どんな症状が出れば胃癌を疑ったらいいの?
誰もが気になる疑問です。
しかし初期の段階では、後述するようにまれに症状が出ることがありますが、ほとんどの場合は無症状です。
したがってこの段階で胃癌を見つけるためには、症状がなくても検診を受けなくてはなりません。
医療情報サイトや書籍でときに「胃癌の初期症状」という言葉を見かけますが、初期の段階ではほとんど症状がありませんので、少し矛盾した言葉です。
これから説明するような症状が出た場合、胃癌が原因であればそれなりに進行した癌(ステージの進んだ癌)があることを意味します。
しかしどの症状も胃癌以外の病気でも起こりますから、症状だけで胃癌を疑うことはできません。
いずれもありふれた症状なので、ことさらに癌を恐れる必要はありませんが、該当する症状があって検診を受けたことがない、という場合は一度受診をお勧めします。
では胃癌の症状を順にチェックしていきましょう。
心窩部痛、むかつき、逆流症状
いきなり難しい言葉がでてきましたが、心窩部とは「みぞおち」のことです。
心窩部痛とは、簡単に言えば「胃が痛い」という症状のことです。
「胃のむかつき」や「逆流、上がってくるような感じ」と表現されることもあるでしょうし、「げっぷ」という症状になることもあります。
胃癌は、ある程度進行すれば胃の壁に潰瘍を作ります。
この潰瘍が痛みやむかつきの原因になります。
ただ早期の胃癌は、ときに胃潰瘍を作ったり治ったり、ということを繰り返すことがあります(癌は治りませんが、潰瘍ができたり消えたりを繰り返します)
。
「悪性サイクル」と呼ばれています。
胃癌のこの性質によって、早期癌であっても偶然潰瘍を形成して痛みを伴えば、それが検査のきっかけとなって早期の段階で胃癌が見つかるケースがあります。
余談ですが、大腸癌では潰瘍を形成しても痛みはありませんので、潰瘍による症状をきっかけに大腸癌を見つけることはできません。
大腸癌の症状はこちら
食欲低下、吐き気、嘔吐
胃に進行した癌があると胃の蠕動運動が落ちるため、食欲が落ち、食事が摂りにくくなります。
食欲が低下することで、体重が減ります。
数ヶ月という短い単位で5kg、10kgと不自然に体重が落ちている場合は要注意です。
また、胃癌は胃の出口付近にできることが多いです。
胃の出口は「幽門」と呼ばれ、胃から食べ物を十二指腸へ少しずつ送り出す「門」ですので、もともと狭い通り道になっています。
この部分に進行した癌ができると容易に門がつまってしまいます。
これを「幽門狭窄」と呼びます。
こうなると食べたものが胃からうまく出ていきませんので、食事がほとんど摂れなくなったり、食べるとすぐに嘔吐する、というような症状が現れます。
黒色便(タール便)
胃癌ができた部分は、少しの刺激でも出血しやすくなっています。
胃癌から出血すると、血液が便に混じって出てくることになります。
大腸癌でも同じことが起こりますが、大腸で出た血液は便に混じれば便が赤くなります。
しかし胃癌の場合は便になるまでの過程でヘモグロビンが変化し、色が黒くなります。
これを「タール便」と呼びます。
タールのように真っ黒な便が出るからです。
異常なほど真っ黒な便が出ている場合は要注意ということになります。
ただし鉄剤を内服している方は、鉄剤の影響で便が普段から真っ黒で、血液が混じっているかの見分けがつきませんので注意が必要です。
また持続的な出血があるため、進行した胃癌の方の多くは貧血になります。
重度の貧血があれば立ちくらみや倦怠感の症状が出ますが、軽いものであれば貧血でも症状はありません。
検診などの血液検査で軽い貧血を指摘されている、という方は必ず精密検査をおすすめします。
同じことは大腸癌でも起こります。
原因のわからない貧血が見られた場合、我々医師は精密検査として胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)と大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)をあわせておすすめするのが一般的です。
繰り返しますが、これらの症状は全て胃癌以外でも起こります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃炎、胃食道逆流症(逆流性食道炎)など、むしろ胃癌以外のことの方が、頻度的には多いです。
ですから、つい最近胃カメラで検診を受けた、というような方は、あわてて病院に行って胃カメラを繰り返す必要はありません。
ただ、これまで長い間検診を受けていない、というような場合は必ず受診することをおすすめします。
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