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コードブルー1st 第2話 解説|黒田の若手教育方針は何がダメか?

第1話では、救急部の上司や看護師からフェローへの厳しい当たりが表現され、私も研修医時代を思い出すほどリアルな描写だった。

しかし「さすがはコードブルー」と思ったのもつかの間、第2話での「厳しさ」のドラマ的アレンジはさすがにいただけない。

うんざりしてしまうほど非現実的である

 

心筋梗塞を見逃した藍沢(山下智久)に突き放すように冷たく当たる黒田(柳葉敏郎)。

使えないフェロー達に業を煮やした敏腕ナース冴島(比嘉愛未)は、白石(新垣結衣)を大声で怒鳴りつける。

いかにも「ありそうでない」ドラマ的展開である。

なぜありえないのか?

今回のシーンを振り返りながら解説していこう。

 

黒田の間違った教育方針

黒田が藤川(浅利陽介)、緋山(戸田恵梨香)と院内を案内中に、歯科外来のトイレで高齢女性が倒れたとの連絡が入る。

駆けつけたとき女性は心肺停止状態。

蘇生処置(胸骨圧迫、除細動)を行いながら初療室に搬送する。

原因はAMI(心筋梗塞)による心停止であったが、スタッフ達の必死の蘇生に反応し、心拍は再開する。

しかし意識は戻らず、挿管されたままICUへと入室。

この女性を見て、藍沢は唖然とした様子を見せる

女性は前夜に歯痛で一度救急外来に来ていたが、異常なしとして藍沢が自宅に帰していたからだ

それを知った黒田は怒りをあらわにする。

 

当初からフェロー達の中で群を抜いて能力の高い藍沢に嫉妬心を燃やしていた藤川、緋山らも、これを好機とばかりに藍沢を非難

自分のミスで患者を瀕死に追いやったという責任の重さに落ち込み、患者のもとに頻繁に訪れて意識の回復を待つ藍沢に、

「よく見とけ。お前が殺しかけた、いや殺すかもしれん患者だ」

と、傷をえぐるように追い打ちをかける黒田。

しかし藍沢の願いは通じ、この女性はようやく意識の回復を見せる。

反省した藍沢は家族に謝罪するが、「最初からちゃんと見てくれればこんなことにならなかった」と激昂する家族たちを前に、ただ頭をさげるしかない。

それを横目で見ながら黒田は厳しい表情で歩き去っていく

 

能力もプライドも高い藍沢が、こうした挫折を経て成長していく姿を描くというのがテーマなので仕方ないが、それにしては実に非現実的な「ドラマ的」展開である。

現実にはこういうストーリーはありえない

 

このように、近日中に一度受診していた患者さんが重症になって戻ってくることを、業界用語で「バウンスバック」と言う。

日本語で「跳ね返り」である。

これは、必ずしも初診医がミスをした、ということを示すものではない

初診時に疑うべき病気を疑い、検査をし、それでも異常がなくて帰っていただいた、ということなど普通にある

病気の兆候が全くない段階から病気を見抜くことなど、神様でない限り不可能だからだ

大切なのは、様々な条件から、今はわからない重度の病気が隠れている可能性を説明すること、そしてどんなことが起こったら次にもう一度受診してほしいか、を丁寧に説明することだ。

 

したがって、こういうことがあった時、最初に診た医師を叱りつけて反省させるだけでは何も解決しない

指導医が一緒に振り返って、

藍沢が初診時に心筋梗塞を見抜くことは本当に難しかったのか?

ということをチーム全員で考察する必要がある。

 

まず心筋梗塞の典型的な症状はもちろん「胸の痛み」だが、「歯が痛い」「肩がこる」「喉が痛い」「息が苦しい」など、様々な非典型的症状をとることは救急領域では非常に大切である。

もし「歯の痛み」で藍沢が心筋梗塞を全く考えなかったのなら、それは藍沢の勉強不足だということになる。

黒田は「反省しろ」で終わらせては何も解決しない。

他にも非典型的症状がいくつかある、ということを教育しなければ、きっと次は「肩こり」で同じミスをする

 

逆に心疾患の可能性を考えていたのなら、他にどんな情報を引き出せていたか、どういう検査をしていたか、を振り返る。

歯痛を訴えた患者の歯に何も病変がなかった時に、心疾患を疑って心電図や血液検査はしたのか?

糖尿病、高血圧、脂質異常症(コレステロール、中性脂肪高値)、喫煙などの危険因子があるかどうかを聞き出せていたのか?

