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医療ドラマに学ぶ意識障害の原因、意識レベルの意味、JCS、GCSの違い

「意識レベル」という言葉は、医療ドラマで頻繁に出てきます。

「意識レベル300です!」

というようなセリフは、何度も聞いたことがあるでしょう。

コードブルー3 |意識レベル、バイタル、SpO2とは?どうなると危険?」の記事で、意識レベルは大切なバイタルサインの一つであることを説明し、JCSについて簡単に説明しました。

しかし実は、意識レベルの解説としてはこれでは不十分でした

医療ドラマでは、

「意識レベル、E4V1M3です」

のようなセリフも出てくるからです。

100や200といった単純な数字ではなく、アルファベットと数字で組み合わせた意識レベルの表現方法もあります。

これをGCSと呼びます。

何が違うのでしょうか?

今回は、意識障害の原因と、意識レベルについて分かりやすく説明します。

 

意識レベルとは?

「意識レベル」とは、意識状態を正確に表現したいときに私たちが使う言葉です。

単に「レベル」とだけ言っても、「意識レベル」のことを指します。

医療ドラマでも、

「レベルは?」

と尋ねたり、

「レベル低下しています!」

と言うシーンはよく目にしますね。

 

意識レベルは数字で表現します。

「意識がはっきりしている」

「意識がもうろうとしている」

「昏睡状態だ」

といった、主観的であいまいな症状の表現の仕方では、意識の状態について正確な情報が伝えられないからです。

 

意識レベルを表現する方法は2つあります。

JCSGCSです。

 

JCSとは?

JCSとは「Japan Coma Scale」の略です。

名前を見てわかるように、我が国で生まれた日本式の評価方法です。

「Coma」とは「昏睡」という意味です。

「意識レベル300です!」

は、JCSを使った表現です。

JCSでは、意識状態を0、1、2、3、10、20、30、100、200、300の10段階に分けます。

数字が大きいほど悪くなります

0、1、2、3は1桁

10、20、30は2桁

100、200、300は3桁

なので、シンプルに

「意識レベル3桁です!」

と言うこともできます(100〜300のどれかは区別できませんが、だいたいのイメージはわきます)

具体的に、どういう状態ならどの数字になるかは、以下の表をご覧ください。

Ⅰ. 刺激しなくても覚醒している状態(=1ケタ)

 0 意識清明(正常)

 1 今ひとつはっきりしない

 2 見当識障害(場所、時間、日付がわからない)

 3 自分の名前、生年月日が言えない

 

Ⅱ. 刺激すると覚醒する状態(=2ケタ)

 10 普通の呼びかけで目を開く

 20 大きな声、または体を揺さぶると目を開く

 30 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと目を開く

 

Ⅲ. 刺激しても覚醒しない状態(=3ケタ)

 100 痛み刺激で払いのける動作がある

 200 痛み刺激で手を少し動かす、顔をしかめる

 300 痛み刺激に反応しない

これはJCSという名前の通り、日本でしか通用しません

では日本以外ではどういう基準が使われているのでしょうか?

世界標準の意識レベルの評価方法がもう一つあります。

それがGCSです。

 

GCSとは?

GCSとは「Glasgow Coma Scale」の略です。

Glasgow(グラスゴー)とは、イギリスの町の名前です。

1974年にイギリスで発表され、今では世界標準となっている意識レベルの評価方法です。

この方法がJCSと大きく違うのは、意識状態を3つの観察項目に分け、別々に評価することです。

3つの項目とは、

開眼(Eye)

言語(Verbal)

運動(Motor)

の3項目です。

つまり、意識レベルを

開眼しているかどうか

ちゃんと話せるかどうか

手足が動くかどうか

の3つに分解して、それぞれを数字で採点するということです。

開眼機能(Eye opening)

4点:自然に開眼

3点:呼びかけると開眼

2点:痛み刺激で開眼

1点:開眼しない

言語機能(Verbal response)

5点:見当識がある

4点:意味のない会話をする

3点:意味のない単語を発する

2点:単語にならない声を発する

1点:反応なし

運動機能(Motor response)

6点:命令通りに手足を動かす

5点:痛み刺激を手で払いのける

4点:痛み刺激に対して四肢を引っ込める

3点:病的な屈曲運動(除皮質硬直)

2点:伸展反応(除脳硬直)

1点:反応なし

頭文字をとってE、V、Mとし、それぞれに点数を与えていきます。

やや厄介なのは、E、V、Mそれぞれで満点が違うことと、JCSとは逆でGCSは「数字が小さいほど悪い」ということです。

 

どうやって使うの?

