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人工肛門とは何か?ストーマについて知っておくべき3つのこと

私は外来で、大腸がんの手術などで人工肛門を持つ生活をしている方から、

「大好きな温泉に行けなくてつらい」

という言葉を聞くことがあります。

人工肛門を持つ方の入浴は、医学的に何の問題もありませんし、便の漏れも浸水もありません。

不快なにおいもなく、不潔でもありません。

では、「温泉に行けない」のはなぜでしょうか?

周囲の目が気になるからです。

温泉施設で人工肛門を持つ方の利用に対して苦情を言う、といった悲しい事例も耳にします。

 

人工肛門(人工膀胱)を持つ方は、日本で約20万人、すなわち1000人あたり1.5人以上いるとされています(*)。

しかし、これほど多いにもかかわらず、人工肛門のことをあまり知らない方はたくさんいます

人工肛門を、ペースメーカーや人工関節のような器具だと誤解している人もいます。

 

ちなみに、このマークは何を意味するか知っていますか?

このマークの名前は「オストメイトマーク」

オストメイトとは、「人工肛門(人工膀胱)を持つ人」のことです。

オストメイトの方が、排泄物を処理したり、装具や腹部を洗浄したりするのに適したオストメイト対応トイレなどでこのマークが描かれてあります。

オストメイト対応トイレは、駅や公園などの公共施設や、ショッピングモール、スーパー、映画館、パーキングエリアなど、街中のあらゆるところにあります

見たことがない!と思う方は、目に入っても意識していなかっただけかもしれません。

 

私はこれまで外科医として、人工肛門造設術(人工肛門を作る手術)を何度となく行ってきました。

今回は、人工肛門のことを広く知っていただくため、最低限必要な知識をまとめておきます。

 

なお、ご本人や家族が人工肛門を持っている方、手術を受ける予定の方向けの記事は別に用意しています。

徹底解説!人工肛門ってなに?仕事や入浴はできる?どんな手術?

 

人工肛門はなぜ必要になるのか?

私たちは、トイレで排泄行為を1日に何度も行っています

食べたり飲んだりしたものを体内で処理し、排泄物を直腸にためて肛門から便として出し、尿を膀胱にためて尿道から出しています

何らかの病気で直腸や肛門、膀胱の機能を失うと、別の場所から便や尿を出さなくてはならなくなります

この時、手術によって作るのが人工肛門(人工膀胱)です。

「ストーマ(ストマ)」と呼ぶこともあります(この記事では便宜上、よく知られた「人工肛門」で統一していますが、便と尿の排泄口の総称として「ストーマ」と呼ぶのが正確です)。

 

「出口を別に設けるだけ」ですから、人工関節のように器具を埋め込むわけではありません。

お腹の表面に小さな穴を開け、ここに直接出口を作って、肛門や尿道から本来出ていた排泄物を少し手前でショートカットして出すイメージです。

本来は、便は直腸にため、尿は膀胱にためて好きな時にトイレで出せるものです。

しかしオストメイトの方は、「出口はあっても体内にためておく場所が(十分には)ない」という状況が起こります。

 

そこで人工肛門を作った場合は、出口に専用の装具をつけ、排泄物が袋の中にたまるようにしておくわけです。

(装具の実際の写真はこの記事の冒頭の画像を参照)

オストメイトの方は、定期的に袋の中身をトイレに捨てに行く、という生活をしています。

体の中にためたものをトイレで定期的に出しに行く人と、ためている場所が違うのです。

 

どんな病気で必要になるのか?

