マーゲンチューブ?イレウス管?EDチューブ?管の種類と違い

消化器病棟の看護師さんや研修医の先生向けに、消化器病棟で頻繁に使う「管」の使い分けについて説明したいと思う。

知っている人にとっては当たり前だが、意外と知識が曖昧な方も多いので、参考にしていただけると思う。

 

まず、消化管に管を挿入する目的は何か?

大きくわけて以下の2つである。

・消化管の減圧

・栄養剤の注入(経腸栄養)

つまり、液体を「出すか、入れるか」のどちらかである(当たり前だが)。

これらに分けて順に説明する。

 

広告

消化管の減圧

消化管の減圧とは主にイレウス(腸閉塞)の際に必要となる治療である。

消化管は口から肛門まで一本道なので、どこかに通過障害があれば、その上流の消化管は必ず交通渋滞を起こして拡張する

消化管の内圧を下げるためには、拡張した消化管内に管を留置して、貯留した液体を体外に排出する必要があるわけだ。

 

そこで、どこから管を挿入し、どこに管の先端を置くか、という違いで以下の3種類の方法がある。

 

経鼻胃管

マーゲンチューブ、マーゲンゾンデ、Mチューブ、NGチューブなど様々な呼び方があるが、全て同じものを指す。

不適切な呼称もあるため、名前の違いについては以下の記事を参照してほしい(サンプ効果などの仕組みについても記載している)。

鼻から挿入し、先端を胃に置く。

体格によって長さはずいぶん異なるが、おおむね50cm〜60cm程度で固定することが多い

セイラムサンプチューブがよく用いられる。

排液バッグをつなぎ、排液量性状を毎日観察する。

「イレウスが治ったかな?」と思うのは、排液が減少するときや、排液の色が緑の腸液から薄い褐色や透明に変わったとき。

 

液体を効率良く排出するため、ある程度の太さが必要。

様々な太さのものがあり、当然太ければ太いほど減圧は効率的にできるが、太いほど患者の不快は大きい

体格や、どれほど早急に減圧すべきか、という病態に応じて考える(どの太さが正解、というのはない)

ベッドサイドで盲目的に挿入可能で、位置はレントゲンで確認する。

聴診器で胃の中に入っていることは確認できるが、kink(ねじれ)がないかや、先端が口側過ぎないかなど、細かい位置はレントゲンでなくては確認できない。

ただしレントゲンをオーダーする際は「経鼻胃管の位置確認」と一言添えること

普通の胸部レントゲンでは頭側すぎるし、腹部レントゲンでは尾側すぎるためだ。

 

留置後は、閉塞などがない限り定期的な交換は不要(交換頻度や交換時期を気にする必要はない)。

イレウスだけではなく、幽門前庭部の胃癌などによる幽門狭窄や、胃癌術後の胃内容排出遅延で胃が拡張している際の減圧にも用いる。

経腸栄養にも使用できるが、栄養目的のみであればこれをあえて使うことはない(後述する)。

 

イレウス管

鼻から挿入し、先端を小腸に置く(先端がトライツ靭帯を超える)。

そのため管の全長は約3メートルと長く(経鼻胃管は1メートル前後)、ロングチューブと呼ぶこともある。

先端にバルーンが付いており、これを膨らませることで、蠕動運動で自然に肛門側に進んでいく

うまくいけば閉塞部位の手前まで到達するため、拡張した小腸全域の減圧ができる

バルーンは蒸留水を使って膨らませる(生食は食塩が析出するので不可)。

ダブルバルーン構造のものは、先端のバルーンが上記の目的、後方バルーンは固定する目的

イレウス管造影を行いたいときに後方バルーンを膨らませ、造影剤が口側へ流れてしまうのを防ぐ(肛門側に流れないと閉塞部位の様子がわからない)。

 

