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コードブルー3 医師が解説|灰谷が行なった開胸心臓マッサージとは?

引き続き、みなさんのご質問にお答えするコーナーです。

今回は、次の質問です。

現場で心臓マッサージをする際に、仰向けになっている患者さんの身体の側面を切開しているように思います。

なぜ胸の方から切開しないのか。

また、心臓マッサージや心臓病の手術の際、肋骨はどうするのですか?

by りこさん

以前この質問をいただいていましたが、昨日の第7話で、白石(新垣結衣)が救急車内で胸の側面を切開して、この心臓マッサージを行うシーンがありました。

ちょうど良いタイミングですので、今回取り上げたいと思います。

 

この、胸を切開して行う心臓マッサージのことを、「開胸心臓マッサージ」と呼びます。

誤解してはならないのは、これは現実にはめったに行うことのない、きわめて特殊な心臓マッサージだということです

 

一般的に「心臓マッサージ」と言うときは、「胸骨圧迫」のことを指します。

ドラマでもよく見る、この処置です。

これは特殊な技術のいらない、一般人でもすべきとされている蘇生処置です。

「え?一般人でもやらないといけないの?」

と思った方は、以下の記事に詳しくまとめていますので、読んでみてください。

一次救命処置と胸骨圧迫についての記事

高校野球部の女子マネージャー死亡、低酸素脳症への誤解

世の中で行われる心臓マッサージのおそらく99%以上は胸骨圧迫です。

開胸心臓マッサージと何が違うのか?

どんな時に開胸するのか?

今回は、それらについても解説してみたいと思います。

 

心臓マッサージの目的は?

一般的な心臓マッサージは、コードブルーを含め様々な医療ドラマで登場しますが、世間ではその目的を誤解されていることが多いです

まず、心臓マッサージの主な目的が、止まってしまった心臓の拍動を再び呼び起こすことだと誤解していませんか?

AEDとの目的の違いを知っていますか?

 

「心臓マッサージ」は上述の通り、正確には「胸骨圧迫」と言います。

自分のみぞおちに手を当てて、そこから真上に喉元まで手を滑らせてください。

硬い骨を触れますね?

これが胸骨です。

心臓は、胸骨の真裏にあります。

心臓マッサージとは、ドラマで見るように、この胸骨を上から繰り返し体重をかけて圧迫する(押し込む)行為です。

主な目的は、心臓を圧迫することで心臓の中に溜まっている血液を押し出すことです。

つまり、本来心臓は自動で動くポンプですが、これが止まってしまった際に、外から手動でポンプを動かすのです。

これにより、脳への血流をかろうじて保つことができます。

脳は、低酸素に非常に弱い臓器です。

心停止によって脳への血流が途絶え、酸素供給がなくなると、3〜5分で脳の障害が始まります

脳は一度障害されると、仮に心拍が再開したとしても脳に後遺症が残ったり、永久に意識が戻らなくなります。

これを「低酸素脳症」と呼びます。

胸骨圧迫では、心臓が拍動するときの30~40%の血液を拍出できるため、心拍再開までの時間稼ぎをすることができます。

一方AEDは、心停止に対して、電気刺激によって自己心拍の再開を促すもので、目的は異なります。

ただ、AEDは全ての心停止に対して有効、というわけではありません

この辺りの詳しいことは、以下の記事にも書いていますので、参考にしてください。

AEDが有効な場合と無効な場合について書いた記事

野球部女子マネージャー死亡の報道、心室細動の解釈に疑問

 

開胸心臓マッサージとは?

胸骨圧迫は前述の通り、胸骨を押し込むことで、その裏にある心臓を間接的に圧迫することです。

ところが、胸骨は硬い骨ですから、この上から押し込んでも心臓に直接力が伝わりにくくなります。

靴下の上から足の裏を掻くようなものです。

「じゃあ靴下を脱いで直接足の裏を掻けば良いじゃないか」という発想で、「開胸して直接心臓を手で揉めば良いのでは?」という話になります。

これが「開胸心臓マッサージ」、通称「開胸心マ」です。

まさに、今回の第7話で、白石とフェローの灰谷(成田凌)が若い男性患者に必死でやっていた処置です。

 

胸の空間は肋骨で囲まれているため、簡単に中に入ることができません。

そこで、胸の側面の皮膚を切開し、肋骨を折り、胸の中の空間に到達して手を入れ、心臓を上と下から挟んで繰り返し圧迫します

真正面からは、胸骨があるため簡単に心臓に到達できませんが、肋骨の隙間を利用して開胸すれば最短時間で心臓に到達できます。

 

ただ、前述の通りこれを行うことはめったにありません

限られたケースに、限られた施設のみで行っているきわめてまれな医療行為です。

原則的には、外傷患者で、かつ心停止から短時間しか経過していない患者さんに対してのみ行われる非常に限定的な行為です。

また、この条件を満たしたとしても、効果はそれほど期待できるものではありません

心拍再開の可能性が低いにもかかわらず、いたずらに胸を大きく切り裂くことは、患者さんに苦痛を与えるだけです。

心拍再開の可能性にかけても良いと判断された、ごく限られたケースにのみ適応すべき蘇生行為だということを覚えておきましょう。

開胸による心配蘇生はこちらでも解説しています

コードブルー2 第3話|緋山の不整脈はなぜ治せたか?アブレーションの意味

 

開胸心マでは、胸に手を滑り込ませることができれば十分なので、スピード重視で側面を開胸します。

しかし、そんな狭い空間から心臓の手術はできませんし、そもそも普通の手術では急ぐ必要もありません。

そこで心臓手術の際は、胸骨の真ん中をノコギリを使って縦に割ります(「胸骨正中切開」と呼びます)。

この骨を切る医療用ノコギリのことを「ボーンソー」と言います(そのままですが)。

この場合は、胸をど真ん中から観音開きにしますので、肋骨を切る必要はありません。

心臓の手術が終わったら、割った胸骨を再び医療用のワイヤー(針金)を使って縫い合わせます。

コードブルーの緋山(戸田恵梨香)はスペシャル版で、事故の救護作業中に高所から落下して心破裂を起こし、手術を受けました。

この際の傷跡が、胸の真ん中に残っています(コードブルー3の第1話でこの傷跡が少し見えるシーンがありますね)。

これが胸骨正中切開で手術を受けたときの傷跡です。


以上が心臓マッサージについての解説です。

コードブルーを見ていると、開胸心臓マッサージが普通のように思えてしまいますが、決してそうではありません。

救命に最も重要なのは胸骨圧迫です

難しくはありませんので、これを機にそのやり方を確認しておきましょう。

コードブルー全話解説記事目次ページへ→コードブルー3 医師による全話あらすじ/感想&解説まとめ(ネタバレ)


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