外来でよく見る患者さん、4つのタイプと医師が伝えたいこと

医師として多くの患者さんと接していると、本当に様々な性格の方がいることを実感します

私たちは医師になるため基礎的な問診法を学びますが、当然それぞれの患者さんの性格に合わせて臨機応変に話す内容を変える必要があります。

しかし、特に外来診療の限られた時間で、あらゆる患者さんに満足感を与えるコミュニケーションを実現することは難しいものです

そこで今回は外来でよく出会う患者さんの例を挙げ、それぞれの方に前もって伝えておきたいことを書いておきます。

多くの方がどれかに当てはまるのではないかと思います。

 

不安で仕方がない患者さん

とにかく不安が強く、どんな検査や治療を提案しても、

「大丈夫ですか?」

「死にませんか?」

「リスクあるんですよね?」

と医師を質問攻めにしてしまう方です。

医師から「大丈夫です!」という言葉を聞きたいのですが、なかなか言ってもらえず、何となくはぐらかされたような気持ちで帰宅する

そんな経験がある方は多いでしょう。

 

もちろん、初めて受ける検査や治療に不安感を覚えるのは当然のことです。

しかし、リスクがゼロの検査や治療は存在しません

副作用や合併症が必ず一定の確率で起こり、その数%に当てはまる可能性は誰にでもあります。

ものによっては、重篤な副作用によって死に至るリスクのある治療もあります。

全身麻酔手術はその一つですし、抗がん剤など、大きな効果が期待できるものの副作用リスクも大きい、という薬もたくさんあります

 

よって、どれだけ安心感を得たいと思っても、医師は患者さんに「大丈夫です!」と自信を持って即答することは基本的にできません

無用に安心感を与え、万が一副作用や合併症が生じた時、トラブルに発展する恐れがあるからです。

 

よって、不安な時に医師から聞き出すべきなのは「大丈夫」という表面的な言葉ではなく、

副作用や合併症はどのくらいの確率で起こるのか?

どういうタイプの患者でそのリスクが上がるのか?

その条件に自分はどのくらい該当するのか?

といった客観的なデータです。

これをきっちり聞いておき、検査や治療の全容をはっきり把握することで不安感の軽減を目指すのが良いでしょう。

 

真面目で勉強熱心な患者さん

ネットや書籍を使って自分の病気を熱心に勉強される、非常に真面目な方です。

むろん、医師に治療を「丸投げ」するよりは、ご自身で勉強され、病気や治療について理解しておくことは非常に大切です。

 

しかし一方で、真面目すぎるせいで苦労される方もいます。

例えば、

あらゆる病気や症状に関して詳しい原因やメカニズムが分からないと不安になる

「原因が分からない」と言われると、医師の技能を疑う

といった方は結構います。

 

これについては「医者と患者はなぜ分かり合えないのか?4つの原因を分析」でも書いた通りですが、原因やメカニズムが分からなくとも、それに対する医学的に適切な対応は明らかになっている、という病気はたくさんあります。

また、最初は分からなくとも、徐々に経過を追うことで明らかになってくる、というケースも非常によくあります。

 

人間は非常に複雑な「ブラックボックス」のようなものです。

インプットとアウトプットの間にどんなメカニズムが働いているか未だに分からない、という事例はまだまだたくさんあります

このメカニズムを全て知っているのが専門家、ではなく、

インプットの引き出しを多く持っていて、かつ、それらのインプットによってどんなアウトプットが得られるかを多く知っているのが専門家

です。

ここは自身の不安を軽減するためにも、よく知っておいた方がいいポイントです。

 

もう一点、真面目な患者さんに知っておいていただきたいことは、

年齢を重ねるにつれ、「疾患」と「加齢」の境界が徐々にあいまいになってくる

ということです。

物忘れや認知機能の低下、骨や関節の痛み、心肺機能の低下、それに伴う行動力の低下、消化機能の衰え(食事量の減少)などは、誰もが避けられない加齢現象です。

しかし真面目な人ほど、

自分の努力が足りなかったのではないか?

腕の良い医師の力があれば元に戻せるのではないか?

と思いがちです。

 

むろん私たち医師は、疾病によっても起こりうるこうした変化をきっちり見つけて適切に治療する責務があります。

しかし、医師には「若返らせる力」がない以上、こうした不便さを完全に解消することはできません

名医は、加齢変化を受け入れつつ人生を楽しむことの「お手伝い」に長けている、と考えると良いのではないかと私は考えています。

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医療に詳しい患者さん

医療情報に非常に詳しく、医師の前で専門用語や業界用語を連発します。

医療者の間でしか使わないような略語なども駆使し、医師を驚かせます。

このタイプの患者さんには、

・医療関係者であり、実際に医療に詳しい人

・医療とは全く関係ないが、知識が豊富であることを暗に示しておきたい人

の2つのパターンがあると考えられます。

 

前者なら、医師側としても専門用語を遠慮なく使って話すことができます。

かえって説明が短縮でき、手間が省けるので説明がスムーズになる、というメリットもあります。

しかし医師にとっては、相手の素性が全く分からないのに「妙に詳しい」という状況は、一種の警戒心を生むリスクがあります

よって医療関係者であれば、それを明らかにしていただいた方がお互い安心して歩み寄れるでしょう。

しばらく関係ができた後に「実は相手が医療関係者だった」と分かることほど医師にとって当惑することはないからです。

 

