

JPEG、PNG、TIFF、PDFなど、許容される形式が決まっていますので、これを確認し、規定に合わせて変更します。

MEMO

形式を変換するソフトを持っていない場合は、以下のサイトが便利です。

>>PDFコンバーター

 

また、本文中でのFigureの引用の仕方も見ておきます。

“Figure 1”なのか“Fig. 1”なのか、Supplementary dataなら、“Supplementary Figure 1”なのか“Supplementary Fig. 1”なのか、はたまた、“Supp Fig. 1”なのか。

この辺りは、投稿規定ではなく実際にpublishされている文献を見た方が早い場合もあります。

この際、ついでにP値の表記も見ておきましょう。

Pが大文字か小文字か、あるいは斜体かnormal fontかは、journalによって様々です。

 

Figure legendsの確認

各Figureには説明文が必要ですが、これを「Legend(レジェンド)」と呼びます。

まず、Legendをどの位置に持ってくるべきかを確認します。

Main text→References→Figure legendsの順であったり、Figure legendsの前にTableが来ることもあったりと、Journalによって様々です。

Figure legendsでは、Figureの説明文を書くともに、「*」や「†」などの記号の説明を入れたり、略語をspell outしたりします。

 

なお、基礎論文ではLegendを各Figureの中に入れてしまうよう指定されるものもあります。

この場合はFigure LegendをMain text内に書かず、Figureの一部として提出します。

 

Tableの確認

Table(表)も、個数制限があることが多いため、必ず見ておきます。

上限に収まり切らない場合は、複数のTableを一つにまとめるなど、工夫が必要になります。

また、前述のFigure legendsと同様、Tableの位置の確認も必要です。

Journalによっては、TableをMain textに含めず、別ファイルでsubmitするよう求めるものもあります

その場合は、WordなのかExcelなのか、PowerPointも可なのか、といった形式の確認が必要になります。

(Main textファイルにTableを含める場合は必然的にWordということになります)

 

Referenceの確認

まず、References(引用文献)の件数の制限を見ます。

30や50といった上限が定められていることが多く、超えている場合は削る必要があります。

次に、Referenceの書き方を確認します。

投稿規定には必ず凡例が載っているため、これを参照します。

 

表記方法はJournal一つ一つで微妙に異なるため、ここはかなり面倒ではありますが、入念にチェックが必要です。

チェックが必要となるポイントを説明します。

注意

ここから書く作業を全て手作業でやると、あまりにも煩雑です。

文献管理ソフトを使い、これを半自動化するのがほぼ常識になっています。

“Endnote”というソフトが最も有名ですが、他にも文献管理ソフトは多数あります。

論文を書く前にPCに導入するのがほぼ必須だと思います。

 

各要素の順番

一般的には

Authors→Title→Journal名→Year→Volume:巻(Issue:号)→Page

の順が多いと思いますが、Yearが最後尾に来たり、Yearに丸カッコが付いたり、など規則に細かな差があります。

また、Issue自体を書く必要がないJournalも多くあります

さらに、末尾にdoi(電子データに付与される識別番号)の記載が必要なものもあります。

これらは全てPubmedで調べれば容易に分かりますが、文献管理ソフトを使えばここも半自動化できます。

 

Authorの数

Journalによって、

「全Authorsの名前を書く」

「7人以上の時は3人までAuthorを書き、その後に”et al.”を付けるが、6人までなら全Authorsを書く」

など、細かな規則が異なります。

これに合わせて記載します。

 

ピリオド、カンマ、コロン、セミコロンの使い分け

「論文タイトルやJournal名、ページ数の後に、ピリオドをつけるか、カンマをつけるか、コロンをつけるか、セミコロンをつけるか、あるいは何もつけないか」

といったポイントを確認します。

これはかなり面倒な部分で、

「タイトル後には何もないが、Journal名の後にはカンマがあり、Yearの後にセミコロン、Volumeの後にはコロン、ページ数の後にピリオド」のような、微妙な規則がJournalによって全く異なってきます。

やはり文献管理ソフトがあれば、一度形式をセットすると同じ形式を全ての引用文献リストに一気に適用できるため便利です。

 

ページ数の記載方法

ページ数は、

「123–5」のように、変化する部分だけを書くケースと、

「123-125」のように、全てを書くケース

があります。

これもJournalによって様々です。

 

Journal名の記載方法

一般的には、”Index Medicus“と呼ばれる、医学分野において最も広く使われている資料で使用される略語を採用します(こちらも文献管理ソフトを使えば楽です)。

ただし、まれにJournal名を略さずフルにspell outするよう求めるものもあります

凡例で確認が必要です。

 

引用番号の記載方法

本文中に各引用文献の番号を挿入する必要がありますが、

[  ]:square bracket

(  ):round bracket

のどちらかはJournalによって様々です。

中には上付き(superscript)のものもあります。

番号とピリオドの位置関係も、Journalによって異なります。

つまり、

Sato et al. indicated the superiority of this method (21).

