私はこれまで大規模な急性期病院にいくつか勤務していますが、とにかく新卒看護師の離職率が高いのが悩みでした。
たとえば、オペ室の1年目看護師7人が1年以内に全員辞めた、という事態が起こっても、驚かなくなっていました。
臨床の現場は最初は辛いので、それに滅入ってしまう人がいるのは当然のことです。
私は1年目看護師には、
「辛くない?大丈夫?」
「今はしんどいと思うけど、じきに慣れてくるから」
というように、積極的に声をかけるようにしています。
「医者が何を知ったような口をきいて」と思われているかもしれませんが、私はシステム改善に手を下せないような「ヒラ」なので、このくらいしかできることはありません。
4月の初旬には、「ようこそ、臨床の世界へ。医師・看護師1年目に伝えたいこと。」という記事を書きました。
約1ヶ月経ったので、今回は辛くて苦しい1年目勤務をこなす看護師さんにもう少し踏み込んだメッセージを書きます。
もし辞めたくなったらぜひ読み返してください。
新しい環境は辛いもの
新社会人のあなたにとっては、初めての臨床現場は辛いことだらけだと思います。
何もかもが慣れない環境で、仕事をてきぱきこなす先輩を見て、無力感を覚えることもあるでしょう。
先輩から毎日のように叱られ、理不尽な要求をされ、何のためにここにいるのか、疑問に思うこともあるでしょう。
いっそ仕事をやめてしまいたい。
そういう気持ちになるかもしれません。
これが「お金を稼ぐ」ということの重さです。
生きて行くためにお金を稼ぎたいなら、戦場から逃げても、どうせ次にたどり着くのは別の戦場です。
どこかに楽園などありません。
それなら、楽園を探してもがくより、今の戦場に耐性を身に付ける方を優先しましょう。
先輩は楽しそうに生き生きと仕事をしているように見えるかもしれませんが、彼、彼女らもまたビギナーの時があったのです。
先輩たちが自分より才能があるのではありません。
ただ「仕事に耐性がついているだけ」です。
そしてそれは難しいことではありません。
大部分は時間が解決してくれるからです。
いつも好きでいられる仕事などない
「今の仕事を辞めたら、何か他の好きなことで稼げるかもしれない」
そう思う人がいるかもしれません。
好きなことで稼いでいる(ように見える)人たちを見れば、好きになれない仕事で踏ん張っている自分が惨めに見えるかもしれません。
しかし、自分の仕事のことを「いつも好き」な人などいません。
自分の仕事を好きなときもあれば、なかなか好きになれないときもある。
自分に向いていると思う時もあれば、「自分はこの仕事向いていないな」と悩む時もある。
そんな自分と折り合いをつけながら、それでも続けていくのが「労働」であり、「お金を稼ぐ」ということです。
「私は好きなことで稼いでるよ!」
と言う人は輝いて見えますね。
しかしこれは、「今、私は仕事が好きなフェーズにいるよ」という意味です。
彼、彼女にとっては、決して楽な時ばかりではないし、「この仕事、本当に辛い、好きじゃない」というフェーズの時もあります。
しかしそういう時にその人から「私の仕事は本当に辛い!」という言葉は漏れ聞こえてきません。
「なんとかこの局面を打開したい」と思っている時に、自分のモチベーションを後退させるようなセリフを吐きたくないからです。
仕事を好きかどうかはどうでもいい
労働は、それが社会に対してどんな価値を生み出したかによって評価されます。
そして、生み出した価値の大きさによって金銭的な対価が決まります。
あなたの仕事が社会から評価されるとき、「あなたがその仕事を好きかどうか」は評価の対象ではありません。
一生懸命やっている仕事が仮に「好きじゃないな」と思っても、それはただの個人的な感想です。
興味があるのは、「あなたが労働によって生み出した価値がいかほどか」だけです。
お金をもらって仕事をしているなら、必ずその分の価値が社会に生み出されています。
ひとまず今は「好きか好きでないか」とは切り離して考えてみてください。
社会人になって約1ヶ月。
辛いことばかりでしょう。
来月も再来月も、1年後もたぶん辛いですよ。
でも、そこを超えると、一気に楽しくなってきますから。
ともに頑張りましょう。