一方、後者の場合は「あえて」専門用語を使うことで、言い方は悪いですが、「私はちょっと詳しいですよ」というアピールもあるようです。

この場合、実は用語の使い方に誤りが多く、かえって意図が伝わりにくいことが多くあります。

難しい言葉を使おうとせず、ご自身の言葉で伝えた方がよほど伝わりやすい、と思うこともあります。

専門用語の意味を十分理解していて、その方がコミュニケーションがスムーズに取れる、という言葉以外は、無理に専門用語を使わない方がいいだろうと私は思います。

 

積極的すぎる患者さん

医師と近い距離で接することを求める、非常に積極的な患者さんがいます。

付き添いで来ている家族を指して、

「この人もここが調子悪いらしいの、ついでに診てもらえない?」

と言ったり、普段から病院によく電話をし、担当の医師につないでもらって相談しようとしたりする方もいます。

メールアドレスや電話番号、住所を聞き出そうとする方もいらっしゃいます。

 

確かに、積極的に医師とコミュニケーションを取ろうとする姿勢は、良好な人間関係を築く上で重要です。

しかし、私はいつもそういう方を相手にする時、その背後に「遠慮がちで消極的な患者さん」の存在を意識します

「先生にこんなことを聞いたら迷惑だろうか?」

「相談したいけど今は忙しそうだからやめておいた方がいいだろうか?」

「家族の相談もしたいけど、自分にそんなに時間を取ってもらったら悪いだろうか?」

こう考える人もたくさんいます。

 

家族を「ついでに」診たり、電話相談を受け付けたりすることは、一見親切なようですが、積極的な方に手厚く対応し、控えめな方ばかりが損をする状況を作り出すことを意味します

積極的な方を優先することによって、受けられる医療サービスに不平等があってはいけません。

よって私は基本的に、全ての方に平等に、ルール通り受診していただくようお願いします

私自身も相手に気を遣って積極的に質問や相談をするのが苦手だ、というのも理由の一つです。

 

以上、外来で出会う患者さんの4つのタイプを見てきました。

ひとたび病気になると、不安や焦りで頭がいっぱいになってしまい、冷静な判断は難しいものです。

元気なうちにこうした知識を持っておくことで、医師と患者との距離を縮めておくことが大切だと私は考えています。

10 Comments

こりらっくま

医療面接は毎回がぶっつけ本番であらゆるタイプの患者さんに対応しなければならないので、相当な知識と会話技術が必要ですよね。
特に、本当は質問したいのに遠慮してしまう方への対応が難しいといつも感じています。
先生のご意見に賛同します。今後とも不公平のないように日々精進したいと思います。
よく、冗談半分で「ホスト(またはホステス)になりきる」のがプロだと周囲に話しています(笑)。

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けいゆう

おっしゃる通りです。
しかも数え切れないほど多種多様な人と触れ合うことになり、かつそれが命を左右することもあるわけですしね。
確かに、ある意味ホスト(ホステス)とその点では共通していると言えるかもしれませんね。

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たぬきち

幅広い世代(特にシニア世代)に、先生のコラムを読んでほしいなぁと思いました。

私の職場でも シニア世代が体の不調の話をよくするんですが、
「その症状ならあの病気だ!」とか「私もなったから間違いない!」「あの病院が専門だ」などなど、なんちゃってお医者さんごっこがすごいです(-_-)

そしてその井戸端会議系のウワサをみんな信じ、あの医者は見つけきらなかった…などと今度は病院の査定です。
聞いててウンザリします。

私は自分も受診するし、子ども達を病院に連れて行きます。
子どもの高熱が数日続いて、検査しても原因がわからないことなんかありがちだけど、私の両親世代は「病名」と「原因」を知りたがります。
診察や検査ではっきりわかる病気もありますが、十数年 子育てしてきて、たっくさん病気にもなりましたが、病名と原因がわかった病気の方が少なかったです。

先生のコラムにもありましたが、しばらく経過をみて「その病気だったのか」と、わかることもあるし、ウワサやクチコミに騙されず、お医者さんとの信頼関係を作って欲しいなぁと、身近なシニア達を見ていて思います。

シニア世代に偏った話ですみませんm(_ _)m
地域性なのか、小児科以外の病院はお年寄りばっかりなので…高齢化社会ですね…

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けいゆう

分かります、私もシニア世代に向けて書いている部分はあります。
逆に、このブログを頻繁に読む方やSNSなどで情報収集しているような世代は、ある程度医療に関して知識があるので、こういう記事を読む必要がなかったりします。
ある年齢より上の世代は、本当に価値観が凝り固まっているので、診察室での会話だけでそれを修正するのはまず不可能な気がしています。
ネットを通して何年もかけて情報発信していくことが大事なのだと思いますね。