Sato et al. indicated the superiority of this method. (21)

のいずれにすべきかを確認する、ということです。

前者が多い印象がありますが、後者もそれなりによく見ます。

 

また、複数の文献を引用する際に、

「21,22,23」

とするパターンと、

「21–23」

とするパターンがあります。

こちらも確認が必要です。

 

論文のreviseの際に引用文献が増えることがありますが、そうなると、挿入した引用の後の番号が全てずれることになります。

Textの後半で、前半で引用した文献をもう一度引用するケースもあるため、この修正を手作業でやるのはかなり大変です。

文献管理ソフトがあれば、これも容易に可能になります。

 

これらの作業は、reject後に別Journalに投稿し直す時に、毎回必要になります

ここに書いたチェックポイントが頭に入っていると、Reference部分の書式修正は手作業でもそれなりの速さでできます

文中の(    )を[   ]に手作業で変えたい場合は、Command+F(Control+F)で(   )を検索し、[   ]に置換する、といった方法もオススメです。

MEMO

“Endnote”はやや高価ですが、ユサコという代理店経由で購入するとアフターサービスがかなり充実しています

操作中の疑問に関する問い合わせメールへの対応も非常に速くかつ丁寧なので、初心者向けソフトとしてオススメです。

 

その他の項目

COI declaration(利益相反の開示)は、Title pageに書くものもあれば、Referenceの前後に位置することもあります。

また、論文のAuthorsには含まないもののサポートを得た人が他にいる場合はAcknowledgmentsを記載しますが、この位置も規定で定められています。

Referenceの後やTitle pageの後、といったケースをよく見ます。

 

論文投稿時に、原稿以外に提出が必要な資料があるケースもあります。

多いのは、COIとCopyright(著作権)に関する指定のフォームを用意すべきケースです。

全てのAuthorsのサイン付きで全員分用意すべき場合もあれば、First authorまたはCorresponding authorだけで十分という場合もあります

全ての著者にサインが必要となる場合、投稿直前のこのタイミングでサイン集めに奔走することになるため、できれば早めにチェックしておくことが望ましいと思います。

 

フォームは、雛形がホームページからPDFやWordでダウンロードできるため、これを利用するのが一般的です。

ちなみにMacであれば、デフォルトで実装されている「プレビュー」というアプリケーションで電子サインが可能です。

一度サインを登録しておけば、PDFに画面上で直接サインができますので、「印刷→スキャン」の手間が省け、圧倒的に楽です

 

加えて、個数制限などで論文には含めることができないものの重要と考えられるFigureやTableがある場合は、これをSupplementary dataとして提出することができます。

これについても、個数制限やフォーマットの制限があります。

Supplementary dataに関する規定は、投稿規定の中にほぼ必ずありますので、ここをチェックします。

 

Publication feeに関して

Publication fee(出版料)も投稿規定に書かれてあるのが一般的です。

たいてい、後半に”After Acceptance”という項目が用意され、提出した論文がアクセプトされた後の流れが書かれてあります。

出版料はドルあるいはユーロで記載されていることが多く、Open Access Journalの場合は数十万と高いものもあります。

Open Accessにするかどうかの選択肢があるケースもあるため、これについては指導医と相談してください。

 

なお、Journalによっては、提出時にもSubmission feeがかかるものがあります

Rejectされても返金されず、なかなか辛い出費になるため、提出前にこちらも確認が必要です

 

疑問点があれば、投稿規定にある問い合わせ先にメールをしたり、問い合わせフォームから連絡することは可能です。

ただ、欧米のJournalは返事が遅かったり、無視されたり、ということも往々にしてあります

むしろ同じJournalに出したことのある先輩医師に聞く方がオススメです。

もちろん外科系のJournalであれば私に聞いてくださっても構いません。

 

以上、投稿規定の見るべきポイントについてまとめました。

実際に英文論文の書く時のコツについては以下の記事でまとめています。

あくまで入門編です。

医師向け|医学英語論文の書き方 超入門編 8つのステップで具体的に解説