何か症状があって近くのクリニックや病院に行くとき、皆さんはどんな準備をしますか?
緊急時を除き、病院に行く時は、前もってきっちり準備を整えてから受診する方がスムーズに診察を受けることができます。
今回は、良い医療を受けるために事前に準備しておいた方が良いことや、気をつけるべきことを紹介します。
服装に注意する
とにかく、症状があるところを露出できる格好で受診することが大切です。
そんなの当たり前だ、と思うかもしれませんが、患部を診察するのが非常に難しい格好で外来に来られる方は結構多くいます。
たとえば、「血便が出ている、痔かもしれない」と言って受診された方が、太ももまである、きついガードルを履いていたことがあります。
全部脱がなければ肛門が診察できず、診察に時間がかかり、患者さんも脱ぎ着が大変でした。
また、「お腹が痛い」と言って受診された方がワンピースだったこともあります。
ワンピースだと、どうしても服の上からしか診察できません。
お腹の音を聞くために聴診器を当てようにも、下から全てめくり上げるわけにもいかず、服の上から聴診器を当てるので音が聞きにくくなります。
もちろん胸の聴診はもっと大変です。
足首を診てほしい人がストッキングを履いていたこともありますし、腕を診てほしい人が腕まくりの難しいタイトな服だったこともあります。
いずれも完全に脱いでしまわなければ患部が見えず、お互い大変です。
多くの方は病院だけが目的で家を出るわけではないため、意識しなければ診察の難しい服装になってしまう可能性があります。
病院に行く時は、「診察してほしい部分を全て露出できる格好」で受診するのが理想的です。
複数の場所を診てもらいたい場合は特に気をつけてください。
服装については以下の記事もご参照ください。
女性に聴診器を当てる時はブラジャーを外すべき?受診時に注意すべき服装
お薬手帳を持参する
受診時にはお薬手帳を必ず持参しましょう。
なぜお薬手帳が大切か知っていますか?
単に薬の飲み合わせを確認するためのもの、と考えている方が多いのではないでしょうか?
実は医師にとってお薬手帳は、薬の飲み合わせ以外にも非常に多くの情報が得られる貴重なツールです。
たとえば外来で、
「これまで病気をしたことがありますか?」
と尋ねると、
「なんにもないよ」
と答えが返ってきたのに、お薬手帳を見るとたくさんの薬を飲まれているケースは非常によくあります。
私が薬を見て、「高血圧と糖尿病があるんですね」と言うと「そうそう、薬が多くて困るんだよ」と返ってきます。
実は、特に症状のない持病を全て余すことなく説明できる方は多くありません。
しかしお薬手帳を見せてくれさえすれば、その情報の大部分は容易に手に入ります。
さらに、たとえば高血圧や糖尿病の薬の種類や数によって、その病気がどの程度悪いかまでしっかり分かります。
また、お薬手帳にはたいてい、かかった病院名と医師名も書かれてあるため、私たちは、
「○○病院の△△科のA先生が、□□という薬を処方している」
というところまで読み取ることができます。
これによって、A先生はどんなことを考え、どんな診断をしたのか、といったことまで推測できます。
医師はお薬手帳を見るだけで、患者さんが自力では説明できない、かなり多くの情報を得ることができるわけです。
お薬手帳を持っていない方は、かかりつけ医に相談してきっちり作っておくことをお勧めします。
なお、もし病院に行く際にお薬手帳がないことに気づいた方は、飲んでいる薬をそのまま持参してください。
当然お薬手帳には劣りますが、場合によっては薬の種類が分かるケースもあります。
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これまでにかかった病気を把握しておく
上述のポイントと少し重なりますが、これまでにかかった病気についての情報を全て説明できるようにしておくのが無難です。
突然尋ねられると、意外とすぐには思い出せないからです。
「大きな病気はしたことがないよ」と言われてお腹を診察したら手術の傷跡がある、といったことはよくあります。
また、病名を覚えていても、それが「いつだったか」を突然聞かれると思い出せないこともあります。
何年前にかかったのか、何歳の時にかかったのか、なども可能な限り説明できるようにしておきましょう。
手術を受けたことがある場合は、どういう病名でどんな手術を受けたのか、わかる範囲で説明できるようにしておくのが良いでしょう。
これらのことは、突然聞かれると答えにくくても、事前に準備していれば簡単に説明できる、というポイントではないかと思います。
ご高齢の方は自分で説明することが難しいケースもあります。
その時は、付き添いのご家族が正確に説明できるよう、事前に把握しておくことをお勧めします。
なお、受診時には必ず問診票を書くことになります。
問診票には「どんな症状がいつからあるか」をまず書きます。
その後、これまでした病気(既往)、内服薬、アレルギー、家族(血縁者)が大きな病気をしたことがあるか、妊娠の有無などを書くことが一般的です。
これらにもスムーズに答えられるようにしておきましょう。
医師に会う時に症状がなくてもよい
病院ではよく、
「今までずっと症状があったのに待合で待っているうちに症状がなくなってしまった!症状がある時に診てほしかった!」
と悔やまれる方がいますが、あまり心配しなくていいケースがほとんどです。
「症状がずっと持続しているのはなく、時に改善することがある」という経過自体が重要な情報です。
また、診察する瞬間に症状がなくても、これまでの経過や診察した所見から適切な解釈は可能です。
症状に波があるなら、おそらく症状が楽になったときの方が受診しやすいはずです。
自分が受診しやすいタイミングで受診してください。
誰しも、病院に行くことはそれなりの心理的ストレスを伴う行為です。
事前にこれらの準備をしておき、余裕を持って受診できるのが理想的だと思います。
以下もご参照ください。
救急車を呼ぶ前に知っておくべき4つのこと・呼んだ後に準備すべき持ち物