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anemonefish

先生、更新ありがとうございます。

医師と患者の適度な距離感をとるのはお互いのためだとも思いますが、その「適度な距離」が一人ひとり様々であり、お互いに「置かれている状況」も刻々と変わっていくのもまた難しいところでしょうか。

私は息子を妊娠する前まで電鉄系ホテルで11年働いていて、大半を宴会予約を担当していました。
あまり馴染みのない部署かもしれませんが、「ブライダルプランナーとほぼ同じ」感じで、結婚式以外の宴会、株主総会や各種会議、パーティの予約受付と打ち合わせ、手配という仕事です(1年だけ結婚式もやりました)。

今回のエントリー内容は宴会のお客様、特に結婚式のお客様にも当てはまります。

病気を「結婚式」に、患者さんを「新婦(新郎)」に入れ替えると、もうそのままです(笑)

宴会は主催の企業・団体も多種多様で主旨も様々、幹事様も偉い方から若手まで色々なので、私も4年目位までは対応に苦慮することがありました。

私がよく思っていたのは「ホテルスタッフは願いを叶えてくれる魔法使いか青い猫型ロボットだと思っている」方がよくいるな、でした。

経験を重ねると大概の要望にも驚かなくなりますし、どんな要望もなんとかして叶えようと努力もします。
しかし、「100名がリミットの会場に130名入るようにして欲しい」や、「宴会の予約日を間違えてしまったからなんとかして欲しい」など、物理的に無理な事を当たり前のようにおっしゃられてしまうのは困りました。

あとは、「ホテルスタッフを自分の部下や奴隷の様に思っているお客様」も結構いました。

電話に出たら「○○会社の✕✕だけど、鈴木いる?」と担当スタッフを呼び捨てにするお客様がいました。
夜20時ぐらいに来館して「明日の朝の会議に使う資料だから、10枚ずつセットにしてホチキス止めしておいて」と200名分以上の資料作りを無償で依頼してくる某議員秘書もいました…。

自分の仕事の経験を通して、相手が「先生」と呼ばれる方であろうとコンビニやカフェの店員であろうと相手はひとりの人間であることを忘れないよう、丁寧に生きていきたいと学びました。

いやほんとに、世の中本当に色々な方がいらっしゃいますよね…。

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けいゆう

なるほど…それは興味深いですね。私は全く門外漢とはいえ、何となく分かる気がします。
例に挙げられているのはかなり迷惑な顧客に思えますが、そこまでのクレーマーでなくとも、悪気なく近い距離感を求めたり、過剰なサービスを求める方はどこの業界にもいるんだと思います。今回の記事についてはSNS上でも、農家の機械修理に出した時も同じ、といった意外な共通点を指摘してくれた人もいますので…
私たちも様々な方を相手に仕事をするので、全員に画一的な対応を求めるつもりは全くありませんが、ある人のせいで別の人が被害を受ける、ということだけは内容にしたいと思っています。

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たまこ

今回も興味深い記事ありがとうございます!

医療者、の中にMRや医療機器営業は含まれるのかどうか、少し気になったのでコメントしました(笑)
入らない、で正解ですよね?

親戚入院中に、私の担当分野の領域において相談をしたかった際には医療系の営業だと明かしたことはあるのですが、その時ですら出しゃばってどう思われるのか少し憚られてしまい、普段も聞かれない限り言ったことがないです。
患者側やその付き添いの場面で自然と専門用語がでたりした際に医師側から医療者かどうか聞かれることがよくあるので、その際は営業ですと言うのですが、私は女性なのもあるのか看護師を前提に疑われます。

けいゆう先生は同じような場面に遭遇されたことはありますか?

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けいゆう

「医療に詳しい患者さん」のくだりはあくまで私の個人的な意見ですが、「出しゃばってどう思われるのか少し憚られる」というような感覚の方は態度で分かりますので、警戒心を抱く対象にはならないです。私がこの記事で想定している方とは全然違いますのでご安心ください笑
MRさんや医療機器メーカーの方も結構最初に言ってくださる方が多いです。自然に専門用語が出るくらいであれば特にそうなのかもしれませんし、こちらとしてもそれに対して「でしゃばって」と思うことはないですね。

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メイ

前回の「医者と患者はなぜ分かり合えないのか?」とあわせて、興味深く読ませていただきました。
私は、強いて言えば「不安で仕方がない患者」で、しかも「不安を口に出せない患者」です。
そんなに人見知りではないのですが、医師や看護師の皆さん=とにかくお忙しい、と思っているので、「こんなことを聞いたら迷惑かもしれない」「間違ってるかもしれない」などと思い、必要最低限のことしか話せません。(かかりつけ医には話せますが)

でも、先生方の立場を考えれば、初診ならどんな性格の患者がくるのかわからない中で診察をされるわけで、 もしかしたら緊張したり嫌な思いをすることもあるのかもしれないな、と思いました。

なんらかのご縁があって対面していると考えて、お互い歩み寄れたらいいですね。

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けいゆう

ありがとございます。
そういう方は多いと思いますよ。
それゆえ私たちは様々な性格の方がいることを想定して話す必要があるし、一辺倒の対応ではダメなんですよね。
特に積極的な方には手厚くしがちな人がいますが、私はよくないと思っています。

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