心疾患のリスクを考えるような、内服薬は全て把握していたのか?

そして最後に患者さんにどのように説明して帰宅させたのか?

 

これらを一緒にカルテを見ながら振り返り、じっくり検討する必要がある。

心筋梗塞の危険因子を、糖尿病すら聞けていなかった、となると、それは問診力に問題があるので、問診法をトレーニングする必要がある

心電図をとっていなかった、というようなら、「歯痛」が心筋梗塞の症状になりうることを忘れてはいけない、として歯痛以外の非典型的な症状も教育する

心電図をとっていて心筋梗塞を示す異常があったのに見抜けなかったのであれば、心電図の読み方を再度トレーニングする

「これがおすすめだ」と言って黒田愛用の心電図マニュアルでも渡してあげれば良い。

 

必要な検査、問診を適切に行なった上で、なお心筋梗塞の所見がなかった、となると今度は、藍沢のバウンスバックは「防げなかった」という結論になる

この場合、藍沢個人のミスではない

「その場でできることは最大限やっていたが、帰宅後に急変した」というケースなどいくらでもあるからだ

 

またこれを、フェローを全員集めて、一緒にこの流れでフィードバックをし、他のフェローからも意見を聞くべきだ。

他のフェローも明日は我が身。「ざまを見ろ」とばかりに嘲笑していると、組織としては成長しない

ここまでじっくり振り返らずにベッドサイドでうなだれているだけでは、具体的に何を反省すべきで、何を改善すれば良いのかが全く見えないままだ

 

患者さんにとっては失礼な言い方かもしれないが、こういう教訓的な症例が現れたら、この一人の方に起こったことから多くのことを学び、100人、1000人という人の救命につなげなければ意味がない。

「見逃した、反省しろ。お前が殺しかけた」で終わらせるのは「厳しさ」ではない

「教育の放棄」だ。

 

もちろん私は、黒田が最初はこういう風であることが、ドラマのストーリー上必要だからだということを理解した上でツッコミを入れている。

1st SEASON第9話では、息子が緊急手術を受けることになった際、離婚した妻が黒田のことを語る場面がある。

黒田は翔北にくる前は、エゴイスティックな性格が原因で上司に嫌われ医局で干され、大学病院で閑職だったそうだ。

つまり1st SEASONでは黒田もまた、翔北でフェローたちを教育する中で変わっていく姿が描かれているというわけだ。

 

なお、最後の藍沢の謝罪と、それを横目で見つつスルーする黒田。

もうこれについては「コードブルー3 第5話|医師が骨盤骨折を解説&医師の謝罪にツッコミ」で散々書いたのでツッコミは割愛する。

これもドラマではよく見るが現実にはありえない典型例である。

 

医者になりたがる看護師

一方、経験豊富なフライトナース冴島は、フェロー達が全く戦力にならず、患者を時に危険にさらすことに我慢がならない。

白石と二人きりになった時に、

「診断も一人でできないの!?」

私はあなたよりはるかに優秀、だけど私は医者じゃない。それが最高に悔しい!」

と、ものすごい剣幕で堰を切ったように白石を怒鳴りつける

3rd SEASONを見ると、冴島も丸くなったなぁ、と思えるくらい、昔は「めちゃくちゃ怖かった」のだ。

 

こういう新人医師に怖いナースというのは必ずどこにでもいて(とくに救急部、オペ室、ICUなど中央部門)私も似た経験は何度もある。

実際、ある程度臨床の現場で経験を積んだナースは、国家試験のペーパーテストで知識を蓄えただけの頭でっかちな新人医師に比べると、遥かに行動力は高く、

「なんでこんなこともできないの?」

イライラするのは当然のことである。

 

ただこの、

「私は医者より優秀。なのに看護師だから悔しい」

という怒り方は、いかにも「ドラマ的」で、非現実的である。

 

看護師の仕事の延長線上に医師の仕事があって、医師と看護師の優秀さを比較できる、と考えるのは、ありがちな誤解だ

ドラマ「A LIFE」に出て来た敏腕ナース柴田看護師も、「医師になりたかったがなれなくて看護師になった」という設定であった。

どうもドラマの世界では、

「ナースが有能になると医師に近づいていく」

というイメージがあるようである。

これは、全くの誤解である。

 

そもそも看護師を目指す人は、「看護学を学びたい」「看護技術を習得したい」のであって、医師の得意とする診断や治療、手術をやりたいわけではない(もちろん人によるとは思うが私が知る限り多くの方は)。

