全身麻酔手術、方法/前日の準備/麻酔の影響など体験談を交えて解説

私は外科医として全身麻酔で手術をする機会が多いのですが、私自身も全身麻酔手術を受けたことがあります(外科医になってからです)。

医師の立場、患者の立場の両方から、全身麻酔手術について詳しく説明したいと思います。

 

全身麻酔で手術を初めて受ける方は、非常に不安が大きいだろうと思います。

外科医として1000を優に超える手術を行ってきた私でも、初めて自分が全身麻酔を受けるときはとても緊張しました。

全体的な流れがよくわかっている私ですらこうですから、全く全身麻酔のイメージがない方なら不安が強くて当然だろうと思います。

今回の説明を読んで全体のイメージをつかんでいただき、少しでも不安を軽くできればと思います。

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入院から手術まで

医療スタッフからの説明

全身麻酔手術の場合、病院にもよりますが、1〜2日前に入院することが一般的です。

入院後は担当の外科医から手術内容の説明があり、同意書などにサインをします。

また麻酔科医からも全身麻酔に関する説明があり、こちらも同意書にサインが必要です。

術前の説明には必ずご家族が同席するようにしてください

ご家族の方々も、患者さんがどんな手術を受けるのかしっかり理解しておくことが大切です。

そのほか、病気によっては薬剤師理学療法士などほかの医療スタッフから説明があることもあります。

わからないことがあれば、その場できいて解決しておくようにしましょう。

また必要に応じて血液検査レントゲンなどの検査を行うこともあります。

 

食事について

病院の方針にもよりますが、多くの場合は前日の夕食まで摂取可能です。

ただしこれは病気によります。

たとえば胃や大腸など消化管の手術を行う前は、もう少し早い段階から絶食になることがあります

病状によっては、前日は1日中絶食となることもあるでしょう。

主治医に確認しておきましょう。

また、水分はもう少し後まで摂取可能です。

手術が午前に行われる場合は、当日の朝6時頃までは水分摂取は可としている病院が増えてきましたが、前日24時以降は不可など厳しいところもあります。

手術が午後であれば、当日朝9時までは摂取可とされていることが多いです。

ただし、飲むのはお茶スポーツドリンクなどにしてください。

果汁のジュースや飲むヨーグルトなど、胃に残るものは避けましょう。

 

手術当日の流れ

手術開始まで

全身麻酔の手術の場合は、手術当日も家族の誰かが来ておくようにしてください

本人は眠っていて話すことができませんので、何かあった時に家族に説明が必要だからです。

手術開始の1時間ほど前に病室を出ることが多いので、手術前にご家族の方が患者さん本人に会うためには、それまでに病室に来ておく必要があります(細かい時間はスタッフから必ず指示されます)。

時間が来れば看護師と一緒に手術室に向かいます。

通常、手術室の前まではご家族の付き添いが可能ですが、その後は患者さんとお別れです。

次に会えるのは手術が終わったあとです。

手術中の付き添いはもちろんできません。

 

全身麻酔の準備

手術室に入った後、看護師から名前の確認をされたのち手術台の上に寝ていただきます。

その際、手術室には数人の看護師麻酔科医がいます。

血圧計を腕に巻いたり、胸に心電図のシール(モニター)を貼ったり、点滴をしたり、と準備を始めます。

この時はまだ起きていますので、看護師や麻酔科医から、「よく眠れましたか?」など、いくつか質問をされるでしょう。

また、お腹の手術の場合はこの時点で背中に痛み止めの麻酔(硬膜外麻酔)をすることがあります。

この麻酔は、横を向いて背中に針を刺す必要があるため、眠ってしまってからではできません。

硬膜外麻酔をすると言われている方は、麻酔がかかる前のこの段階で行います

 

全身麻酔の開始

準備が整えばいよいよ全身麻酔が始まります。

口の上にマスクがおかれます。

酸素が流れてくるので深呼吸をします。

そのあと麻酔薬が投与されますが、「徐々に眠くなってくる」ということはありません

麻酔科医が「今から麻酔薬(プロポフォール)が入りますね」と言って薬が入ったあと、ある瞬間に、瞬時に眠りに落ちます

「麻酔がかかるのにどのくらいの時間がかかりますか?」とよくきかれますが、麻酔薬を投与してから眠るまでは数秒〜数十秒といったところです。

私自身が全身麻酔を受けた際は、薬が入っていくとすぐに頭が熱くなる感覚があり、次の瞬間には意識を失っていました。

この際に痛がる方や苦しそうにする方はいませんし、なんの苦痛もありません

誰しもがあっという間に寝てしまいます。

これは誰もがそうですので安心してください。

 