盲目的な挿入は不可能(幽門輪を通せない)なので、透視下にガイドワイヤーを用いて挿入する

それでも難しい場合は、内視鏡下に留置する。

抜去はベッドサイドで容易に可能だが、抜去時はバルーンを必ずdeflateする(しぼませる)ことを忘れずに(そのまま抜こうとすると腸重積を起こす)。

一般的には、イレウスに対してまずは経鼻胃管で対応し、効果が乏しければイレウス管の適応とすることが多い。

経鼻胃管より効果が高いことは十分証明されていないが、結果的に手術をすることになる場合は、イレウス管で小腸全体の減圧ができている方がやりやすく安全である。

持続吸引することもあるが、普通は留置しているだけで排液は自然に流出する。

レントゲンでイレウスの改善が見込まれたら、抜く前に造影を行い、通過が良好であるかを確認し、抜去のタイミングを正確に図ることも可能。

あるいは慎重に管理したい場合は、クランプしてみてイレウスの悪化がないかどうかを確認するのも一つの手。

 

コロレクタルチューブ

肛門から挿入し、先端を大腸(結腸)に置く。

これを経肛門イレウス管と呼ぶ人もいるが、経鼻的に挿入するイレウス管と紛らわしいし、目的もコンセプトも全く違うので、コロレクタルチューブと呼ぶべきだと思う。

大腸の閉塞性イレウス(癌や炎症など)にのみ使用する。

閉塞のある部位を超えて、その上流に先端を留置する

閉塞によって貯留した便を体外に排出する。

肛門から遠い位置まで挿入するのは難しいため、通常は直腸から脾弯曲くらいまでの閉塞機転に対して使う。

そのため長さは1.2メートル程度

手術前の減圧を目的として行う(大腸の器質的な閉塞は手術以外では原則治せない)。

緊急手術ならハルトマン術(人工肛門造設)が必要となる大腸イレウスで、うまく減圧できれば人工肛門が回避できる(吻合ができる)。

手術を前提としているため、長期間の留置は普通行わない(病院の習慣にもよるがせいぜい1週間程度を限度とするのが一般的)。

理由は、以下の3点。

・長期留置により、潰瘍や穿孔のリスクがあること。

・留置中は絶食が必要であること(早く閉塞を解除して経口摂取の再開を目指したい)

・管理が煩雑(毎日洗浄が必要)

洗浄については、胃や小腸に留置した管と違って排液が便であるため、毎日管内の洗浄をしなければ容易に管が閉塞してしまう

通常毎日主治医が洗浄する。

近年は大腸ステントの使用が増えており、この管の使用頻度は減少している。

 

栄養剤の注入

消化管に管を入れるもう一つの目的は経腸栄養である。

何らかの理由で経口摂取ができない患者の栄養管理に用いる。

栄養剤の注入だけが目的なら、「ファイコンEDチューブ」や「ゼオンENカテーテル」のような細い管を用いる(太い管でも可能だが)。

理由は、以下の4点。

・液体の排出が目的ではないため太い管である必要はない(減圧と違って栄養剤の注入はきわめてゆっくりで良い)。

・細い方が患者の不快が少なく、挿入もしやすい。

・経腸栄養に特化したチューブは先端に硬いキャップ(オリーブ、重り)が付いていて、挿入しやすく、X線不透過のため先端の位置が確認しやすい。

・金属製のスタイレット(内筒)がついていてコシがあり、挿入時に進めやすい。

 

もちろんベッドサイドで盲目的に挿入可能。

先端は通常は胃に留置するが、十二指腸に留置しても良い。

胃癌などで幽門狭窄がある場合は、狭窄部を超えて先端を十二指腸に留置することで経腸栄養が可能になる

十二指腸に留置する場合(幽門輪を超える場合)は透視下あるいは内視鏡下での挿入が必要。


ここでは管の使い分けにのみ着目して書いた。

意外とこういう風に臨床現場に即して記載した成書はないので、きっとお役に立てると思う。

なお、イレウスの病態は奥が深く分類も大切であるが、わかっていない人が非常に多いので、自信のない方は以下の記事も参照していただきたい。

他にも看護師、研修医向けの記事を用意している。

また患者さん向けに書いた病気や症状に関する記事も、ぜひ参考にしていただければと思う。

広告

コメントの反映には時間がかかる場合があります

※個別の症状・症例に関する相談にはお答えしません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。