胃がんで抗がん剤治療を初めて受ける人は、
入院しないといけないのか?
通院ならどのくらいの頻度か?
どんな副作用があるのか?
髪は抜けるのか?
不安なことが非常に多いと思います。
初めて胃がんの抗がん剤治療を受ける場合、その目的は3つにわけることができます。
①術後補助化学療法:手術で胃がんを取りきった後の再発予防
②一次化学療法:手術では取りきれない胃がん(ステージ4)や、術後に再発した胃がんに対する治療
③術前化学療法:手術で取りきることを前提として、術前に前もって行う治療
これらは、全く目的が違いますので、みなさんは自分がどれに当たるのかをまず把握しましょう。
今回はこの中で、術後補助化学療法について説明します。
術後補助化学療法が必要な人とは?
胃がんの手術後、切除した癌を顕微鏡で検査します(病理検査)。
その結果、最終的なステージ(進行度)が決まります。
これがステージ2以上なら、再発を予防するための抗がん剤治療が推奨されます。
これが術後補助化学療法です。
術後6週間以内に開始します。
ここでよく用いられるメニューは以下の2つです。
・飲み薬の抗がん剤を1年間
・飲み薬と点滴の併用を半年間
治療の流れと日常生活
病院の方針にもよりますが、どのメニューでも外来治療が一般的です。
点滴の抗がん剤の場合は、病院に来て点滴を数時間して帰る、というパターンです。
内服薬の抗がん剤の場合は、もちろん入院は不要です。
いずれにしても、多くの方が家事や買い物、仕事などを普段通りされています。
共通の副作用と対応
まず最初に、副作用に対する対応についての原則です。
基本的に抗がん剤治療は、副作用に必死に耐えながら続けるものではありません。
生活に支障のない範囲で行います。
幸い、昔と違って今は副作用を予防したり軽くしたりする有効な薬が非常に多くあります。
また生活に支障が出るような副作用が出れば、抗がん剤を減量するなり、一旦休憩(中断)するなりします。
次に、どの抗がん剤でも起こる共通の副作用とその対処法について触れておきます。
ほとんどの抗がん剤で、吐き気、全身のだるさ、食欲の低下、骨髄抑制が起こります。
吐き気については、現在非常に多くの種類の有効な予防薬があります。
特に点滴治療の場合は、抗がん剤の点滴をする前に吐き気止め(制度剤)の点滴をします。
これでも吐き気が出る場合は、他に飲み薬の吐き気止めを追加するなど、戦略はたくさんあります。
ことさらに心配する必要はないでしょう。
倦怠感や食欲の低下には個人差がありますが、徐々に慣れてくることが多く、多くの場合は生活に大きな支障をきたすほどではありません。
「骨髄抑制」は難しい言葉ですが、大きく問題になるのは白血球減少です。
骨髄は、血液の成分である血球を作る工場です。
抗がん剤は、この工場の正常な細胞も攻撃するため、工場からの血球の出荷が減ってしまいます。
白血球が少なくなると、免疫力が落ち、感染に弱くなり危険です。
抗がん剤治療中は定期的に血液検査をして、白血球が減少していないかを確認します。
一定以下になると、感染のリスクを考慮して抗がん剤を一旦中止したり、白血球を増やす薬を使ったりします。
白血球減少が起こっても、抗がん剤治療を中止すれば、多くは1週間以内に正常の範囲に戻り、抗がん剤治療を再開できます。
時に長引く場合もありますので、その場合は正常範囲に戻るまで抗がん剤は中断します。
なお、胃がんの術後補助化学療法で脱毛の副作用が目立つものはありません。
ただし、上述したステージ4や再発胃がんに対する治療で用いる抗がん剤の中には、脱毛が強く出るものも中にはあります。
抗がん剤のメニュー
ここではメニューと書きましたが、正しくは「レジメン」と呼びます。
前述した通り、
・飲み薬の抗がん剤を1年間
・飲み薬と点滴の併用を半年間
の2つのパターンがあります。
効果に大きな差はありませんが、後者の方が期間が短い反面、副作用はやや強い傾向があります。
飲み薬の抗がん剤
ティーエスワン(TS-1、S-1)という内服薬を使用します。
日本で開発され、歴史もある安全で効果の高い薬です。
これを1年間飲み続けます。
飲み方としては、4週間内服、2週間休む、というサイクルを繰り返します。
副作用が強く出る場合は、2週間内服、1週間休むという短いサイクルに変えたり、分量を減らしたり、などで対応します。
通院の頻度は、開始時は1週間〜2週間に1回ですが、安定すれば、その後は1ヶ月に1回程度に伸ばします。
特徴的な副作用に、手足症候群があります。
手のひらや足の裏が赤くなり、ピリピリした痛みが現れます。
また炎症によって腫れたり、皮がむけたりすることもあります。
これらはぬり薬による予防・治療が大切です。
こういう変化があれば、すぐに担当の医師に報告しましょう。
その他、口内炎、下痢、味覚障害があります。
口内炎はぬり薬で、下痢は下痢止めなどで対応します。
味覚障害は予防が難しいため、強く現れた場合は抗がん剤の量を減らしたり、中止するなどして対応します。
飲み薬と点滴の併用
ゼローダ(カペシタビン)という内服薬と、オキサリプラチンという点滴を併用します。
通称、XELOX(ゼロックス)療法と呼ばれるレジメンです。
点滴は3週間に1回のサイクルで行います。
内服薬は、その3週間のサイクルの間に、2週間内服して1週間休みます。
このサイクルを8回繰り返しますので、全24週、約半年となります。
点滴の日が通院日ですので、3週間に1回通院することになります。
ゼローダという薬は、ティーエスワンと概ね同じ成分を有する薬です(体内で吸収される際の挙動が少し異なります)。
よって、前述した手足症候群を含む、ティーエスワンとほぼ同じ副作用が生じます。
一方オキサリプラチンに特有の副作用として、末梢神経障害があります。
手足の指先の感覚神経の障害で、ピリピリ、ジンジンといった感覚の異常が起こります。
軽い段階で抗がん剤の量を減らしたり、中止することが必要です。
必ず担当の医師に伝えましょう。
以上が術後補助化学療法の解説です。
このページで大体のイメージはつかめましたでしょうか?
詳しいことは、担当の医師に尋ね、抗がん剤開始までに疑問を解消しておきましょう。