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コードブルー3|細かすぎるリアルなシーンを全て解説|第9話までを振り返って

いよいよ最終回目前ですね。

今回は恒例のみなさんの質問にお答えするコーナーです。

以前にいただいた質問の中で、まだお答えしていなかったものを3つ紹介します。

いずれも本当に鋭い質問です!

手術中に先生に大事な電話がかかってきたら、手術を中断するのでしょうか?

それとも手術中でも医師と話せるような仕組みがあるのでしょうか?

by ミニマルさん

血管造影についてですが、ドラマの中で医師の皆さんは即座に血管を把握していました。

白黒の画像で分かるものなのでしょうか?

by ダニエルさん

緒方さんは、まだ入院の必要があるのでしょうか?

ドラマ上、緋山との恋愛で退院させられないのは分かるのですが笑、

身体的にはリハビリだけなら通院でよいのでは?と。。

by ちえにゃんさん

いつも非常に鋭い質問をいただくので驚きます。

一つ目と二つ目の質問はコードブルー得意の細かなリアリティを追求した部分です。

三つ目については、みなさんにも知っておいてほしいことなので、緒方さんの病状を真面目に考えてみようと思います。

 

手術中の電話応対はどうしているか?

前回の記事の中でも、看護師は急ぎの用事がある時は手術中でも医師に電話をかける、と書きましたね。

しかし、確かに手術中は、清潔なガウンを羽織り、両手に手袋、しかも手袋は血だらけです。

また手袋は清潔ですので、手術中に患者さんの体以外の部分を触ることはできません

急ぎの用件で電話があったらどうしているのでしょうか?

実は、コードブルーでもそういうシーンがあります。

みなさんは意識しなかったと思いますが、言われれば誰もがきっと覚えているはずのシーンです。

 

第8話で、灰谷の担当していた少年が、目の前で仮性動脈瘤破裂でショックになった時です。

その場には、灰谷のほか、横峯と名取しか医師はいませんでした。

結果的には横峯がREBOAを提案し、フェロー3人でしのぎましたが、最初に灰谷は慌てて藍沢に電話します(REBOAとカットダウンの解説はこちら)。

「誰か来てもらえませんか!?」

と訴えましたね。

そのとき藍沢は、AAA(トリプルエー、腹部大動脈瘤)の手術中だったはずです。

「放射線科にコンサルしろ」

「輸血して待て」

「今トリプルエーの初療で手が離せない」

など、灰谷といろいろ会話をしていました。

さて、どうやって電話をしていたのでしょうか?

気になる方は、もう一度見直してみてください。

 

横で男性看護師が、電話を持って藍沢の耳に当てています。

藍沢は両手がふさがっていますが、手術に参加していない、つまり手が清潔でなくても良い看護師が電話を持ってくれているのです。

実はこれは、私たち医療者が見ると、苦笑してしまうくらいの「手術中あるある」です。

ミニマルさんのご質問のように、手ぶらで会話のできる便利なシステムはありません。

なので、他の人に電話を耳に当ててもらうという、非常に原始的な方法しかないのです。

 

ところが、実際やってみるとわかりますが、他人に電話器を持ってもらって電話で話すのは、実は結構難しいことです。

不思議なことに、電話は耳の穴のピンポイントに受話口を当てないとよく聞こえないからです。

そしてそのポイントは本人しか分かりません。

くだらない話と思うかもしれませんが、このことは看護師と医師の間ではいつも深刻です。

医師は「ちゃんと耳に当ててくれ」となるし、看護師は「なんでこれで聞こえないの!?」となり、お互いイライラすることもあります。

ちょうど、他人に背中の痒いところを掻いてもらうようなものです。

だいたい、一番面倒だと思っているのはおそらく看護師です。

 

コードブルーでは、男性看護師が真剣な顔で、藍沢の耳にピンポイントで電話を当てるという重役を担っているので、ぜひ見直してみてください

このシーンは2回あり、意外と長時間電話を藍沢の耳に当てています。

過去の放送はFODに登録すれば無料で見られます↓

 

血管造影の結果はすぐわかる?

第4話で、バーベキュー中の事故で鉄串が首に刺さった少年を、藍沢と名取が診察します。

血管造影を行うと、頚動脈の損傷があるのがわかります。

「頚動脈を傷つけてますね」

と造影所見をスムーズに説明し、頚動脈の遮断ののち鉄串を抜いて血管縫合、という治療方針を提案した名取に対して、

「教科書通りならそうだ」

と、すんなり肯定しない藍沢。

もう一度造影して見ると、頚動脈に仮性動脈瘤があるのがわかります。

 

このシーンは、頚動脈の「仮性動脈瘤っぽい」リアルな映像が画面に表示されます。

頚動脈の仮性動脈瘤などめったにありませんし、それを映像として偶然録画していたとも考えにくいと思います。

CGなのでしょうか?

