私の専門分野である消化器癌(大腸癌)の症状について詳しく解説します。
お腹の症状や、便の異常があったとき、「自分はもしかして大腸癌では?」と不安になる方がいるのではないでしょうか?
最近、いろいろな医療情報サイトや書籍などに「大腸癌の初期症状」という言葉が書かれてあるのを目にします。
大腸癌は、早期の段階ではほぼ症状がないのが普通ですので、「初期症状」というのは、少し矛盾した言葉です。
早い段階で見つけるためには、自覚症状が出る前に検診を受ける必要があります。
大腸がんの検診について知りたい方はこちら
今回説明するような症状がある場合、もしその原因が大腸癌なら、それなりに進んだ癌である可能性があります。
このページでしっかりチェックしてみてください。
血便
便に血が混じる症状です。
癌があると、その部分は容易に出血するため、便に血がつく、ということが起こります。
直腸癌のように、肛門に近い部分の癌の場合は、真っ赤な血が多量に出ることもあります。
ただし、大腸は1.5〜2メートルとも言われる長い管状の臓器なので、上行結腸や盲腸のように、肛門から遠い位置にある癌は血便が出にくい(あるいは黒い便がでる)、ということもあります。
一方、血便が出たらすなわち大腸癌のサインか、というとそうではありません。
頻度的には、血便の原因で最も多いのは肛門からの出血、つまり痔核(ぢ)です。
その他、憩室出血(憩室と呼ばれる大腸のくぼみから出血する)という頻度の高い病気もあります。
大腸癌は40歳台から増え始め、60 歳台で最も多くなります。
該当する方は、便の色や性状はいつも確認する癖をつけましょう。
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便が細くなる(便柱狭小化)
S状結腸〜直腸のような肛門に近い部分の大腸癌の場合、便が細くなるという症状が現れます。
大腸癌は大きくなると、管の表面を円弧を描くように一周して広がるので、その部分で便の通り道が細くなります。
便が細くなるくらいの症状が出ている場合、それなりに癌が大きく進行している可能性が高いと考えられます。
すぐに精密検査が必要です。
ただし、血便の場合と同じように、上行結腸や盲腸のように肛門から遠い位置にある場合、その部分を通る便は下痢状なので、便が細くなるという症状は出ません。
盲腸に大きな癌があったのに便は正常に出ていた、というのはよく経験することです。
便秘、お腹が張る
大腸癌が大きくなると、その部分を便が通りにくくなるので、当然便秘が起こりやすくなり、お腹が張るという症状が出ます。
さらにひどくなると便が完全に詰まってしまう、腸閉塞(イレウス)という状態を引き起こします。
大腸癌による腸閉塞は命にかかわる重大な病気です。
腸閉塞は、腹痛が生じるとともに、お腹が張って全く便が出ないどころかガス(おなら)も出ないというのが特徴的な症状です。
ただ、便秘自体はありふれた病態ですので、これだけで大腸癌を直接疑うわけではありません。
重要なのは「排便習慣の変化」です。「これまでは便秘ではなかったのに」「食生活が変わったわけではないのに」という場合は要注意です。
ちなみに、「おならがよく出る」は大腸癌の兆候ではありません。
おなら(排ガス)は、ほとんどが口から飲み込んだ空気ですから、早食いの方や食べる時に空気を飲み込みやすい方はおならがよく出ます。
おならが出ないことの方が問題です。
その他の症状
体重減少
どんな癌も同じですが、癌が大きく進行すると体重が減ってきます。
短い期間で体重が減っている場合は非常に注意が必要です。
かなり進行した癌がある可能性があり、すぐに精密検査が必要です。
痛み
大腸癌がすでに他の臓器に転移している場合(ステージ4)や、その場で大きく進行している場合に痛みが出ることがあります。
例えば、頻度は多くありませんが背骨(椎骨)に転移した場合は、背中の痛みや腰痛が現れます。
また癌がお腹の中で大きくなり、他の臓器を圧迫してお腹の痛みを生じる場合もあります。
いずれも非常に進行してから見つかるケースに限ります。
大腸癌の「初期症状」という言葉はありません。
上記のような症状が出ている場合は、大腸癌のせいであるなら進行癌である可能性が高くなります。
ただし、症状が出ているからすべて「手遅れ」「末期」というわけでは決してありません。
ステージ(進行度)にもよりますが、多くの場合、すぐに治療を始めれば進行癌であっても手術でしっかり取りきることができます。
すぐに病院を受診し、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)などの精密検査を受けましょう。
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