前述の通り、直腸や肛門、膀胱が障害される病気が主な原因です。

悪性腫瘍であれば、直腸がん・大腸がんや、肛門がん、膀胱がんだけでなく、子宮がんや卵巣がんなど、近くの臓器の腫瘍も原因になります。

胃がんや膵がんなど、お腹の他の臓器のがんが広がって直腸や膀胱を障害することもあります。

 

また、悪性疾患だけではありません

潰瘍性大腸炎やクローン病などの良性疾患や、先天性の疾患が原因になることもあります。

以前、アナウンサーの中井美穂さんも腹膜炎によってオストメイトであったことを公表されていましたね。

(腹膜炎によって一時的な人工肛門が必要になることがあります)

 

誰もが、非常に多くの疾患で、人工肛門を作る手術を受ける可能性があります

この記事を読む皆さんも、そして私自身もそうです。

(※人工肛門には、永久的なものと、一時的なものがあります。一時的なものであれば、時期を置いて人工肛門を閉鎖し、再び肛門から排便できるようになります)

 

生活に制限はない

人工肛門があっても、生活に制限は全くありません

家事も入浴も運動も、全ていつも通りです。

装具は防臭加工されており、適切に使っていればにおいはありません

肌色であまり目立たない装具もあります。

 

中井美穂さんはオストメイトである間に世界陸上の取材などに行かれていましたが、仕事も普通に可能です。

俳優の渡哲也さんも、直腸がんによって永久的な人工肛門をお持ちだと公表されています。

 

しかし、医学的には生活に全く制限がないにもかかわらず、周囲の人に気を遣って自ら制限を加えている方がたくさんいらっしゃるのは冒頭に書いた通りです。

服を着ていると、オストメイトであることは周囲の人には全く分かりません。

この記事を読む方々の周囲にもオストメイトの方は多くいらっしゃるはずです。

 

2017年の予測統計から、日本で最も多いがんは大腸がんになりました。

今後、オストメイトの方がますます増える可能性があります。

 

ここまで書いてきたことは、オストメイトの方や、家族がオストメイトという方は当たり前のように知っていることです。

(彼らはおそらく、私たち医師以上に生活上の知恵を多く持っています)

周囲の方々も、十分な知識を持ち、理解することが大切です

 

私の専門領域である消化器の人工肛門に関しては、以下の記事でも解説しています。

人工肛門は、生活に医学的な「制限」はありませんが、「支障」がないのではありません

もう少し詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

徹底解説!人工肛門ってなに?仕事や入浴はできる?どんな手術?

(*)総務省の資料では16万人とされていましたが、10年以上前のデータであったため、公益財団法人日本オストミー協会会長のインタビュー記事より「20万人」としました。

8 Comments

メイ

けいゆう先生

ツイッターを読んで、ブログ記事更新を楽しみにしていました。

オストメイトマークは知っていましたが、人工膀胱は初耳でした。

誰にでも可能性があることなので、もっと広く知られるべきだと思いました。

私が今年入院した時、二人部屋の隣の女性は乳房再建手術を受けた方でした。

温泉が好きなのに、周囲の目が気になったり、子どもに聞かれるのがつらかったそうです。

私は温泉などでオストメイトの方も乳房の手術を受けた方もみかけたことはありませんが、正しい知識をもち、偏見をもたないようにしたいです。

そういえば、子どもが小さい頃、オストメイト用のトイレに入りたいと言ったことがあります。

「これは特別なトイレだから、このトイレじゃないとダメな人がいるんだよ」と言いましたが、もう覚えてないでしょうし、出先でみかけたら教えようと思いました。

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外科医けいゆう

人工肛門の仕組みやオストメイトの方の生活などはあまり知られていませんし、人工膀胱となるとなおさらですよね。
乳房の手術を受けた方も同じですが、周囲に気を遣わなくてもいい世の中になれば・・・と思うばかりです。
Twitter経由でこの記事はかなり拡散されているので、同じ志を持ってくださる方が多くて安心しています。

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すみれ

先生、お疲れ様です。

私の亡き父が、以前ストーマを装着しておりました。
幼い頃、夜に装着の準備をする父の姿を毎日のように見ていて、これはなんなのだろうと純粋に興味深く近寄ってきた私に、父は大変細かく、わかりやすく教えてくれました。
その時私は、これは父にとって、とても大事で必要なものなのだな、と、子供心にも深く感じた記憶があります。

当時はオストメイト用のトイレもあまりなく、父も頻繁な外出を好まなくなり、連れ出した旅行先での大浴場や部屋付きの温泉などには一切、入らなくなってしまいました。
やはり抵抗や、人の目を気にする気持ちがあったのだと思います。