私はそういった映像制作には詳しくないので、どうすればあんなリアルな造影所見が作れるのか不思議です

さすがコードブルー、という感じのリアルなワンシーンです。

 

さて、造影剤というと、みなさんはバリウムなどの白い濁った液体を想像するかもしれません。

私たちは、バリウムだけでなく、非常に多くの種類の造影剤を日常的に使います

バリウム以外のほぼ全ての造影剤は透明で、外観だけでは水と見分けがつきません。

コードブルーのこのシーンでも、透明の液体を注射器で注入していますね。

 

「白黒の画像ですぐ把握できるのか?」という質問の答えは、「YES」です。

慣れればすぐに異常がわかります。

ただし、それは自分の専門領域だけです。

たとえば消化器が専門の私であれば、胃や大腸の造影、胆管の造影、腹腔内の血管造影はすぐに読めます

しかし、首の血管はやや怪しいですし、脳の血管や心臓の血管(冠動脈)ともなると、細かな異常を指摘できる自信はありません。

造影検査はその意味で、専門性の高い検査と言って良いと思います。

 

すぐに異常を指摘できるかどうかを決めるのは、

「正常の画像をどのくらいたくさん見ているか」

です。

消化管の走行や血管の走行は人によってあまりにも様々で、二人として全く同じ人はいません

指紋や網膜、手の甲の静脈などの認証でたった一人の個人を特定できるわけですから、全身の臓器は全てそうです。

「正常はこれだ!」という教科書に載っている写真通りの血管走行の人など一人もいないわけです。

つまり、「異常を指摘できること」とは、「どこまでなら正常範囲と言ってよいかを知っていること」と同じ意味です。

これは経験が全てです。

経験がまだ浅い名取が、あまりにも素早く血管造影写真の異常を指摘したのは、少し違和感があったと言えるかもしれませんね。

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緒方さんは入院の必要があるのか?

緋山とほぼ恋人同士の関係にある元料理人の緒方さん。

彼は「中心性頸髄損傷」という外傷を負いました。

この病気の詳細や、彼の手に麻痺が残った理由は第9話の解説記事で説明しましたね。

 

緒方さんに対する診療には、これまであまりツッコミは入れてきませんでしたが、少し変な設定が多くあります。

たとえば、本来こういう脊髄の疾患は、整形外科病棟で入院しているのが普通です。

整形外科的な専門治療が必要ですし、普通は主治医も整形外科医です。

担当が最後まで緋山と名取という救急医だったのは不思議です。

救急医がオールマイティすぎる、というのは第4話の解説記事でも書きましたが、さすがに脊損の慢性期治療まで救急医ができる、となると整形外科医が怒り出しそうです。

 

また、脊損の治療の中心はリハビリですが、病院でリハビリを担当するのは医師ではありません。

理学療法士作業療法士です。

彼らは、私たち医師では到底追いつかないほど豊富なリハビリの知識を持つプロ集団です。

緒方さんにとっては最も大切な存在のはずですが、一度も出てきませんでしたね(私が見落としただけかもしれませんが)。

第7話で緒方さんがリハビリ病棟に移るシーンがありましたが、普通は怪我をした直後の急性期からリハビリの専門家が濃厚に治療に参加します

 

さて本題の、入院の必要性についてなのですが、これは少し難しい質問です。

もし手のリハビリだけで良いのであれば、通院リハビリに変更しなくてはなりません

翔北のように毎日次々新しい患者さんが入ってくるような病院を急性期病院と呼びますが、

こういう病院では、急変の恐れのない慢性期の患者さんからどんどん退院、あるいは他の病院に転院してもらうのが通例です。

でないと、次々入院してくる患者さんで病院がパンクしてしまうからです。

 

ただこれは、緒方さんの脊損による症状がどの程度かによります。

例えば、脊損の症状の中で大きな問題となるのが「膀胱直腸障害」です。

 

脊髄を損傷すると、脳から全身に向かう神経の信号が途中で遮断される、というのは、第9話の記事で説明しました。

この「神経」の中で、

運動に関わるものが障害されると「麻痺(手足が動かない)」

感覚に関わるものが障害されると「感覚障害(痛い、熱い、触れているのがわからない)」

が起こるのはわかると思います。

 

しかしもう一つ大事なのが「自律神経」の障害です。

自律神経が障害されてしまうと起こる障害に「膀胱直腸障害」があります。

尿が膀胱に溜まったのに尿意がない。

漏れてしまう、あるいは溜まった尿が出せない。

便が直腸まで降りてきているのに便意がない。

便が漏れてしまう。

といった症状です。

これは結構深刻で、特に緒方さんのように独身(妻と離婚後でしたね)で家族の介護が得られにくい方は、早期退院は難しいように思います。

しかも緒方さんは料理店のオーナーで、自営業です。

会社員とは、社会的背景も異なります。

 

こういう状況を踏まえると、入院継続が望ましいかどうかの判断は難しいですが、緒方さんが入院を続けていることが一概に「緋山との恋愛関係を描くため」だけではないかもしれません。

脊損については私は専門外なので、整形外科医ならもう少し詳しい話ができるかもしれませんが・・・

 

さて、いよいよ明日はコードブルー3rd SEASON最終回。

最終回の解説記事、またその後もいくつか記事を書くつもりですので、ぜひこれからもお付き合いください。

 

コードブルー全話解説記事目次ページへ→コードブルー3 医師による全話あらすじ/感想&解説まとめ(ネタバレ)

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