JCSとGCS、どちらを使っても構いません。

ただ、上述の表を見ればわかるように、JCSの方がルールがシンプルです。

より迅速に判断しやすいため、病院に搬送する前の段階(プレホスピタル:病院前救護)で救命士(救急隊)が使用することが多いです。

救急隊の方が救急外来に患者さんを搬送した際に、意識レベルを医師に説明する際はもっぱらJCSを使います。

もちろん、救急外来や集中治療室など、院内でスタッフ同士でも良く使いますが、院内ではどちらかと言えばGCSが多い印象です。

GCSでは3項目それぞれを評価するため、丁寧さが求められます。

院内で落ち着いて意識レベルを判断する際に使うことが多い印象です。

 

意識レベルを評価する時は、上述した意識レベルの一覧表を頭に描きながら診察することになります

つまり、まず開眼しているかどうかを観察し、

「分かりますか?」

と声をかけ、応答があれば、

「お名前分かりますか?」

「ここがどこか分かりますか?」

「今日の日付は分かりますか?」

というように質問していきます(日付や場所が理解できる力を「見当識(けんとうしき)」と呼びます)。

医療ドラマで救急搬送された患者さんに、このように呼びかけるシーンはよくありますね。

逆に反応がなければ、痛み刺激を加え、どのくらい深い意識障害があるかを確認します。

痛み刺激を与えるシーンは、コードブルーでよく出てきます。

この細かいリアリティについては「コードブルー3 |意識レベル、バイタル、SpO2とは?どうなると危険?で解説しました。

 

救急の現場では、救急車が到着するとすぐに医師が迎えに出て、ストレッチャーで運ばれる患者さんの横について歩きながら診察するのが一般的です。

一刻を争う疾患かもしれず、わずかの時間も無駄にしないためです。

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意識障害の原因とは?

意識レベルは「バイタルサイン」ですので、あらゆる患者さんに対してまず確認すべき事項の一つです。

(同時に他のバイタルサイン=呼吸、循環に関わる項目も確認します)

全く意識障害がなければ、「意識清明(せいめい)」です。

JCSでは0、GCSではE4V5M6になりますが、意識清明ならこれを使わず「意識レベル、クリア」と言います。

 

意識障害があれば(意識レベルが低下していれば)、JCSまたはGCSで正確に評価します。

疾患によっては意識レベルが時間の経過とともに変動します

数字で評価していれば、その変化も客観的にわかりやすくなります

 

意識障害の患者さんが救急搬送されてきたら、その原因を考え、診断のために診察や検査を行うことになります。

中には治療の遅れが命に関わる、あるいは後遺症を残す疾患もあるため、迅速な対応を行わなければなりません

その際、即座に考えるべき疾患として私たちは、「AIUEOTIPS(アイウエオチップス)」という語呂合わせを良く使います。

どんな疾患があるか、参考に書いてみます。

A:alcohol(飲酒)

I:insulin(インスリン→低血糖/高血糖)

U:uremia(尿毒症→腎障害)

E:endocrinopathy(内分泌疾患)、encephalopathy(脳炎、脳症)、electrolytes(電解質異常)

O:opioid(麻薬)、overdose(薬物中毒)、O2(低酸素)

T:trauma(外傷)、temperature (低体温)

I:infection(感染症)

P:psychogenic(精神疾患)

S:stroke(脳卒中)、seizure(てんかん発作)、shock(ショック)

迅速さと丁寧さが求められる救急の現場では、一瞬で、かつ網羅的に原因を考える必要があります

そして次々と可能性の低いものを除外し、残ったものから適切な診断を得るために検査を行う、という流れです。

一つ一つ頭をひねって思い付いたものを除外する、という方法では見逃しの危険があります

 

特に注意すべきなのは、上述したもののなかで、複数の病態が重複しているときです。

たとえば、明らかに泥酔して眠り込んでいる患者さんが搬送されることはよくあります。

しかし「単なる酔っ払い」だと油断していると、実は酔って転んで頭を強く打っていたことがわかり、CTを撮ると頭蓋内出血があった、ということがあります。

「飲酒+外傷」のケースです。

コードブルー1st SEASONでは似たケースがあり、「コードブルー1st 第3話解説②|泥酔患者が怖い理由&手術を徹底解説」で説明しました。

 

また、自殺を目的に睡眠薬を自分で多量に飲んだ、という患者さんもよく救急外来に来ます。

本人は昏睡状態で、家族の人が20錠分くらいのPTPを持ってこられ、

「知らないうちにこんなに飲んでいました」

と言われると、

「薬物(オーバードーズ)のせいだな」

と思い込みがちです。

(PTPとは「press through pack:押して出す包装」、つまり「錠剤が入っている殻」の正式名称です)

しかし実は同時に脳出血も起こしていて、薬物の効果が切れているのに意識レベルが回復しない、ということも起こり得ます。

 

こういった見逃しやすい落とし穴も、考えられる疾患を網羅的に検索することで防ぐことができます。

また重複した意識障害の原因を見逃さないためにも、意識レベルを頻繁に測定し、その変化を確認することが大事なのです

 

今回は意識レベルや意識障害について解説しました。

一般向けの解説のつもりですが、ビギナーの看護師さんや研修医の先生にも参考になったのではないでしょうか。