でも、包み隠さず話してくれた父のおかげで、以前息子にもオストメイト用のトイレのことを聞かれた時、家族目線の身近な立場から、スマートにわかりやすく話すことができました。
だから私は父に、本当に感謝しています。

そして、もっと広くストーマが認知されるようになればいいなと、ずっと思っていました。ですので、先生がブログに取り上げてくださって、感激いたしました。

私も、久しぶりに父との幼い頃の思い出を鮮明にいま、しみじみと思い出しました。
先生、ありがとうございます♪^_^

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外科医けいゆう

人工肛門の方は現実にかなり多いですし、今後も増える可能性がありますが、その割にはその実態があまりに知られておらず、理解を求めるにも、人工肛門が一体何なのか、すら分かっていない人が多いです。
オストメイト用トイレのことも知らない方が多いですね。
人工肛門を扱う医療者として、もう少ししっかり啓発する必要があるなと痛感しています。

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すみれ

改めて再度自分のコメントを読み返しましたが、私の「ストーマ装着」、という言葉、間違ってましたね。
ストーマ=人工肛門、
装着という機械をつけるようなイメージではなく、先生も丁寧に人工肛門を「持つ」と、おっしゃってますよね。
(装着するのは専用の装具ですものね)

身近な家族としてしっかり理解しているつもりだったのに、失礼いたしました。
訂正させていただきます。

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外科医けいゆう

おっしゃる通りですね。私も気づいていませんでしたが…
ストーマは「造設」という言葉を使います。
装具は「装着」ですね。

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ZZ-R

けいゆう先生、お疲れ様です。
いつも解説&コメントありがとうございます。

人工肛門についての記事ですねぇ。
現役オストメイトの一人としてちょっと語らせてください(笑)

先日、NHKの「あさイチ」にて漫画家の内田春菊さんが出演されててご自身の大腸がんと人工肛門の話題が出てました。
パウチの絵とかさらっと描いて説明しててさすが漫画家。。
著名人の方がオストメイトになり、闘病や経験を各メディアでこうやって取り上げられて世間の皆さんに知られていくのが一番浸透するとは思うのですが・・なかなか難しいですね。。

普通の方はストマなぞ未経験ゆえ手術後のボディイメージ変化に戸惑うケースが多いようですが、私は
 父(故人):下肢麻痺+膀胱がん→人工膀胱(ウロストーマ)→私が装具介護
 私:直腸がん→人工肛門(コロストーマ)
という親子二代な超レアケースなので全然平気でした(苦笑)

「人工肛門を回避したい」とか、ネガティブなイメージで語られることが相当多いですが、
ストマのケアの手間というデメリットがあるものの、排泄のコントロールに関してはメリットが上回ると私は思います。
下肢麻痺だった父親の介護で、尿はストマ(→蓄尿バッグ)で回収できたので楽でしたが、便は・・摘便しました。
こちらも人工化してほしいと何度思ったことか(苦笑)

直腸・肛門や膀胱に関連する疾患でストマ造設するケースが大半だと思いますが、他にも交通事故や転落事故などで脊椎損傷して排泄機能も障害を起こして、QOL(生活の質)改善のためやむを得ず人工肛門にするケースも僅かですがあるようですね。
介護してたとき、調べて初めて知りました。手術する場合やっぱりあるんだと思いました。

長文失礼しました。。ではでは。

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山本健人 (Takehito Yamamoto)

人工肛門造設術を多く行ってきた私から見ると、ストマへの受け入れにはかなり個人差があるという印象です。
ZZ-Rさんのようにご家族の経験もあって比較的早い段階から前向きに受け入れられる方もいますし、かなり悩む方もいます。
またおっしゃる通り介護を行うご家族の立場から見ると、ストマの利便性という観点で違った風に捉えています。
確かに、直腸や肛門以外の疾患が原因で人工肛門が必要になるケースもありますし、それも含めてあまり知られていないのが現状ですね。

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