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無痛分娩で妊婦が死亡、単科体制の難しさ

とある産婦人科病院で、無痛分娩で女児を産んだ女性が、手術時の大量出血により意識不明の重体となり、約1年後に亡くなったことに対し、示談金を支払うことで遺族と同病院が示談していたとのニュースがあった。

遺族は、当病院長を業務上過失致死の疑いで刑事告訴する方針だそうである。

今回の事例は、「分娩後に子宮などからの出血が止まらず、別の病院に搬送された」とされている。

止血できない状態のまま別の病院に搬送する、というのは極めて危険が大きく、自らの病院でこれ以上の処置ができないという事態に至った医師らの、苦渋の決断だったと思われる。

 

この事例で感じるのは、単科の産婦人科病院での診療体制の難しさである。

単科病院か総合病院か

「単科」とは、一つの科のみで構成されている、という意味で、一般的に産婦人科の単科病院は、産婦人科医と、少数の小児科医、麻酔科医のみで構成されていることが多い。

一方総合病院は、あらゆる専門科の医師がそれぞれ一定数勤務しており、各科間で連携体制をとることが比較的容易だ。

 

実際消化器を専門とする私も、産科手術に参画を依頼され、助手として関わった経験がある。

また、例えば胃癌で消化器外科に入院した患者が手術後に心筋梗塞を起こした時には、同じ病院の循環器内科医がすぐに駆けつける。

病棟内で転倒して骨折したら、同院の整形外科医が手術をしてくれる。

 

単科の病院では、このようなことは容易ではない。

通常、当該科の医師が在籍する近隣の病院へ転送することになる。

むろん緊急性が低い病態であれば、何の問題もない。

だが今回のように一刻を争う時は、その移動時間が大きなリスクになりうる

 

一方、産婦人科の単科病院は、医師だけでなく、看護師や薬剤師など全ての医療スタッフが産婦人科領域に長けており、極めて満足度の高い医療サービスを受けられることが多い

私の妻は、一人目の子を産婦人科の単科病院で出産し、二人目は総合病院で出産した。

二人とも帝王切開での出産であった。

総合病院ではスタッフらが非常に忙しく動き回り、外来の待ち時間は長く、困ったときにゆっくり話を聞いてもらうのも難しかったのに対し、単科病院では、経験豊富なスタッフが常に親身になって話を聞いてくれたという。

また初めての出産後は不安も大きいものだが、母乳トラブルで電話をかけた際も、単科病院では専門のスタッフが即座に対応してくれた。

幼い子を持つ妊婦が術前健診を受ける際は、健診中にその子供を預かってくれるなど、きめ細やかな対応を受けることができるのも単科病院の特長であろう。

 

単科病院と総合病院は、それぞれが利点、欠点を持ち、得意とする医療サービスの種類は異なる。

手術はほとんどの場合何の問題もなく遂行されるのだが、医療行為の安全性は常に100%ではない。

様々な要因で予想外の事態が生じることがある。

むろん、総合病院でも夜間や休日など人手が手薄な場合もある。 

だが今回の事例で、万が一の不測の事態における単科病院の診療体制の難しさが浮き彫りになったと言えるのかもしれない。