コードブルー 3rdSEASONが9月17日から始まった。
相変わらずカッコ良い救急医たちの姿が描かれ、医師である私も見ていてほれぼれしてしまう。
私自身も3次救命救急センターでの勤務歴があるが、実際にはあんなに華やかではないものだ。
一睡もせずに診療し続けるときは、顔はやつれ、無精髭が不潔に伸び、体も汗臭い医者ばかりが動き回っている。
ドラマに出てくるような救命救急センターでも、頻度的にはもう少し軽症の患者さんも搬送されるし、救急業務はどちらかというと地味な仕事である。
さて、ウザいおっさんの愚痴はともかく、久しぶりのコードブルーである。
私も含めファンにとっては待望の第1話だが、いきなりフェロー達の姿に度胆を抜く。
今回のフェロー3人は、救急車が搬送されてきても部屋の隅でスマホをいじったり、現場で重症患者を見ても何もせずに逃げ出すような医師ばかり。
藍沢(山下智久)ら4人がフェローだった9年前とはあまりにかけ離れた「ゆとり感」に若干とまどうほどだ。
さすがにあれほど何もできないビギナーは必ず上級医がペアになって動くし、重症患者を一人で診療させることはない。
もしそうせざるを得ないなら、救急搬送の受け入れ台数を制限しなくてはならない。
藍沢も、
「フェローが無能すぎる」
「フェローが育つ前に患者が死ぬ」
と吐き捨てていたがその通り。
それはともかく、今回も簡単にあらすじを振り返り、解説&ツッコミを展開したいと思う。
藍沢の復帰と不自然な対応
夏祭り中に大規模な事故が発生し、翔北のスタッフらに現場出動要請が入る。
白石(新垣結衣)は山車と壁に頭を挟まれた少年を発見。
少年は重度の頭部外傷により意識障害を起こしていた。
頭を挟まれ頭蓋内出血により意識レベルが低下するが、頭部処置を得意とする藍沢は不在。
藍沢は救命救急センターを離れ、脳外科医としてトレーニング中である。
死傷者が多数発生しレスキューの手も足りず、救出に時間がかかる状況。
このままでは少年の救命は絶望的と判断した白石は、意を決して藍沢に電話で連絡する。
「お願い、まだいて・・・」
もはや他科の医師である藍沢だったが、電話で白石の窮状を一瞬にして察し、ドクターヘリで現場に急行。
機転の効いた応急処置で何とか救出に成功する。
翔北に搬送して脳外科で緊急手術を行い、落ち着いたところで父親が病院にスーツ姿で登場。
集中治療室に入ってきた父親に藍沢は、「息子さんが頭蓋内に外傷を負っていたので手術をした」ということをその場で一言伝え、父親は息子のところへ向かう。
人工呼吸器に繋がれ、全身を包帯で巻かれて変わり果てた息子に父親は
「痛かっただろう」
「一緒にいてやれなくてごめんな」
「お父さんは仕事ばかりで・・・」
と、ベッドサイドで泣き崩れる。
救急部を離れ、一見興味すら失ったように見えた藍沢が、再びドクターヘリに乗り現場に復帰する。
コードブルーファンにとってはたまらない、最高の滑り出しである。
しかしその後の父親への藍沢の対応は相変わらずクール。
これで大丈夫か?というレベルである。
また、遅れてきた父親が変わり果てた家族の元にやってきて泣き崩れる、というのは、まさに医療ドラマでよく見る「あるある」のシーン。
だが実はこういうことは実際にはあり得ない。
実際にはどうなのか?
藍沢はどうすべきなのか?
少しだけツッコミを入れておこう。
家族の急変に対する普通の反応とは?
私の仕事でも緊急手術が非常に多い。
慌ててやってきた患者さんのご家族が、緊急手術が終わった後に話すこともできなくなった患者さんと対面する際に立ち会うことはよくある。
しかし、もしドラマのような状況でご家族が病室にやってきたら、必ず患者さん自身ではなく医者に詰め寄り、
「何があったんですか?」
「どんな病気ですか?」
「どんな手術したんですか?」
「助かるんですか?」
「いつまで入院ですか?」
と質問攻めにするのが普通である。
そして緊急手術だと、ご家族にとっては医者と術後に初対面となるので、
「こいつは本当にちゃんと治療してくれたんだろうな!?」
「まさか手術ミスとかしてないだろうな!?」
と、まず不審感半分で見るのが当たり前だ。
出てきた相手が若い医者なら余計にそうである。
突然の家族の危篤を知った人というのは、そのくらい簡単に状況を飲み込めないし、冷静でいられないのが当たり前である。
こうなってしまうと病状の説明が難しくなるので、緊急手術後はまず患者さん本人に会ってもらう前に別室に案内し、画像を見せたり検査結果を見せたりしてゆっくり状況を説明する。
質問には丁寧に答え、患者さん本人に会う前に疑問が残らないようにする。
それからようやくご本人と対面してもらう。
ここで医師とご家族との間で信頼関係が築けなければ治療はうまくいかない。
私は緊急手術の際はご家族の到着が夜遅くなる場合でも、必ず到着まで待って自分で病状を説明をするようにしている。
それができなければ必ず電話で自分の言葉で直接説明する。
当直医や看護師よりも、やはり直接治療した自分が説明する方がちゃんと意図が伝わるだろうと思うし、何よりご家族とここで信頼関係を築くことが一番大切だと思っているからだ。
まあもちろんドラマなので、そんなところまで描いている尺もないだろうし、今作のテーマでもないので突っ込んでも仕方がないのだが・・・。
というわけで藍沢先生に言いたいことは
クールで無口なのはかっこいいのだけれど、ここだけは饒舌になってください
ということである。
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細かいツッコミ
コードブルーのリアルさは他の医療ドラマの追随を許さないほどハイレベルである。
これをわかった上で、あえて揚げ足をとるような細かいツッコミを入れてみようと思う。
気づいた方がおられたかもしれないが、脳外科部長の部屋に日本外科学会の公式英文雑誌「Surgery Today」がたくさん並べてある。
これは脳外科疾患を取り扱わない雑誌で、日本外科学会に入っている脳外科医はたぶんほとんどいないのではないかと思う。
「外科」というとひとくくりに考えがちだが、日本外科学会のカバーする範囲は消化器、呼吸器、乳腺、心臓である。
昔はこれらの疾患を全て「一般外科」として同じ科の医者が診ていた歴史の名残である。
余談だが、近年ではきわめて専門性の高い領域となった呼吸器外科や心臓外科、乳腺外科の医師らが、消化器を学ぶ必要があるのか?という疑問が生じつつあるのも事実。
だが脳外科ともなると、昔から全く別の畑なので、毎年の学会に脳外科医が参加しているのもこれまで一度も見たことがない。
脳外科部長の西条先生には、とりあえずSurgery Todayを片付けて、日本脳神経外科学会の公式英文誌に変更しておくよう、来週までに私から言っておきます。
完全にどうでもいいツッコミである。
ということで、第1話の感想はここまで。
ここまで突っ込んでおいても、やっぱりコードブルーは面白い。
次回も楽しみである。
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