全く別の領域の仕事である。

看護師は医師の仕事はできないし、看護のトレーニングを全く積んでいない医師は看護師の仕事は全くできない

違う学習をして違う職業に就いているのだから当たり前で、看護師の仕事は医師のお手伝いではない。

だからその仕事ができるかどうか、優秀かどうかは比較のしようがない

 

私が「冴島看護師はなぜ優秀か」の記事にも書いたように、3rd SEASONではここの描写が現実的であったために、非常に好感が持てた

「あなたの顔を見るとみんなが安心する。雪村さんにはそういうナースになってもらいたいの」

3rd SEASONで冴島が雪村(馬場ふみか)に教育していたのはまさに「看護」であり、医師のように病気が診断できたり処置ができることでない

医師と患者との間で看護師はどう振る舞うべきで、どういうことに注意すべきか、ということを表現していたように思う。

 

明らかに、3rd SEASONの製作者の方がナースの捉え方はリアルであったことを実感する(製作メンバーを詳しく調査したわけではないが、少なくとも脚本家は違うとのこと)。

かつてリアルタイムで1st SEASONを見た時にはこういう違和感は感じなかったのだが、3rdを見てから見直すと色々な違いに気づき、なかなか面白いものである。

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緋山が手に負えなかった常位胎盤早期剥離

一方、藍沢のバウンスバック事件をきっかけにドクターヘリのチャンスが回って来た緋山は、さっそく自分が興味をもつ分野、産科救急の出動要請に喜ぶ。

ところが、三井と2人で現場に向かうと、妊婦の隣にいた別の少年が倒れて呼吸停止。

三井は少年を診察し、緋山は妊婦を一人で診ることになってしまう

胎児心拍に関する産科領域で有名な論文を執筆し、その道に長けていることを自慢していた緋山は、しかし常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)によって大量出血する妊婦を前に手も足も出ない。

「できません!胎児心拍の論文は先輩の症例を手伝っただけなんです」

と告白すると、三井はすぐに交代。

さらに現場に藍沢をヘルプで呼びつけ、事なきを得る。

 

「こんなことありえない」と思った人がいるかもしれないが、むしろ第2話ではここはリアルである。

医療シーンには監修がちゃんと入っているからだ。

論文を書いただけで(実際には書いてもいないが)処置ができるわけはないし、しかしそれを自慢したくなる若手の気持ちもわかる。

そして、論文など救急の現場では何の足しにもならないことがわかっている三井。

プライドが高いのに余計なことはせず「できません!」と言い切った緋山

まさに正しい行為である。

 

そもそも産科救急は極めて専門性が高く、救急医でもかなり経験を積んだものでなければ適切な対応は難しい

しかも常位胎盤早期剥離は、判断を誤るとあっという間に母子ともに死に至らしめる恐ろしい産科救急疾患である。

 

ご存知のように、胎児は母体の子宮内で胎盤を通して栄養や酸素をもらうが、出産後は、胎盤は自然に子宮から剥がれて外に出てくる。

ところが、何らかの原因で、胎児がまだお腹の中にいるときに、胎盤が子宮の壁から剥がれてしまうことがある

これを「常位胎盤早期剥離」、通称「早剥(そうはく)」と呼ぶ。

緋山のセリフにあった「板状硬(ばんじょうこう)」とは、子宮の壁が板のようにカチカチに硬くなる、この病気に特徴的な所見のことである。

 

胎児への酸素と栄養の供給が途絶えるために、胎児死亡に至ることも多いが、それより危険なのは母体である。

胎盤が剥がれて大量出血した際に、血を固まりにくくする様々な物質が大量に血液中に流れ込み「播種性血管内血液凝固症候群(DIC)」を高率に引き起こす

見た目からして難しい言葉だが、簡単に、

「致命的に血が固まりにくくなる状態」

と考えれば良い。

結果的に、出血性ショック、全身の臓器障害により、重症では母体の死亡率は10%、胎児死亡率60%以上と言われる。

 

産科救急では、常に母親と胎児という2人の患者を相手にすることになる。

母体を優先しつつ、どこまで胎児を守れるか、という究極の判断力も要求される。

そう考えれば、ここは布陣として最初から、妊婦は三井、少年は緋山(少年の挿管、換気なら難しくない)とすべきところだっただろう。

 

というわけで、第2話も処置シーンが意外に少なかったことから、大半は人間同士のやりとりへのツッコミに終始してしまった。

次こそ、たっぷり救急疾患を見せてくれるだろうと期待したい。

では次回もお楽しみに!


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