手術終了後

当然ですが、手術中は全く意識はありません

患者さんにきくと、「夢を見ていた」「ぐっすり眠っていた」という方が多いです。

私自身も、何か夢を見ていたように思いますが、いずれにしても普段夜に眠るのと感覚的には何も差はありません

手術が終わると起こされますが、そのときはまだ気管に管が入ったまま人工呼吸器につながれた状態です。

自分で呼吸ができることを確認してからでないと口の管が抜けないからです。

気管にものが入った状態ですので、この時はどの患者さんもむせて苦しそうにされます

麻酔科医が「深呼吸してください」「手を握ってください」という指示を出し、指示通り応答できればようやく管を抜いてもらえます。

 

さて、横で見ているとこの部分が最も苦しそうに見えるのですが、本当に苦しいのか、というと、実はほとんどの方に記憶がありません

私が全身麻酔を受けた時も、どこから意識があって「苦しい」と感じるのかを患者さんに説明できるよう、絶対に覚えておこうと心に決めて手術台に乗りました。

しかし結局気づいたのは管が抜けたあと手術台からベッドに移動させられるところで、その瞬間「やっぱり記憶がないな」と確認したのを明確に覚えています。

もちろん、逆行性健忘といってあとから記憶が消えている可能性は否定できません。

ただ、苦しい記憶は一切ないということははっきり言えますし、ほとんどの患者さんがこれに同意します

「苦しいのではないか」「辛いのではないか」とことさらに心配する必要は全くないでしょう。

 

その後ベッドで病室に戻るという流れになります。

本人はまだぼんやりした状態で歩けませんので、ベッドに寝た状態でスタッフが運んでくれます。

そのあとは、眠いような感じが数時間ありますが、徐々に意識がはっきりしてきて元の状態に戻ります。

 

全身麻酔の影響

全身麻酔に用いる麻酔薬の副作用後遺症で、大きな問題になることは非常にまれです。

「麻酔から覚めなかったらどうしよう」と不安になる方がいますが、現代の麻酔の技術で「麻酔から覚めない」ということはまずありえません

ただ、手術が終わったあといくつか全身麻酔の影響が残ります。

全身麻酔の際には多くの種類の薬を使いますが、それぞれの個々の副作用を全て説明するときりがありませんので、頻度の高いものに絞って書いてみます。

 

吐き気

麻酔の際に使った薬の影響で、術後に吐き気が出ることがあります。

個人差があり、全くない方もいれば強い吐き気を訴える方もおられます。

吐き気止め(制吐剤)を使うなどして対応しますが、自然におさまりますので心配はいりません。

車酔いをしやすい方や女性で起こりやすいとされています。

頭痛めまいも一緒に起こることがあります。

私自身も手術後数時間は吐き気がありました。

 

のどの痛み

長い手術だと特にそうですが、長時間口から気管へ管が入った状態になっていますので、術後にのどの痛みがあります。

また、声がかすれたり痰がからんだような感じが残る方もおられます。

これも普通は2、3日で治ります。

私も術後3日ほどはのどの痛みが残りましたが、その後はすっかり治りました。

タバコを吸っている方は痰の量が多く、これで苦しい思いをすることがあります。

術前のタバコは百害あって一利なしですから、禁煙が必須です。

詳しく書いた記事のリンクを末尾に置いていますのでご覧ください。

 

歯の損傷

抜けそうになっている歯があると、気管に管を入れる際に抜けてしまうことがあります。

こういう歯がある方や、差し歯、入れ歯の方も事前に申告しておくようにしましょう。

 

また「麻酔の影響」ではありませんが、全身麻酔の際には尿道カテーテルを入れるので、この不快感や痛みがあることがあります。

通称、「バルーン」「おしっこの管」などと呼ばれます。

これについてはこちらに書いていますのであわせてご覧ください。


以上が全身麻酔手術の流れです。

受ける手術の種類によっては、異なる点がある可能性もあります。

担当の医師の説明をしっかりきいておきましょう。

 

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